福田勝美金融部会長
金融部会の福田でございます。金融部会はちょっと、今のコンサルタント部会のようになかなか格好いいプレゼンテーションができなくて、伝統的にまあグタグ タと説明しますので申し訳ございません。2006年上期の回顧でございますけども、もうすでに何回か繰り返されていることなんですけども、まあ特にその、 金融市場について申し上げますと、2006年上期というのはですね、2004年以降世界経済の拡大で順調に推移してきたブラジル経済がですね、初めて経験 する試練の時期であったと言えると思います。
まあ結果的には、ブラジルはこの試練を大きな問題なく乗り越えて、まあ逆にやや加熱気味であった金融市場が正常な状態に戻ったともいえるのではないかと思っております。経済のファンダメンタルというのは金融市場の変動には係わり無く、引続き好調であったと思います。
2006年以前は、世界的な過剰流動性がエマージング国の金融市場に流れ込んで、まあ株式市場の上昇等をもたらしておりました。
2006年に入りまして、ブラジルを取巻く国際金融環境というのは幾つかの点で従来とは異なっております。
まず第一番が、地政学リスクの高まりに起因する原油価格の上昇によるインフレリスク増加と。それから二番目。機軸通貨であるドル金利の上昇と米国経済の減速感。で三番目がですね、過剰流動性の供給基地であった日本における金融政策の転換と。
原油価格の上昇に象徴されます資源・エネルギー価格の上昇が、世界中にインフレの種を蒔いておりまして、まあ結果としてですね、米国金利は2005年初の2.25%から今年の6月には5.25%まで上昇と。他の国々も政策金利の引き上げが相次いでおります。
えっと具体的に言いますと、まあこんな形で石油の価格というのはですね、上がってます。この上のグラフはあの、古い、昔からなんですけども、まここの丸い のところですね。1994年以降のを下で拡大しておるんですけど、まあ最初94年に20ドルくらい、前後だったのがですね、70ドル80ドルという世界に 移行しておると。まあこれはやはり相当なインフレの問題はあると思っております。
それから、 米国経済の減速感というのはですね、やはりまあその財政赤字と大幅な経常赤字と、更に家計の赤字と、こういったものを積み上げながら繁栄を享受しておると いうことに対する、なんといいますか、行き詰まり感といいますか。まあそういったものと呼応しておると思います。
それからまあ日本におきましては2001年来超金融緩和政策が続いておりましたけれども、今年の3月には量的緩和政策が解除されて、7月には公定歩合引き 上げという形でついにゼロ金利政策が終了しております。今後のブラジル経済を占う中ではこのような外部環境の変化というのはやはり注視していく必要がある と思います。
えー、上期の変動なんですが、5月の米国フェデラルファンドのですね、金利引上 げ後に、国際金融市場の先行き不安から、トルコやインドなどのエマージング国の金融市場から米国国債への質への逃避が起こり、その影響でブラジル金融市場 も2004年初来続いていた順調な拡大から、波乱含みの展開となりました。
レアルの対米レー トはですね、2006年年初2.34から5月には2.1を切る水準まで行っておったわけなんですが、この混乱の中でピーク2.4台まで低下をしました。 えーっと、これですね。大体このグリーンがブラジルなんですけども、まあずっと年初から買われてきたんですけど、この五月のところで2.1を切っていて。
これは、すいません、変化率パーセンテージでやってるんですけども、まあこれがここまで上がって、今ちょうど半値戻しくらいになっていると。で、この、例 えばトルコなんかですとですね、まあ年初からほぼ横ばいで来たんですけど、やはりここでバーンと売られまして半分くらい戻っていると。まあこんなような、 やはり経済の脆弱性によってここら辺の反応は、大きさは違うという感じなんですけども、このような動きになっております。
同じように、株式市場につきましても、まあBovespaですと一時4万1,000を超えておったのが短期間で3万2,000台まで低下して、まあ今は3 万6,000くらいまで戻っていると。これが株の方なんですけど、まあ動きが上下逆なんですけど、年初からこうずっと買われてきたのがドーンと下がってま た元に戻っていると。大体みんなこんなような動きを世界中のエマージングのマーケットがやってきたという感じでございます。
代表的なカントリーリスク指標でEMBI+というのがあるんですけど、これが年初302。まあ為替が2.1切った5月の初めには214まで下がったんですが、この変動で一時280台まで戻して、その後今240ぐらいに戻っているというような感じでございます。
で従来、このような海外市場の変動がありますとですね、ブラジルの金融市場に大きな影響が与えられる傾向があったんですが、この程度の変動で収まっているということはやはりブラジルの対外的金融環境が劇的に改善しておるということが言えると思います。
まあ、対外借入返済能力を示す指標としてDebt Service Ratioとかですね、まあいろいろあるんですけど、まあこういったもの、2001年のですね、ブラジル・アルゼンチン金融危機の際の数字から見るとです ね、まあ大幅に低下をしていまして、まあこのあたりが変動への対応力を強くしていると言えると思います。
ちょっと具体的に見ますとですね、これはあのちょっと数字が違いますけども、具体的な対外債務がこのあたりこんなに増えたのがこのくらいになっていると。 それから、インターナショナルリザーブというのが順調に、いろいろまあ外貨返済しながらも順調に増えていると。それからこのいろんなレシオで言いますと、 やはりこの99年とか2000年のころ非常に高かった。
これはネットサービス、それから輸出 の外貨需要逼迫度ですか、こういった数字が非常に高くなっていたのが順調に減ってきていると。まあこういったものがですね、評価されていると言えると思い ます。これはエマージングカントリーだいたい共通しておりまして、別にブラジルだけではなくてですね、やはり世界的な資源価格の上昇というのがこういった 好結果をもたらしていると言えると思います。
選挙の話は、まあ繰り返しになるんですけど、金 融・経済について言いますとですね、まあ選挙戦の論点になっていないと。何れの政党が政権を取ろうと経済政策に変化はないということでですね、昨年の汚職 問題発覚時点との比較では金融市場への政治の影響度は極端に減少しております。
金融市場の混 乱に係わり無く、ブラジルの実態経済はゆっくりながらも順調に拡大を続けておりまして、 2006年上期の輸出は13%増、まあ輸入はレアル高の影響で22%増となっていますけども、経常黒字は昨年並みと。第1四半期の経済成長率は1.4%。 過去12ヶ月の成長率は4%超。政府は年間の成長予想を3.4%から3.8%に上方修正と。
海外ではインフレ懸念から金利の上昇が続いているんですけども、ブラジルは諸外国に先行して金利引き上げ等行ってですね、さらにまあ、その結果レアル高が あって、まあインフレ率が抑えられているということから、現在は政策金利の引き下げフェーズにあります。これが結果ですね、これが内需の拡大とそれから、 まあ揺り起こして景気を牽引するという結果になっております。まああの、選挙とワールドカップの年は景気が良いと言われてますけども、まさに数字もそう なっていると思います。
インフレ率は低いとは言ってもですね、世界的に見るとまだ高い水準に あって、まあ政策金利引下げられたといっても実質金利は10%以上と。これなんですけど、Selicの動きですけども、まあここらへんの高いレートから ずっと下がってきて昨年また引き上げられて今ここまで来たと。ただし実質金利は9.9%、約10%と、これはやっぱり世界で一番高い水準であるということ でですね、なかなかまだ、低金利がですね、設備投資を呼び起こして他のエマージングマーケットのようにですね、力強い成長を促すという段階にはいたってい ません。
でまああの、外部格付の改善とかですね、カントリーリスク指標の低下の結果、政府と か、それからペトロブラスなどの大手企業は低コストでの資金調達が可能になっていますけども、中小企業や個人がその結果を享受できるのはかなり先のことと なりそうです。具体的にここにコンシューマー・ファイナンス・レートというのがありますけども、下がって138%。コマーシャル・インタレストが 105%。クレジットカード224%。スペシャルチェックのレートが153%。パーソナルローンが91%。それから、いわゆるフィアンセイロですね、町金 融272%と。まあ日本でいったら犯罪をはるかに超えたレベルなんですけど、まあこういったものがまかり通っているうちはですね、やはりまともな経済成長 は難しいのではないかなと思っております。
銀行業界ですけれども、2006年第1四半期の数 字は出ておるんですけども、ブラジル銀行の貸出は 21%増加。純利益の合計がですね、102億レアルと61.5%増加をしております。これにはバンコ・ド・ブラジルの一時的な要因もありますけども、それ を除いても31%の増加となっております。一方ですね、急速な貸出拡大の結果支払遅延も増加しておるということでですね、まあ政策金利が引下げられたのに 対して銀行の貸出金利が下がらないということの、一応その原因というか、言い訳になっております。
また業界再編成についていいますと、ここ数年大規模な業界再編はなかったんですけど、上期にはですね、Bank of Americaの子会社のBank Bostonがですね、Itauに売却されて、逆にItauと株式を交換したということがございました。また、投資銀行のPctualがスイスのUBSに 買収されるということが起きております。
すいません、ちょっと時間が経ってるんですけども、2006年の下期展望です。
国際金融の変化については引き続き注目していく必要はあるんですけども、主要国政府・中央銀行の慎重な政策運営努力によって、重大な世界的経済危機発生の可能性は少ないと思います。
実態経済は内需に支えられて拡大するものと見込まれますので、これは補助金や最低賃金引き上げの結果ではあるんですが、広く国内に需要拡大の基礎が形成されております。
選挙結果が経済政策に大幅な変化をもたらすことは予想されません。一方、経済成長促進に必要な諸制度の改革やインフラ整備には、どう考えても相当まだ時間 がかかるということから、第1四半期に比べて成長率は若干減少しますけども、政府の政策目標であるところの成長は達成可能と思ってます。
格付機関の見直しの、まあ格上げの動きもいろいろあるわけなんですが、対外的な金融指標が改善しておりますので、2008年から2009年くらいには実現 する可能性が高まっていますけども、まあ前のプレゼンテーションにございましたようにですね、国内債務残高の増加というのがやはりネックになると考えられ ます。
えっと、金融財政政策につきましては、まあインフレ率は中央銀行の政策目標、これは4.5%±2%ですけども、これに収まると見込まれていますので、あと年内に三回開催されますCopomでですね、引続きSelicの金利引下げが行われると思っております。
まあその結果、金利が下がるとですね、元加部分が減りますので、若干国債の発行も減って良いわけなんですけど、何とかPrimaryの収支を抑えることによって財政面でも一応政府の目標は達成できるんじゃないかと思ってます。
為替については現在対ドル2.2ぐらいなんですけど、政府としてはこの辺の数字というのは比較的そのまあ居心地の良い数字なのかなと。まあやはりインフレ が低く抑えられるというメリットがあります。好調な輸出や、ブラジル国内国債市場の非居住者への開放ということがあり、まあかなり外貨が流入しておるとい うことでですね、まあマーケットでは引き続きドルの余剰感というのは強うございまして、引き続き若干レアル高傾向かなと思ってます。
銀行業界は、まあ内需の拡大を背景にですね、個人マーケット中心の拡大を見込んでおります。昨年度は天引きローンが導入されてかなり個人ローンが伸びたわ けなんですけど、まあ今年は、とはいってもやはり26%ぐらいの上昇があると。法人の方は引続き前年度並と。全体では18%くらいの貸出増加を見込んでい ます。ただ一方ですね、大企業はやはりその、直接調達の方にシフトしておりますので、銀行が収益をなかなか上げにくいと。
こういう中でやはり今後目をつけていくのが不動産投資でございまして、現在まあ、低金利を背景にですね、ブラジルでは不動産マーケットがブームになってお るという中でですね、不動産融資の残高を積み上げていくというのが方針として挙げられています。 2005年末の残高が48億レアルなんですけども、これが2006年末には87億レアルまで拡大するというふうに予想されております。
すいません、駆け足なんですが、保険業界の方です。
2006 年上期の回顧ですが、全体の保険料収入は18.4%増と引き続き拡大傾向にございます。保険種目別でいきますと、自動車保険は22.7%増。火災保険、生 命保険それぞれ16.7%増、17.1%増加に対して、運送保険は若干減って2.9%減となっています。種目毎に顕著な差が現れております。
保険料収入に占める支払保険金の割合である損害率については、前年の改善傾向が継続しておりまして、全保険種目損害率は57.2%と、前年同期比で1.4 ポイント改善。これは内訳でいいますと、自動車保険の損害率が67.2%と、2.7ポイント改善したことが要因です。火災保険、生命傷害保険ですね、それ から運輸保険。こういったものはほぼ前年並みでございます。経費率も、ほぼ前年並みとなっています。
2006年下期の展望ですけども、収入保険料については、下期も引き続き堅調な伸びが継続することが予想されると。また金利低下傾向が変わらないことから、各社とも資産運用益の収支の低下を考慮し、保険収入の改善について引き続き注力をしていきます。
それから最後に再保険関係ですけど、再保険制度につきまして、2005年度に自由化法案が提出されておりますけども、今年度も早期審議を行う動きがあったものの、選挙等もありいまだに実現に至っておりません。大統領選挙前後の動向が注目されております。
えー、そこでですね。恒例の各銀行による年末レート予想なんですけども、今回は全然おもしろくありません。
残念ながらSelicについて言いますと、まあ四行、これは日系の銀行が二行とブラジルの銀行が二行なんですけど、Selicの低いところが14%、高く て14.25と。それから為替について、対米ドル・レアルについていいますと、一番高いところが2.15、一番低いところが2.25と、きわめて現実的な 範囲に収まっておりまして、あまりバリエーションはないと。
ちなみに今年の年初にどれくらい で見ていたかといいますと、年末の金利は14.5から16%、為替は2.3から2.5ということで見てたんですけども、やはり現実的にだんだん予想を修正 しているというのが現状かと思っております。金融部会からは発表は以上でございます。すいません、長くなりました。
どうもありがとうございます。それでは時間超過してますが、クイックに質疑応答にうつりたいと思います。いらっしゃいませんでしょうか。それでは時間もお してることもございますので、次に移らせていただきたいと思います。福田様どうもありがとうございました。それでは次は貿易部会、中村部会長様からよろし くお願いします。
金融部会「2006年上期の回顧と下期の展望」
1. 2006年上期の回顧
2006年上期は、2004年以降世界経済の拡大を背景に順調に拡大を続けてきたブラジル経済が、初めて経験する試練の時期であった。
結果的には、ブラジルはこの試練を大きな問題なく乗り越え、やや加熱気味であった金融市場は正常な状態に戻ったともいえる。経済のファンダメンタルは金融市場の変動には係わり無く、引続き好調であった。
2006年以前は、世界的な過剰流動性がエマージング国の金融市場に流れ込み、株式市場の上昇等をもたらした。
2006年に入り、ブラジルを取巻く国際経済は幾つかの点で従来とは異なる環境に移行している。
- 地政学リスクの高まりに起因する原油価格の上昇によるインフレリスク増加
- 機軸通貨である米ドルの金利上昇と米国経済の減速感
- 過剰流動性の供給基地であった日本に於ける金融政策の転換
原油価格の上昇に象徴される資源・エネルギー価格の上昇は、世界中にインフレの種を蒔いており、米国金利は2005年初の2.25%から今年6月には5.25%まで上昇し、他の諸国でも政策金利の引き上げが相次いでいる。
米国経済の減速感は、財政赤字と大幅な経常赤字、更に家計の赤字を積み上げて繁栄を続けてきた米国経済の行き詰まり感とも呼応する。
また日本に於いては2001年来超金融緩和政策が続いていたが、3月には量的緩和政策が解除され、7月には公定歩合引き上げによりゼロ金利政策が終了した。
今後のブラジル経済を占う中でこのような外部環境の変化は注視する必要がある。
5月の米国FF金利引上げ後には国際金融市場の先行き不安から、トルコやインド等のエマージング国の金融市場から米国国債への質への逃避が起こり、その影響でブラジル金融市場も2004年初来続いていた順調な拡大から、波乱含みの展開となった。
レアルの対米レートは2006年初の2.34から5月には2.1を切る水準まで買われていたが、この混乱の中でピークでは2.4台まで低下。また株式のBovespa指数も41,000超の水準から短期間に32,000台まで低下した。
しかしながら、市場は時間とともに落ち着きを取り戻し、対ドルレートは2.2台、Bovespa指数は36,000台まで回復している。
代表的なカントリーリスク指標であるEMBI+は年初の302から5月初には214まで低下したが、5月の金融市場混乱以降一時的に280台まで上昇、その後240前後の動きとなっている。
従来、海外市場の変動はブラジルの金融市場に大きな影響を与える傾向があったが、この程度の変動で収まっているのはブラジルの対外的金融環境が劇的に改善してためである。
対 外借入の返済能力を示す経済指標としてDebt Service Ratioがあるが、2001年から2年のアルゼンチン・ブラジル危機の際88.7%あった指標は、外貨負債の積極的な返済と輸出拡大の結果2005年に は40%に低下しており、変動への耐性が増加している。これはブラジルに限らずエマージング国にほぼ共通しており、世界的な資源価格の上昇に支えられてい る結果といえる。
今年は選挙の年であるが、金融・経済政策が選挙戦の論点になっておらず、何れの政党が政権を取ろうと経済政策に変更はないと見込まれ、昨年の汚職問題発覚時点との比較では金融市場への政治の影響度は減少している。
金融市場の混乱に係わり無く、ブラジルの実態経済はゆっくりながらも順調に拡大を続けている。
2006年上期(1~6月)の輸出は前年同期比13%増加して609億ドルに達し、レアル高の結果輸入は414億ドルと22%増加したものの、経常黒字は昨年並みを維持。
第1四半期の経済成長率は1.4%で、過去12ヶ月の成長率は4%を超え、政府は2006年の成長率予想を3.4%から3.8%に上方修正している。
海 外ではインフレ懸念から金利の上昇が続いているが、ブラジルでは諸外国に先行した金利引き上げとレアル高の結果インフレ率が低く抑えられ、政策金利の引 き下げフェーズにあることから、内需の拡大が景気を牽引する結果となっている。(選挙とワールドカップの年は景気が良いと言われるが、経済指標もその傾向 を示している。)
インフレ率は低いとはいえ、世界的にみるとまだ高い水準にあり、政策金利が引下げられても実質金利が10%程度に高止まりしてい ることや、貸出金利が依 然高いことなどが民間の設備投資を幅広く呼び起こすに至っておらず、他のエマージング諸国と比較して力強い経済成長を実現するには至っていない。
外部格付の改善とカントリーリスク指標低下の結果、政府やペトロブラス等の大手企業は低コストでの資金調達が可能となっているが、中小企業や個人がその結果を享受できるのはかなり先のこととなると予想される。
2006年第1四半期にブラジルの銀行貸出は21.1%増加し、純利益の合計は102億レアルと昨年同期比61.5%増加した。これには国営銀行であるBBの一時的な収益増加が影響しているが、それを除いても31.5%増加している。
急速な貸出拡大の結果支払遅延も増加しており、政策金利引下げに対して銀行の貸出金利引下げが少ないことの原因の一つとされている。
また、大規模な業界再編はこの数年無かったが、上期には2件の大型買収が実現した。長期間の交渉の末BOAは子会社のBank BostonをItau銀行に売却し、Itauの株式を取得した。また、投資銀行のPctualはスイスのUBSに買収された。
2.2006年下期の展望
【総括】
国際金融環境の変化については引き続き注目していく必要はあるものの、主要国政府・中央銀行の慎重な政策運営努力により、重大な世界的経済危機発生の可能性は依然少ないと思われる。
実態経済は内需に支えられ拡大するものと見込まれる。補助金や最低賃金引き上げの結果、広く国内に需要拡大の基礎が形成されている。
選挙結果が経済政策に大幅な変化をもたらすことは予想されず、一方、経済成長促進に必要な諸制度の改革やインフラの整備には引続き時間を要することから、第1四半期に比べて成長率はやや減速するものの、政府の成長目標は達成可能と思われる。
格付機関による投資適格への見直しは、対外金融指標の改善が継続すると見込まれることから、2008年から2009年には実現する可能性が高まっているが、国内政府債務の残高増加がネックとなる。
【金融・財政政策】
金融政策については、インフレ率が中央銀行の政策目標(4.5%±2%)に収まるみこみであることから、年内に開催があと3回予定されているCopomにて引続きSelic金利の引下げが予想されている。
政策金利引下げの結果、国債の元加部分減少の効果もあり、5月までのPrimary収支は5.8%増と改善しており、本年の政策目標である4.84%は達成できるものと思われる。
【為替】
現 在対US$2.2前後で推移しているが、政府としてはインフレ目標達成のためにも居心地の良い水準と思われる。好調な輸出や、ブラジル国内国債市場の非 居住者への開放に伴う外貨流入もあり、市場におけるドル余剰要因は継続することから、引続きレアル高傾向での推移を予想する。
【銀行業界】
内 需の回復を背景に引続き個人マーケット中心に安定した拡大を見込む。昨年は天引きローンの導入による特殊事情から個人ローンは38%近い大幅な増加と なったが、2006年については26%程度を見込む。法人の資金調達は、上期の実績から昨年並みの見込であり、貸出全体では18%程度の増加を見込む。
大企業は直接調達にシフトしており、銀行が収益を上げ難い環境となっている。
所得水準の向上や金利引下げの結果、ブラジル国内では不動産ブームが起きており、不動産融資残高はこの数年で大幅に増加している。銀行は不動産融資に注力 する方針であり、2005年末残高は48億レアルであるが、2006年末には87億レアルまでの拡大を予想している。
年末金利・為替予想 |
|
12月末為替(前回予想) |
12月末金利(前回予想) |
A |
R$2.20 |
(R$2.25) |
16.50% |
(14.00%) |
B |
R$2.37 |
(R$2.20) |
15.50% |
(14.00%) |
C |
R$2.30 |
(R$2.15) |
16.50% |
(14.25%) |
D |
R$2.30 |
(R$2.22) |
16.00% |
(14.20%) |
2006年上期の回顧と下期の展望(保険業界)
1.2006年上期の回顧
保 険監督当局の統計(2006年5月末)に基づき、2006年上期の保険業界を振り返ってみると、全保険種目の収入保険料(健康保険および運用型年金保 険を除く)は、前年同期比18.4%増と、市場全体は引き続き拡大傾向にあるといえる。保険種目別の内訳をみると、自動車保険は前年同期比22.7%増と 高い伸びを示している。また、火災保険および生命保険もそれぞれ16.7%増、17.1%増であるのに対し、運送保険は対前年2.9%減となっており、種 目毎に顕著な差が現れている。
収入保険料に占める支払保険金の割合である損害率については、前年の改善傾向が継続していると見られる。全保険種目 損害率は57.2%と、前年同期比で 1.4ポイント改善している。これは、自動車保険の損害率が67.2%と、2.7ポイント改善したことが主な要因である。火災新種保険、生命傷害保険およ び運送保険の損害率は、ほぼ前年並みであった。なお経費率についても、ほぼ前年並みとなっている。
2.2006年下期の展望
収入保険料については、下期も引き続き堅調な伸びが継続することが予想される。また金利低下傾向が変わらないことから、各社とも資産運用収益の低下を考慮し、保険収支の改善については、引き続き注力していくものと思われる。
再保険制度については、2005年に自由化法案が提出されている。今年度も早期審議を行う動きがあるものの、未だ実現には至っていない。大統領選挙前後の動向が注目される。