ブラジルの金融制度
ブラジルの金融制度が確立されたのは、1964年の銀行法(法律第4595号)によって、国家通貨審議会(CMN)及びブラジル中央銀行(BC)が創設され、現在の金融制度の基本的な仕組みが形成された。
その際銀行業についても法律第4595号によって骨格が定められ、その後1988年の「総合銀行法」の発布などの変更などを経て現在に到っている。CMN は金融政策の最高決定機関であり、自国通貨の平価調整、インフレ調整、金融・通貨・財政・予算・内外債務政策の統括、マネーサプライ調節に関わる規則を策 定する。さらに貨幣発行、為替政策規則の制定、通貨予算の承認、金利・割引・手数料の上限屋融資に冠する規制なども行なう。1995年からは財務相を議長 に企画相と中銀総裁がメンバーになっている。
ブラジル中央銀行は金融政策の実施、貨幣発 行、金融機関の営業許可・認可・業務監査、金融システムに関わる預託金受入、連邦政府・国営企業・公社の債券売買、外貨準備金の保管・管理、外国融資・資 本取引の登録管理などを行なう。 総裁と理事は大統領が指名、上院が批准する。
金融政策に関わるもう一つの重要な機関として、ブラジル中央均衡に1999年に設置された通貨政策委員会(Copom)がある。インフレ・ターゲティング 政策の施行機関であり、中銀総裁を委員長に全中銀理事をメンバーにブラジルの政策基本金利(Selic)を決定する。Selicは連邦債オープンマーケッ トに平均金利の指標として中銀が採用する政策誘導金利である。
ブラジルの金融機関
ブラジルの金融機関は公的金融機関と民間金融機関に分類され、1990年代後半に貸付金額の60%を占めていた公的金融機関のシェアは民営化などにより大き く低下してきている。一方、民間金融機関では外資系金融機関に対する規制緩和やブラジルリスク低減で、外資系金融機関の台頭が顕著であり、2001年の貸 付シェアは30%を超えている。
公的機関としてブラジル銀行(BB)、国立経済社会開発銀行(BNDES)、連邦貯蓄金庫(CEF) があり、ブラジル銀行は1808年に設立され、29年に一度閉鎖されたものの51年には再開され、現在では連邦政府が51%を出資して経営している国内最 大の銀行組織である。
主な業務として政府の金融・融資政策の実施、金融機関の任意預託金受入、農産物の最低価格政策の実施、輸出製品 の買上げと生産への融資、融資及び手形割引の間接的供与、連邦政府の税金・収入の徴収、国庫の債券・証書・手形の販売、海外における受取・支払機関、小切 手などの書類決済サービス、各省・連邦機関の預金受入などがある。
国立経済社会開発銀行(BNDES)は、ブラジル経済の機関部門の開発と振興のための連邦金融機関であり、ブラジル・米国合同委員会の経済再編成プログラムを実施する専門機関として1952年に設立された。
1982年には社会投資基金(FINSOCIAL)を管理する金融機関となり、90年にはコロール計画の民営化プロセスを執行する期間となり、融資分野は公共事業、基幹産業に対する融資および民間企業に対する長期融資である。
連邦貯蓄金庫(CEF)は、財務省に付属し公社の形態をとる機関であり、主な業務は住宅金融であるが、社会統合プログラム(PIS)、社会開発援助基金 (FAS)を運用する機関でもある。PISは1975年に導入された財政的性格をもつ会計基金であり、企業が毎月支払う納入金を資金源にしている。FAS は教育、保健衛生、社会保障や労働などの基本的社会分野に対する支援を目的とした機関であり、連邦貯蓄金庫は1990年には総合銀行に転換し、全ての金融 業務を提供している。
民間金融機関としては、総合銀行、商業銀行、投資銀行、消費者金融機関、不動産金融会社がある。総合銀行はブラ ジルの代表的な民間金融機関で、国内に多数の支店網を融資、金融制度の基礎部分を構成している。1988年の中銀決議第1524号により導入され、商業銀 行、投資銀行、不動産金融、消費者金融、リース業など複数の業態で営業活動を行なうことができる。
商業銀行は短期融資、短期運用、短期預金の受入及び保証業務を行い、投資銀行は民間企業の設備投資向け中長期融資を中心とした業務を行なっているが、1988年以降は総合銀行への統合が進み、商業銀行、投資銀行ともその数は減少してきている。
消費者金融機関は消費者への個人融資供与及び耐久消費財購入や投資への融資を行なう専門機関であり、資金調達のかなりの部分は個人または企業による資金運 用であり、実際の多くの場合は、同機関が子会社となっている商業銀行によって資金の大部分が供給される。また自動車メーカーなどの一部の大企業が自社製品 の消費者金融によるローン販売を目的に子会社として保有しているものもある。
不動産金融会社は住宅金融システム(SFH)に属し、ポ ウパンサ預金または不動産債券の発行代わり金を原資に、不動産の購入と建設に融資する。ポウパンサ預金は毎月の利息と通貨修正がつく大衆向け貯蓄であり、 不動産債券は建設会社や不動産金融会社などが発行する債券であり、一般的に引当となる不動産があることから発行条件は長期かつ低利となっている。
金融制度の概略
(出所-現代ブラジル事典から抜粋) 2006年9月