基調講演
日本大使館の木下と申します。政務班というところでブラジルの政治とか、環境と か、まあ外交も含めて、あと在日ブラジル人なども含めてやっております。本日はサ ンパウロにおいてこのようなシンポジウムにお招きいただきましてありがとうござい ます。大変光栄に思っております。
ここにいらっしゃる皆様におかれましては、ブラジルの経済の制度とか政策につ いては皆さん新聞等で色々フォローされていると思うんですけども、政治ということ におきましては、つまり内政とか外交においてはですね、必ずしも慣れ親しんでいら っしゃらない方もいらっしゃると思いますので、本日はこの機会を利用させていただ いて、ブラジルの、まあ内政中心になりますけども、ちょっとご紹介をしたいと思い ます。
つまりですね、毎日毎日ブラジルの新聞の1面2面3面ぐらいを読まれている方に とってはちょっとベーシックな話題が多いかもしれませんけれどもお許しいただきた いと思います。またちょっと、下の方に書いてございますけれども、役人的ではござ いますけれども、本日の発表内容につきましては個人的な見解であって、外務省ある いは在ブラジル日本大使館の見解を表したものではございませんので、ご了解いただ きたいと思います。では次お願いします。
今日、短い時間の中なんですけれども、三つのテーマについてざっとお話をして いきたいと思います。まず、ルセーフ政権が発足して1年8カ月ぐらいになりますけれ ども、それを振り返った上で、今年の10月に行われます地方選挙、これは市長と市議 会選挙ですけれども、それに簡単に触れた上で、三つ目、2014年の大統領選挙と今後 の政治動向ということで、ご紹介というか、少し私の考え方を述べさせていただきた いというふうに思います。
まずルセーフ政権の1年半ということでございますが、まずルセーフ政権がどのよう に誕生したかということをご説明をいたします。ブラジルでは2010年の10月に大統領 選挙が行われました。ここの選挙制度は50%の投票数を得られない場合は決選投票に 行くということになっておりまして、2010年10月の選挙の時も第1回の投票では決まら ず、上位を取ったルセーフ候補とジョゼ・セーラ候補というのが決選投票に至りまし た。10月31日に決選投票が行われて、ルセーフ候補が56%の得票率で勝利したという ことになっています。
その右側にブラジルの地図がありますけども、ちょっとかなりざくっとした地図 ではございますが、赤の州がルセーフ大統領が勝利したところ、青の地図がセーラ候 補が勝利した所です。見ていただくと分かる通り、ルセーフ大統領、まあルーラ大統 領が応援したわけですけども、北東部、あるいは東北伯を中心に勝利していることが 良く分かります。また、同じく連邦議会選挙が行われましたけれども、これでも与党 、まあ与党連合ですけれども、与党連合が憲法改正に必要な5分の3を確保していると いう大圧勝をしています。
憲法改正につきましては、ブラジルの場合は憲法修正というのは結構簡単にでき るんですが、憲法改正になると結構大変な労力が必要なものですから、それができる だけの大圧勝をしています。
一つ、疑問というか、問題になるのが、2010年の大統領選挙でルセーフ大統領が 勝利したのか、あるいはそれを支援したルーラ大統領が勝利したのかということを考 えたいと思うんですけれども、この2010年の10月ぐらい、まだルーラ大統領の最終期 で、ルーラ大統領は約80%の支持率があります。その中で必死にルセーフ大統領はル ーラ大統領の横に立って選挙活動をしていたわけなんですけれども、必ずしもルセー フ大統領が今まで表立って有名だったということもありませんので、私としては国民 はルーラ政権、政策の継続を選択したということであり、必ずしもルセーフ個人が勝 ったということではなく、これはルーラ大統領の勝利だと言えるのではないかという ふうに思っております。次お願いします。
ルセーフ大統領について若干ご紹介をしておきたいと思います。3つの写真を付 けておきました。一番皆様から向かって左が今ですね。真ん中が文官長時代。一番右 の方がゲリラ時代の写真です。ミナス・ジェライスのベロ・オリゾンテに生まれて、 ルセーフという名前はブルガリアの名前です。カンピーナス大学で経済を勉強してい ます。この頃にBNDESのコウチーニョ総裁なんかとお知り合いになっていて、いわゆる オーソドックスでなくて開発主義派の信仰をしております。
また60年代にはゲリラ組織に参加していて、拘禁・拷問された経験を持つという ふうに言われております。拷問された後、出てからですけれども、リオ・グランデ・ ド・スール州で鉱山エネルギー長官に就きまして、そこでルーラ大統領に見つけられ て鉱山エネルギー大臣になります。
ルーラ大統領が2005年に日本に来られて時にルセーフは鉱山エネルギー大臣とし てご訪問していますが、私その時に小泉総理の通訳をさせていただいたんですけれど も、非常にルセーフ、当時の鉱山エネルギー大臣ですけれども、非常に怖いなという イメージがやっぱりありました。眼光が強いというか鋭いというか、人をこうにらみ ながら話すようなところがあるので、非常に怖いなという印象を持っています。
鉱山エネルギー大臣の後に文官長に、ルーラ政権の下で文官長になっています。 ご存知の通り、成長開発計画、PACの母というふうに言われていまして、あと政治的に 言うとですね、労働者党PTには99年に入党しておりまして、PTの中ではそれほど幹部 でもなくて、まあ新参者ということであります。また、選挙経験は2010年の大統領選 挙までありませんので、大統領になった時は政治家でもない人がうまく国を取り仕切 っていけるのかというようなことは報道等でも疑問視されたこともあります。では次 お願いします。
今までは、略歴等を見ていただければ分かることなんですけれども、これからち ょっとルセーフ大統領の性格的な所をご紹介したいと思います。
非常に、ルーラ大統領と比べてというのはあれなんですけれども、極めて仕事熱 心な方で、朝早くから夜遅くまで官邸で勤務されています。一応勤務時間は朝9時から 夜の21時までということで、昼も夜も官邸で食べるというふうに言われております。 あと、非常に細かいことまでこだわって、全て決済をするということのようです。な ので、普通であればですね、まあ大統領ですから、補佐官がこれ決済してくださいと 言ったものは、ほとんど見ないで決済するようなものもですね、ルセーフ大統領に限 っては全て見ないと気が済まないというような性格のようです。あと、説明は Powerpointを好まれるようです。また常に具体的な目標の設定とか、期限の設定とか 結果追求を怠らないというふうな感じで、必ず、プロセスではなくて、結果主義、成 果主義を求めているようです。
また閣僚に対して、下にも書きましたけれども、閣僚は補佐官的存在で、閣僚に 対して徹底的に詰めるというか怒るというかという側面があります。一度新聞記者か ら聞いたことがありますけれども、農務大臣との会議の時にまったく会話の話題がず れて、農務大臣にブラジルの米の生産量はどれぐらいなんだと聞いたら、農務大臣が ちょっと今手元にございませんと言ったらそこでルセーフ大統領が切れて、あなたは ブラジルの農業をやっているんじゃないのと。米の生産量ぐらい知らなくて農務大臣 なんかできるわけないじゃないというふうに怒って、出直していらっしゃいというふ うに言ったということを聞きましたけれども、まあそういうのは多分日常茶飯事にあ るんじゃないかというふうに思います。
あと、毎日、大統領府の日程なんかを見ていると分かりますけれども、まあ3、4 名の閣僚と会議を集中的にしています。また、ルーラ大統領と比べてプレスへの露出 は低下しています。あと人ともあまり会わないということです。人とあまり会わない というのは、ちょっと私たちも、大臣とか色々来られると、会っていただけないので なかなか困っているところでありますけれども。
あと民間企業の皆様もですね、本社、日本から社長とか来られるとルセーフ大統 領のアポを申し入れたりされることもあると思いますが、まあもちろんルセーフ大統 領にとって良いことがあればそれはすぐ会ってくれるのかもしれませんけれども、な かなか表敬とか、今後の大きな話をしたいと言っても会っていただけないというのが 現状かと思いますので、逆に皆様の中で、社長等が来られた時にですね、ルセーフ大 統領に表敬が叶っているということであればですね、数件お伺いしていますけれども 、拍手を送りたいというふうに思います。次お願いします。
ルセーフ政権の基本的な政策ですけれども、まあブラジルの発展という一言に尽 きると思いますが、基本的にはルーラ前政権の政策を継承しています。具体的に、社 会政策、これは貧困撲滅ですけれども、に重点を置きつつ、2014年のワールドカップ 、あるいは2016年のオリンピックに向けた安定した経済成長、雇用の創出、インフラ 抑制を目指しています。
まあ具体的な政策として、Brasil Sem Miseriaとか、先程申し上げたPAC、ある いは産業政策でBrasil Maior、税制の見直し、これはPISとかCOFINSとかまあIPIなん かもそうかもしれませんけれども、税制の見直し、あるいは人材育成ということで今 Ciencia Sem Fronteiras、あるいは科学技術イノベーションなどへの重点を置きつつ 国家運営を進めております。次お願いします。
ここからちょっと振り返るということをしたいと思いますけれども、簡単に申し 上げると、まあルーラ前政権の政策を踏襲して堅実な政権運営をしているというふう に考えております。ただし2011年、去年の6月に、非常に大きな権力を持っていたパロ ッシ文官長というのが汚職疑惑で辞任をしまして、その後1カ月に一人、あるいは1カ 月に二人ぐらいのペースで閣僚がバンバンと辞任をしています。
まあ日本だったらですね、パロッシ文官長、つまり官房長官にあたると思うんで すけれども、汚職があったりしたらですね、大統領というか総理ですね、任命責任な んかが必ず問われると思うんですが、この国ではそういうふうにはならず、だからル セーフ大統領にとっては危機ではなく、逆に汚職は許さない、だからすぐ辞めさせた ということでイメージアップが図られて、この時期は非常にルセーフ大統領の支持率 が上がった時期であります。
また、ここに今写真を載せている8人については、ほぼルーラ政権からの引き継 ぎの大臣でしたので、まあ少しルーラカラー、という言葉が正しいのか知りませんけ れども、を排除できたということ。あるいはそれの代わりとしてですね、ルセーフ大 統領がずっと、就任の挨拶から言っていた、専門的な人、いわゆる政治家ではなくて 、非常に専門能力のある人を起用したいと言っていたのが少しずつ叶ってきたかなと いうふうに思います。
あと、先程ちょっと申しましたけども、やっぱりルセーフ大統領というのは政治 家じゃないので、議会対策をどうするかということがありましたけれども、まあ就任 当時は良かったんですが、その後国家陸運庁、ANTTと言いますが、の長官人事に見ら れるように、これは与党の第2政党であるPMDBというのが反対したというものなんです けれども、与党からもちょっと協力を得られなかった。こういう事案に見られるよう に議会の対策、あるいは、よく新聞なんかが言っているのは対話なんですけれども、 大統領と議員とかですね、大統領と政党が対話していないと、だからなかなか協力が 得られないということで、対話が疎かとして与野党から批判を受けたこともあります 。あと最後に、今日はあまり経済の話はしようとは思っていないんですけども、経済 は減速傾向にあります。2010年7.5%の成長率、2011年2.7%、2012年の予測、これは 先週の数字ですけれども、1.81%となっております。次お願いします。
外交ですが、外交については引き続きブラジルはおそらく多くの国にとって重要 なグローバルパートナーということなんだと思いますし、日本にとっても極めて重要 な、中南米の大国ではなく、グローバルのパートナーとして位置づけられております 。ただし、ルセーフ大統領というのは、今まで文官長とか鉱山エネルギー大臣をやっ ていた関係で、国内問題については非常に関心が高いんですが、外交への関心は比較 的薄いのかなというふうに思っています。
特に外交儀礼、外交セレモニーみたいなものについては全く関心がなくて、外遊 する時なんかも、じゃあ私が行って何がもらえるの、何があるのというような、結果 あるいは中身重視の考え方をされている方です。外遊についてもルーラ大統領に比べ て激減はしています。まあ多分、大統領になる前に健康問題がありましたのでそうい う影響もあるのかもしれません。ちなみにルーラは第1期の1年半で48回、ルセーフ大 統領は27回となっています。
人権問題に対しては、自分も拷問された経験がありますので、少し政策が変化し て、かなりこまめにご覧になっているようです。日本との関係でいうと、2010年の11 月、これは大統領にもう選ばれているんですが、日本とEUでいつも、毎年ですね、国 連に対して北朝鮮の人権決議というのを提出しているんですが、この時まではずっと ブラジルは棄権票だったんですが、この2010年の11月からは賛成票に変わっています 。
あと外交でいうと、先程もちょっと申しましたけれども、科学技術イノベーショ ンが大好きで、これまでブラジルと協力文書とかを結んだ国の中で科学技術イノベー ションの協力文書がない国はありません。
あと、パラグアイの大統領弾劾というのがついこの間ありましたけれども、リオ +20をリオデジャネイロでやっている最中にありましたけれども、これについては少し 、まあパラグアイのimpedimento、これをブラジルは批判して、それに南米の多くの国 はルセーフ大統領の意見に従ったわけですけれども、これは若干、ブラジル外務省の 話なんかを聞きますと、ブラジル外務省はもう少しソフトランディングさせたかった と。ルセーフ大統領が最初にちょっと発言したためにちょっとラジカルな方向に行っ てしまったかなというような発言はしております。次お願いします。
このような内政・外交、あるいは経済政策ももちろん含めてですけれども、を以 て、今支持率はどうかと言いますと、62%が良いと思っている。30%が普通だと思っ ている。7%が悪いというふうに今判断をしています。まあ多少、2012年の4月に比べ ると2ポイントぐらい下がっていますけれども、右にカルドーゾ大統領、ルーラ大統領 の支持率がそれぞれありますけれども、それに比べると極めて高い支持率なのではな いかなというふうに思いますし、まあ注目していただきたいのは、ルセーフ政権が悪 いと考えている国民は少ないということです。また、ルセーフ大統領個人の、政権で はなくて個人の支持率はちなみに、本年の4月時点で約70%あります。次お願いします 。
これはルーラ政権との比較ということで支持率を書きましたけれども、ルーラ政 権を良いと思っていた人、38とか55という数字がありますが、今ルセーフ政権を良い と思っている人は64ということですので、ルセーフ政権の支持率というのはルーラ政 権の支持率よりも高いということが言えると思います。次お願いします。
一番最初に、ルセーフ大統領についてはルーラ大統領の支援があって当選したと 、まあルーラ大統領の勝利だと考えていると。あるいは、政治の経験がないのでマス メディアなんかはルーラ大統領が院政を敷くんじゃないかという話も政権の当初はあ りましたが、少しだけルーラ大統領との関係についてご説明しておきたいと思います 。
いずれにしてもルーラ大統領というのはルセーフ大統領にとっては恩人であるこ とは間違いありませんし、ルーラ大統領に対して義理とか仁義とかそういうものをち ゃんとしているということには間違いありません。ただし、ルセーフ政権が発足して からですね、かなり独自色が見えてきているのかなという感じはしています。
つまり、議会対策というのはルーラ大統領とかPT、労働者党が全て担っていると いうことですし、先程申しましたように閣僚辞任の結果ルーラ・カラーというのをか なり排除しました。また今メディアで騒がれているカショエイラ事件とかですね、メ ンサロンというものでも、まあルーラ大統領とはちょっと距離を置いて自分には影響 がないように、まあ実際影響はないんだと思うんですけれども、影響がないようにと いうことをやっています。
つまり、ルーラ大統領への相談とか説明はしつつ、ルーラ大統領からアドバイス は得つつもですね、自分なりの政権を確立しつつあるんじゃないかというふうに見て おります。これは先程も申し上げた通り、大臣に専門家を起用するとかですね、ある いは、これが自分なりの政権ということにつながるのかどうか分かりませんが、今、 大統領、副大統領を含め閣僚というのはこの国40人おりますけれども、彼女が花開い たリオ・グランデ・ド・スール州の閣僚と言うのが今9名おります。40人のうち9名な ので、ちなみにサンパウロは10人ですけれども、かなり自分の回りの人たちで非常に テクニカルな人たちを起用しているのかなというふうに見ております。次お願いしま す。
今年10月に行われる地方選挙についてご説明をしたいと思いますが、その前に少 し、今の政界の構図だけご説明をしておきたいと思います。
ちょっと複雑なんですけれども、一番左の方にPTという、ここからこっちが与党 、でこっちからこっちが野党です。上に行けば行くほど左になります。下に行くと右 派になります。ちょっと見てほしいのはここのPTですね、労働者党。あと副大統領を 持っているPMDB。最大野党であるPSDB。あとサンパウロ市長のカサビ市長が新しく作 ったPSD。あともう一つ、後から出てくるんですけれどもこのPSB、ブラジル社会党で すね。この辺だけちょっと覚えておいていただければと思います。
ちなみにカサビ・サンパウロ市長は新しいPSDというのを結成しましたけれども 、一応インディペンデントという言い方をしていますが、実は与党寄りの考え方をし ています。つまりルセーフ大統領を応援するような形になっています。次お願いしま す。
今年の選挙ですけれども、10月7日に第1回投票があります。これは4年に1回で 、ブラジリア、Distrito Federalを除く全ての州で約5500。ブラジリアというのは市 がありませんので、そのブラジリアを除く5560ぐらいの市長と市議会選挙が行われま す。過半数に行かない場合には10月28日に決選投票が行われます。次お願いします。
では各市民がどのようなことを思って投票するかということですけれども、あな たの都市で一番の問題は、次期市長に優先でやってほしいことはというというと、大 体医療とか、教育とかですね、そういうことが出てきますので、ちょっとやっぱり国 政とは違って地元に密着した視点での選挙になるということがこういう世論調査の結 果から言えるのではないかと思います。次お願いします。
それで、まあ皆さんサンパウロの市長がどなたになってもそんなに影響はないん じゃないかなとは思うんですが、ただ大統領の選挙とか州知事選にどのような影響が あるのかということについては、大統領選挙の中間選挙的な位置づけであって、色々 政治的な駆け引きもありますし、ですからルセーフ大統領とかテメル副大統領は私た ちは選挙キャンペーンに関与しないという立場を採っています。
他方ですね、このあとちょっと触れますけれども、サンパウロとかベロ・オリゾ ンテの市長選というのは政治的には非常に面白くて、ルセーフ大統領も陰で応援する 、あるいは堂々と応援するということに最終的にはなると思います。
あと、まあこれは結果論なんですけれども、与党、特にPMDBが優勢の状況であっ て、与党各党が大きく敗北しない限りは国政にはほとんど影響はないのではないかと いうふうに思っています。ちなみにさっき5000ぐらいの都市だというふうに申しまし たけれども、PMDB、第2政党ですね国会では、が1200ぐらいの首長ポストを持っていて 、次PSDB。野党第1党ですけれどもまあ780ぐらい。PTが550ぐらいの首長職を持ってい るということです。
それではちょっとサンパウロを見ていただきたいと思いますけれども、サンパウ ロについては、たくさん候補がおりますけれども、基本的にはセーラ元サンパウロ州 知事・元サンパウロ市長というのが、まあ大統領候補でもあって多彩な政治経験もご ざいますので、かなり強い候補者であります。これは国政から見ると今野党の候補で す。でルーラ大統領が推薦したPTのアダッジ前教育相というのが頑張っています。
あとTVアナウンサーなんかを務めたルソマノという下院議員、あとPMDBからシャ リタという下院議員が主要な候補者として名前が挙げられています。今、支持率はで すね、これよりちょっと新しい数字ももう一つあるんですけれども、セーラ候補が約 30%、ルソマノ下院議員が26%、アダッジ6%、シャリタ7%というふうになっていま す。次お願いします。
ちょっとここからは分析なんですけれども、セーラ候補については非常に30%と いう支持率は高いんですが、拒絶率も高いのが現状で、37%の人はセーラには投票し ないというふうに言っているというような調査の結果があります。また、ルーラ大統 領と2回ぐらい大統領選を戦っていますので、ルーラ大統領の政敵のイメージが強い。 先程ですね、カサビ市長、PSDは与党寄りという話をしましたが、セーラがサンパウロ 市長をやっていた時にカサビが副市長をやっていた関係で、サンパウロ市においては カサビ市長がセーラ候補を支持することを決定しています。これが吉と出るか凶と出 るかというのはちょっとよく分かりません。
アダッジ候補、これはルーラが応援しているPTの候補ですけれども、知名度が低 いことがちょっと今難点です。市民に聞いても45%の市民しかアダッジ候補という名 前を知りません。一方で99%の市民、94%の市民は、セーラ、ルソマノというのをそ れぞれ知っているというのはかなり強いんじゃないかなと思います。
ただし、今日から政見放送が始まります。政見放送が始まると、貧しい人も含め てテレビを見ますので、アダッジ候補の横にルーラとか、まあルセーフが出るかどう かは分かりませんけれども、大統領が出てくると、そこでかなりの支持率の盛り返し はあると思います。今後どこまで支持率が伸びるかというのは注目点です。それと同 時に、40%のサンパウロ市民はルーラの候補に投票するというふうに述べています。
あとルソマノ、これはさっきTVアナウンサーと言った候補ですけれども、政権放 送の時間がセーラ、アダッジはそれぞれ7分以上持っていますが、毎日7分以上の枠を 持っているんですけれども、ルソマノというのは2分程度しかございません。また、ほ とんど宗教票であり、連立政党もほとんどないので、これ以上支持率が伸びることは おそらくないと思います。あるいは、今後支持率というのは下がっていくんじゃない かというふうに思っています。
あり得るシナリオというのは、セーラ対アダッジが2回目の決選投票に行くとい うような分析をしております。今後この政見放送等を通じてアダッジ候補がどこまで 支持率を伸ばせるかが鍵なんですけれども、ちょっと選挙までもう2カ月を切っており ますので、今の段階ではセーラ候補が優勢なのではないかというふうに見ております が、まあ何しろ選挙というのは水ものなのでどうなるかは分かりませんが、現状では セーラが強いんじゃないかなというふうに思っております。次お願いします。
ベロ・オリゾンテについては、ルセーフ大統領の出身地ということもあり、また 伝統的に今、国政でいうと野党のPSDBが強いものですから、また面白いところであり ます。2008年以降PTとPSDB、これはお互いライバルなんですけども、協力関係にあり ます。具体的にどういうことかと言うと、今の開発商工大臣のフェルナンド・ピメン テルがベロ・オリゾンテの市長だった時にアエシオ・ネーヴェスという州知事と協力 関係にあって、現市長のPSBのこのラセルダというのを支持しました。
ただし今回の選挙に向けてルセーフ大統領、つまりPTは、このPSBのラセルダ市 長の再選を支持せずアナニアスという独自候補を立てました。つまりこれはどういう ことかと言うと、まあ今までここで協力関係にあったんですけれども、PSDBとの距離 も置く、あるいはPSB、これは与党関係にありますが、とも距離を置くというふうに今 なっています。
ちなみに世論調査はラセルダ、今44%、アナニアス27%ということですが、アナ ニアスについてはルーラではなくルセーフ大統領の推薦ですので、今後また政見放送 等で少し数字が変わるかもしれません。2014年の大統領選に向けてこのベロ・オリゾ ンテについては何が面白いかと言いますと、このラセルダというのが勝った場合には 先程申し上げたアエシオ・ネーヴェス州知事の基盤が強化されます。
またペルナンブコの州知事である、あるいはPSBの党首なんですけれども、エド ゥアルド・カンポスという方の基盤が強化されます。アナニアスが勝つ場合にはルセ ーフ大統領の基盤が強化されます。このカンポスですけれども、今、2014年のルセー フ大統領の副大統領候補と言われていまして、ただしここで今関係を少し、まあ地域 的ではありますけれども切っていますので、今後副大統領、つまりPTにとって仲間と なるのか、それともライバルとなるのかということは注目点だと思います。
ちょっと時間もないのでスピードアップしていきますが。最後にですね、2014年 の大統領選挙と今後の政治動向ということで、今後どうなっていくのかということを ちょっと見てみたいと思います。
2014年の大統領選挙ですけれども、まあ基本的にはルセーフ大統領が再選を目指 して頑張るんじゃないかというふうに思います。ルーラ大統領については、多分出た いという気持ちはあると思いますけれども、現在の健康状況に鑑み、まあ声も出ない とかですね、まだ杖で歩いているとか、そういう健康状態に鑑みると2014年の大統領 選挙に出馬することはもしかしたら困難かなというふうに思っています。
その対抗馬が今野党のネーヴェス前ミナス・ジェライス州知事です。先程申し上 げたペルナンブコのカンポス州知事というのが、まあふらふらしているというか、こ っちの方につくのか、あるいはルセーフ大統領に代わって与党候補となるのか、ある いは独自に立候補するのかというのはちょっと分かりませんが、いずれにしてもこの カンポスというのは若手政治家では非常に注目されている州知事であります。次お願 いします。
ルセーフ大統領についてはまあ先程ご説明しましたけれども、ネーヴェス前ミナ ス・ジェライス州知事だけちょっとご紹介します。ベロ・オリゾンテに生まれて、もう 若くしてですね。おじいさんがタンクレード・ネーヴェスという元大統領で、1985年 の民政移管後の初めての文民大統領なんですが、大統領就任式の前日に病気で亡くな ったということがあって、若干こう非常にカリスマティックな、歴史上も捉えられて いて、それのお孫さんなんです。2001年と2002年にはもうすでに下院議長も務めてい て、現在上院議員です。ミナス州知事の時には非常に絶大な人気がありましたけれど も、全国的にアエシオ・ネーヴェスって知っていますかという世論調査の結果はそれ ほど高くはありません。
まあbon vivantというか、非常に良い生活をする人として有名で、週末はほとん どリオにいるとかですね、まあ奥さんも2回ぐらい替えていて、彼女も毎月のように替 えているというのが週刊誌に出ていたりしますけれども、そういう感じの方です。ま あ州知事としては非常に行政能力も高かったんですが、ミナスの関係者とかに聞くと 、まあ長期的展望に欠けていてですね、一国の指導者としては未熟かなというような 意見も聞かれます。ただしこれも、まあ生まれながらの政治家ですので、野党ではあ りますけれどもルーラ大統領との関係は良好です。
ではどうなるのかと、今の時点で言うことは時期尚早でございますけれども、基 本的には現段階ではルセーフ大統領の再選が高いというふうに考えております。これ は先程申し上げたような、個人の支持率70%とか、政権の支持率60%とか、非常に高 い支持率があるのと、あと強いライバルがやはりいないということが大きく挙げられ ると思います。ただこれにはですね、国民が実感する経済とか雇用状況が悪くならな いことが条件になりますし、先程申し上げたような、健康問題を少しルセーフ大統領 というのは抱えている可能性がございますので、その辺は懸念材料です。
で、ルセーフ大統領の再選に向けては、もう既にチームが結成されておりまして 、同じミナス出身のピメンテル開発商工大臣、ベルナルド通信大臣、メルカダンテ教 育大臣、バディリャ保健大臣、ホフマン文官長というチームが組まれておりまして、 今毎日のように会議をやっていると、地方選を含めてですけれども会議をやっている というふうに聞いております。この4人については、ルセーフ大統領が政治的な経験が ございませんので、政治的な話を聞くときには必ずここがアドバイザーとして、この4 人については話を聞いているということを言われています。ちょっとこれは飛ばして 次に行きます。
今後の政治動向ですけれども、今の金融緩和とか投資拡大等によって、安定的な 経済成長と貧困対策強化の両立というのは国民的コンセンサスがございますので、こ れについては政権が代わってもまあニュアンス程度が変わるぐらいで、ほとんどこの 政策自体は変わらないと思いますし、それが証拠にですね、コーロル政権の自由化以 降同路線の政治が20年以上続いていますので、ここはほとんど変わることはないんじ ゃないかというふうに思います。
またルセーフ政権については貧困層から富裕層まで幅広い支持を得ているという ことです。世論調査等を見てもですね、全階層でルセーフ支持が最大ですし、あとボ ルサ・ファミリアなんかも今拡大方向にあってですね、非常に、貧困層についてはル ーラ政権、ルセーフ政権で最良の時代というふうに言われています。ただし一つ頭に 入れておかなくてはいけませんし、それが結構大きいんですけれども、欧州の経済危 機の影響とかですね、今借金漬けなんていう言葉がブラジルでありますけれども、こ ういういわゆる借金漬けになっているということが今後ブラジルの経済にどういうふ うに影響していくかというのは留意の必要があると思います。
いわゆる政治中心に考えた場合、現時点ではルセーフ政権にレイムダックの兆し はありませんので、高い支持率をキープしています。今メンサロンの裁判が進んでお りますけれども、これも国政への影響というのはきわめて限定的であると思っており ます。つまりルセーフ政権というのはこのメンサロン事件にほとんど関わっていませ んし、逆にルーラ大統領については少し、ルーラ大統領の時代に起こった事件ですの で、あるかもしれませんが、ルセーフ政権に影響を及ぼすことはないというふうに思 っています。
まあ先程申し上げた通り、2014年にルセーフ大統領再選、ちょっと一応クエスチ ョンマークをつけさせていただきましたけれども、になった場合でもですね、まあ今 後の政策の大きな転換はないと思われます。メンサロンで今公判にかかっている人た ちというのは、労働者党の中で左派の主流派なんですが、これがもしかしたら弱体化 するかもしれません。そうするとルセーフ大統領の、ルセーフ政権というのはますま す、今PT内で影響力を持っているこの辺が弱体化すると、少しずつ保守化をしていく 可能性はあります。
今後欧州経済危機の影響とかですね、今後の経済成長というのはやはり一番注目 して行かないといけないところだというふうに思っております。また構造改革、どん どんどんどん今外国から投資とか入ってきていますが、構造改革が進まないと今後経 済成長も進まないと思いますので、この構造改革、まあ税制とか社会保障とか労働法 とか、そういうものが進んでいくのかというのも注目していかないと、今後のブラジ ルの経済成長につながっていかないんじゃないかなというふうに思います。また、ま あちょっとここは非常にあいまいとした書き方ですけれども、長期政権となるとやは り死角がどうしても出てくるものですから、死角がないかということは一つ見ていく 必要があるのかなというふうに思います。
最後のスライドですけれども、ルセーフ政権が続くにしろ、あるいは今の野党の 勝つにしろ、まあブラジル自身の強さという、こういったポイントがあってですね。 さらに政治構造自体は、まあ政権党が有利な構造に今なっておりますし、そうすると 勝ち馬に乗る傾向があるので政権は非常に安定していますし、ブラジルで政党が多い と言われるんですけれども、ただ多いのは多いんですが、実は政権交代可能な2大政党 制というのを実現しています。つまりPTとPSDBで基本的にやっていますので、そこは まあいつでも交代可能ですし、今のPTより左の党が政権を取ることはあり得ないと思 いますので、そこらへんは非常にまた政治の安定の要素だと思います。
また、ちょっとこれはクエスチョンマークをつけさせていただきましたけれども 、まあ汚職等も少しずつ改善しつつあるのかなというふうに思いますので、基本的に ブラジルというのは、政治的に見るとですね、中期的には安定傾向にあるのかなとい うふうに判断しているところであります。以上です。どうもありがとうございました 。
司会
木下様どうもありがとうございました。時節がらもありまして大変興味深く拝聴さ せていただきました。それでは、若干時間が押しておりますこともありまして、早速 各部会からの報告に移らせていただければと思います。トップバッターは金融部会の 遠藤部会長にお願い申し上げます。