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業種別部会長シンポジウム

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2018年下期の業種別部会長シンポジウム 2018/08/23

                 2018年下期の業種別部会長シンポジウムのテープおこし記事掲載中

テーマ:「2018年上期の回顧と下期の展望」
副題:「大統領選を直前に控えて〜変化の時期への準備と戦略は」
基調講演:川辺 純子 城西大学副学長
日時:   2018年8月23日(木曜日)
13時~18時 シンポジューム(途中コーヒーブレイクが入ります)
18時~19時 懇親会(カクテルパーティー)                 
会 場: ホテルマクスードプラザ
(Maksoud Plaza - R. São Carlos do Pinhal, 424 - Bela Vista, São Paulo - SP   Tel.: (11) 3145-8000)

前半の司会: 木下 誠 (きのした まこと)総務委員長  
13:00~13:05 開会挨拶 松永 愛一郎 会頭    
13:05~13:25   基調講演: 川辺純子 城西大学副学長(20分) テーマ: 在外日本人商工会議所の活動 ―アジアを中心に―
13:25~13:50 ①  金融部会 安田 篤(やすだ あつし) 部会長    (損保ジャパン) 
13:50~14:15  ②  貿易部会 猪股 淳(いのまた じゅん) 部会長 (伊藤忠) 
14:15~14:40 ③  機械金属部会 植田 真五(うえだ しんご) 部会長  (三菱重工) 
14:40~15:05  ④  自動車部会 下村 セルソ(しもむら せるそ) 部会長 (トヨタ) 
15:05~15:25  ⑤  コンサルタント部会     西口 阿弥(にしぐち あや) 部会長  (EY) 
         
xxxxコーヒーブレイク (15分)xxxx    
         
後半の司会: 大久保 敦 (おおくぼ あつし)企画戦略委員長
15:40~16:05  ⑥  化学品部会  羽田 徹(はねだ とおる) 部会長 (日本曹達) 
16:05~16:30  ⑦  電気電子部会 日比 賢一郎(ひび けんいちろう) 部会長 (ソニー) 
16:30~16:55  ⑧  食品部会  黒崎 正吉(くろさき まさよし) 部会長 (味の素) 
16:55~17:20 ⑨  運輸サービス部会  矢澤 吉史(やざわ よしもと) 部会長  (NTT) 
17:20~17:45 ⑩  建設不動産部会  今川 尚彦(いまがわ なおひこ) 部会長 (戸田建設) 
17:45~17:58   講評 野口 泰(のぐち やすし)総領事 在サンパウロ日本国総領事館
  コメント 山中 修(やまなか おさむ)公使 在ブラジル日本国大使館
  着任のご挨拶 真鍋 尚志(まなべ たかし)公使 在ブラジル日本国大使館
17:58~18:00    閉会の辞 木下 誠 総務委員長              

 

シンポジウム記事 → http://jp.camaradojapao.org.br/news/atividades-da-camara/?materia=18695

 

Pdf金融部会

Pdf貿易部会

Pdf機械金属部会

Pdf自動車部会

Pdfコンサルタント部会

Pdf化学品部会

Pdf電気電子部会

Pdf食品部会

Pdf運輸サービス部会

Pdf建設不動産部会

Pdf全プレゼンテーション

 

                2018年下期の業種別部会長シンポジウムのテープおこし記事掲載

 

前半司会

 

                     

                              木下誠 総務委員長   

 そろそろ開始時間になりましたので、これより2018年下期業種別部会長シンポジウムを開催いたします。私、前半の部の司会を担当させていただきます、総務委員長で三菱UFJ銀行の木下でございます。どうぞよろしくお願いいたします。後半は企画戦略委員長の大久保さんに司会をバトンタッチさせていただく予定でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、シンポジウム開会にあたりまして、松永会頭よりご挨拶を頂戴したいと思います。松永会頭、よろしくお願いいたします。

 

開会挨拶

                    

                      松永愛一郎 ブラジル日本商工会議所会頭

 2018年度下期シンポジウムに多数お集まりいただきまして、たいへんありがとうございます。また本日は、多数のゲストの方にも参加していただいております。簡単にご紹介させていただきますが、まず最初に、川辺信雄早稲田大学名誉教授、ならびに、奥様の川辺純子城西大学副学長様にご参加をいただいております。川辺名誉教授の方はですね、ブラジルの自動車産業、これについてのご調査のために今回ご来伯されたということでございます。奥様の純子副学長様にはですね、当地の日系の商工会議所の活動についてのご調査ということでいらしていただいています。とりわけ、純子副学長はですね、アジアを中心とした在外の商工会議所の活動について造詣が深く、本日も基調講演としまして、在外の商工会議所の活動についてご講演をいただだくことになっております。我々商工会議所のメンバーとしてもですね、参考になるということで、非常に楽しみにしております。よろしくお願いします。

 続きまして、ブラジリアの大使館より山中公使ならびに真鍋公使にもご参加をいただいております。さらに、当地からですね、サンパウロの総領事館の野口総領事にもお越しをいただいております。皆様には恒例ですが、シンポジウムの最後にご講評をいただければというふうに思っております。また、最近ご着任されました真鍋公使には着任のご挨拶の方もよろしくお願いします。

 加えて、パラー日系商工会議所から山中副会頭にも今日お越しいただいております。遠いところありがとうございます。

 商工会議所の一つの目玉となっていますシンポジウム、これは半期に一度開催をさせていただいております。業種別の部会長様に、経済分析、業界分析、今後の動向等をですね、各社プレゼンをいただくという建て付けになっております。今回の副題は「大統領選挙を直前に控えて-その準備と戦略は」ということになっております。各部会長の皆さんからもそういった視点でのプレゼンが為されるものと思っております。私も非常にその内容に興味を持っているところでございます。

 さてブラジルですが、もう大統領選挙も間近でございます。本命不在と言われている大統領選挙でありますけども、新しい大統領には是非、構造改革の手を緩めず、このまま推進をしていただいて、中長期的な経済発展を達成するように、そういった運営を切に期待するところでございます。

 また、ブラジル以外に目を転じますと、トランプ政権の米国第一主義、あるいは今盛んに報道されております米国と中国の貿易戦争、あるいはトルコ、イランといったような地政学リスク、そういったものが顕在化をしておりますが、一方で地域の経済連携という動きも非常に顕著になっております。既に報道の通りではございますが、日本・EUのEPA、あるいはTPP11というものはもう既に基本合意されております。一方でRCEPについても議論が深まっているというふうに仄聞をしております。

 こちらのメルコスールでございますが、アルゼンチンのああいう経済状況といったものはございますけども、メルコスールとしましては、EUとのEPAを推進をしていく、続きまして韓国、あるいはカナダとのEPA交渉も開始をするというふうに報道されております。そういった中ですね、皆さんご存知の通り、我々商工会議所としましても、そういった他国に遅れることなく、日本・メルコスールのEPA、この早期の実現に向けての活動を強化しているところでございます。今日のプレゼンの中でもですね、そういった日本・メルコスールEPAといったようなところがリファーされるんじゃないかというふうには思っております。

 また、今回のシンポジウムなんですけども、会員以外の方にも自由にご参加をいただいております。また、今日いろいろと投影する資料ですが、こちらの方についても商工会議所のホームページにアップさせていただきます。ですので、会員以外の皆様でもブラジルでの経済活動を推進をしようという方々にも裨益するような、そういった努力をしているところでございます。

 最後になりますが、今日のシンポジウムに備えていろいろとご準備をいただきました部会長の皆様、ご関係者の皆様、厚く御礼を申し上げまして、私の開会の挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。

 

司会

 松永会頭、どうもありがとうございました。それでは続きまして、今回特別にご参加いただきました城西大学副学長の川辺様よりご講演をいただきたく思います。それでは川辺様、お願いできますでしょうか。

 

基調講演 

             

                            川辺純子 城西大学副学長

テーマ: 在外日本人商工会議所の活動 ―アジアを中心に―

 皆様、こんにちは。城西大学副学長の川辺でございます。結婚式以来こんなに高い席に上がるのは久しぶりでございまして、たいへん緊張しております。また本日は、このサンパウロで、しかも商工会議所の活動に参加されている皆様の前で商工会議所の話をさせていただくというのは、たいへん光栄に思っています。

 私が商工会議所の研究をしていると言いますと、商工会議所が研究の対象になるんですか、というお話をよくされます。私がこの研究をしようと思ったのは、マレーシアに滞在している時、主人がマラヤ大学で1年間教えましたので、その時初めてアジアの日本人商工会議所へお伺いしたことがございます。その時に、商工会議所、何をやっているんだろうと思ったのが研究の始まりでございます。その後ですね、商工会議所を研究している人がたまたま誰もいなかったものですから、まあニッチな市場で私が研究をすることになりました。

 今日は20分ということですので、まず商工会議所について、どういうところなのかというお話しをしまして、次にアジア全般における日本人商工会議所、どれぐらいあるかというようなことを話をしたいと思います。それから、私すでに何ヶ所かの商工会議所を研究していますので、マレーシアと、それから香港、この二つを事例にですね、この二つがどういう活動をしているのかということをご紹介したいと思います。最後に、いま世界が大きくグローバル化していますので、商工会議所も非常に大きな課題を抱えていると、今後どういう方向に行ったらいいんだろうということを少しお話しをさせていただきたいと思います。

 まず、商工会議所ですけれども、日本にももちろんございます。世界中にあります。基本的には商工会議所法に基づき、市など一定地域の商工業者によって組織される、自由会員制の非営利法人というふうに定義されています。ただし、海外における場合は、商工会議所法に縛られない場合もございます。会社法で会議所をつくっているところもあります。それから、非営利法人という場合もありますし、団体ということもあります。というふうに、色んな使い方がされていますので、必ずしもこれが定義というわけではありません。

 ただし、目的は一緒です。商工業の改善・発展です。それから、会議所の財政はですね、会員の皆様の会費によって賄われている。それから活動も、会員の方が計画して実施されているという特徴をもっています。

 組織と活動についてちょっとお話しをしますと、会員の皆さんが共通の課題をやっぱり抱えている、それを組織というものを通じて何らかの形で解決をしようというものです。それから、執行部と呼ばれる指揮部門が活動計画を立てていきます。そして、事務局の統一管理の下に、基本的には部会、業種別の部会ですね、それから委員会が中心になって計画を実施していくというものです。

 ひとつ事務局について言いますと、アジアにある商工会議所の事務局はだいたい3つのタイプがあります。一つは、地元の方が事務局として担当されている。それからもう一つは、日本から、日商とか、東商とか、そういうところから事務員を派遣してもらっているというところがあります。それからもう一つは、そのどちらでもなく、JETROが事務局を兼ねて運営をされていると。大体こういう3つの事務所があると思います。

 それから、2番目にですね、アジアにおける日本人商工会議所ですけれども、これは日商のホームページから調べましたら、大体、世界には86カ所、いま商工会議所があります。ただし、海外の商工会議所は日商に報告義務はございませんので、実際はこれよりも多いです。この中で、欧州、北米、大体17、18ですけれども、そのうち最も多いのがアジアなんですね。29カ所商工会議所がございます。

 そのアジア地域の内訳が隣の表です。韓国、中国に3カ所、香港、台湾、フィリピンにも3カ所あります。カンボジア、マレーシア、それからシンガポール、タイ、インドネシア、インドには4カ所ございます。バングラディシュ、スリランカ、パキスタンには2カ所ございます。ミャンマー、ベトナム、3カ所。ラオス、UAE、ネパールとなっております。

 ここに一応商工会議所と書きましたけれども、各地域では呼び方はそれぞれです。商工会議所といったり、日本人、あるいは日本という場合もありますし、日本商工会、あるいは日本人会の中に商工部あるいは商工会というものがあるものも含めてこれだけのものがあるということです。

 それで、私は商工会議所があるところはどこでも研究対象になるので、アジアだけではなくてトルコにも行ったことがございます。トルコは西と東、それから南北の十字路ですので、非常にビジネスチャンスとしては日本企業がこれからどんどん出て行くところなので、ここは間違いなく商工会議所ができると思っていたんですけれども、ちょっと時期尚早でですね、まだ日本人会の中の商工部としてしばらくやっていくということでした。そうこうしているうちにトルコの政治的リスクが起こりまして、しばらくはちょっと商工会議所は無理かなというふうに思います。

 それから、この中ではバンコクの日本人商工会議所の50年史というのを書きました。それからミャンマーも行きまして調査をいたしました。調査をする時に、じゃあ何に基づいて書いていくかといいますと、基本的には理事会の議事録です。それから、会報を出していらっしゃるところが多いので、会報をずっと見ていきます。これは比較的研究がしやすいんですけれども、中には会報が出ていない商工会議所というのも多くあります。例えばミャンマーとか、それから香港もそうですね。そういう場合は、事務局、あるいは執行部にお願いをして、こういう研究をしているんですけれども内部資料を見せていただけませんかという形で、これはミャンマーと香港は調査をしてまいりました。

 それでは続きまして、マレーシアと香港の事例のご報告をしたいと思います。基本的にはですね、アジアにある日本人商工会議所の役割は何なのかと考えた時にですね、二つ考え方があると思います。一つは、進出先国の政府が日本企業に何を求めているのか。もう一つのタイプは、日本企業が何を求めるのか、というふうに二つに分かれるのではないかと思います。

 一つのタイプ、タイプAとしますと、政府が非常に日本企業に大きな役割を求めているのがタイ、あるいはマレーシアです。それから、政府は経済には、市場には介入しない、レッセフェール経済を展開している香港では、ほとんど日本企業に政府は何もまあ期待をしないというふうに考えていいと思います。

 まずタイプAの方をご説明しますと、アジアの途上国の場合は、企業がない、あるいは企業化が育っていないという時に、外国の企業を工業化の推進役として求めていくことが多々あります。マレーシアはその例です。そうすると、商工会議所の役割というのは、政府が日本企業に求めている政策の実行に協力すると同時に、その過程で日本企業は様々な課題を抱えていきますので、その間での調整の役割をしているというのが見られます。

 それから、香港のようなタイプBの場合は、その調整の役割は必要ないので、日本企業が何を求めているのかというところが焦点になります。その場合は、日本企業は、香港なら香港におきまして、地場の企業、あるいはアメリカ、イギリスといった多国籍企業との競争、これに勝っていかなくてはいけない。というところで一番重要になってくるのが、まあ情報であろうというふうに思います。そうすると、会議所の役割は、情報を提供するということになると思います。ただしこの情報も、時代が変わりますとまた変化していきますので、その都度その都度その求められる情報を提供していく、あるいは収集していくということになると思います。

 それではまず最初にタイプAのマレーシアの事例をちょっとご紹介したいと思います。マレーシア日本人商工会議所は、通称JACTIMというふうに皆さん言っています。こちらは1983年に、中曽根首相とマハティール首相とのトップ会談で決定したというふうに言われています。が、もちろんこれが実現するためには、現地の日本企業が長い間ですね、商工会議所の設立を待っていたと、願っていたという事情がもちろんあります。それで、マレーシアの場合は商工会議所法ではございません。カンパニーアクトといいまして、会社法で設立がされています。現在の会頭はですね、パナソニックの井水さんが会頭をされています。会員は現在585社でございます。設立された時は121社でしたから、大体、5倍まで行きませんけどそれぐらいに増えているということが言えます。

 会議所活動の基本と成る部会ですけれども、マレーシアには7部会あります。それから、部会を超えて共通の問題を解決する時には委員会というものを作りますけれども、この委員会が8つあります。この部会の内容とか委員会の内容を見ますと、おそらくその国の特徴というのが良く出ているのではないかなというふうに思います。

 それから、JACTIMの特徴はですね、地域にも部会があるということなんです。マラッカとジョホールとペナンとペラに部会がございます。JACTIMのもう一つの特徴としましては、実は第2代鈴木一正会頭は22年間会頭職にありました。この方は時のマハティール首相と個人的に非常に強いつながりがあったと、関係を構築されていたというのが背景にありまして、こういう関係の下にJACTIMは活動をしてきました。

 具体的にですね、次にJACTIMの活動をご紹介したいと思います。マレーシアの場合は、マレーシア政府が政策を変化することによって、日本企業に求める役割は変わってきていると。大きく分けて二つに分けられるというふうに思います。

 マレーシアは、多民族国家というのが非常に大きな影響を与えておりまして、戦前はイギリス資本、それから移民で来た中国人ですね、この方達が資本蓄積をしていたわけですけれども、戦後になると、多民族国家であるというところから、人種暴動が1969年5月に起きます。そうすると、この人種暴動が起こったことによって、マレーシア政府は、この原因は商業的に高い地位にある中国人と農業、漁業にある貧しいマレー人との間の暴動であるというふうに考えまして、マレー人を将校部門に引き上げたいというところで、ブミプトラ政策というものを打ち出してきます。これはマレー人優遇政策というふうに言われていまして、基本的には、資本所有、それから雇用においてマレー人30%、その他のマレーシア人40%、それから外国人40%というふうに数値目標が義務化されます。

 その時にですね、マハティール首相がルックイーストという形で、重工業を推進していくために日本企業を相手に選ぶわけですね。ルックイーストは日本の、その当時大きな発展をしていた日本に学べということですから、日本の経営、技術、それから勤勉な働き方、こういうものを日本に学ぶという形で日本企業にずいぶん大きな期待を寄せますし、政策として出してきたわけですから、これに応えないわけにはいかない。その時に、現地の日本企業はたいへん困るわけですね。というのは、1970年代の初めには大きな反日運動が起こっていまして、この反日運動だけは二度と起こしてはいけないと。しかしルックイーストを実施していく上で、日本企業のプレゼンスが大きくなってくる、あるいはルックイーストへの協力が足りないというふうになってくると、また反日運動が起こってくるのではないか。

 こういう、相手が政府の場合に一企業では対応できない、そのためにはやはり公的な組織が必要だということで、日本人商工会議所を立ち上げていきます。その時に、先ほど言いましたように、中曽根首相、それからマハティール首相の力が大きかったことは言うまでもありません。

 それで、じゃあマレーシアが推進しようとするHICOMを推進していく上でどういうことを実際にしていくかというとですね、一つはマレーシア政府と通産省、あるいは色んな省とのですね、対話を開始していきます。それまでは定期的な対話というのはやっておりませんでした。これを定例化していきます。

 それから、政府に対して直接、政策提言をしていきます。2000年までに6つやっていますけれども、例えば外資政策だとか、それから労働改正法に対する提言だとか、日本企業側にとってこういうふうにしてほしいというような要望、あるいはこういうふうにしたらいいということを提言という形にして、マハティール首相に出しています。この提言は、マハティール首相から要求される場合と、JACTIMの方から提言する場合と、両方のケースが見られます。それで、この時期の提言活動でJACTIMが誇りに思っているのは、100%外資の出資を認めさせたということを非常に強調されています。

 あとは、ベンダー・デベロップメント・プログラムという、中小企業育成政策なんですけれども、これはマレー人の中小企業を育成しようという政策です。これに対して現地の日本企業は、アンカー企業として、現地のマレー人の中小企業を指導して技術を教えていくというようなこともやっています。これが第一段階です。

 2000年以降になりますと、アジア通貨危機でマレーシアも大きな打撃を受けます。それから、グローバル化が進展してきます。そうすると、マレーシアの政策もですね、大きく変わってきています。アジアの中で進展する自由貿易、グローバル化、そういうものに対応するために、産業の高度化というもの、あるいは競争力の強化、そういうものを全面的に打ち出してきます。そうすると、JACTIMの役割というのは、ルックイーストへの協力、政府への協力ということからですね、マレーシアと共に経済発展をして、競争力をもっていこうというふうな役割に変わってきます。

で、その政策変更の下でですね、具体的にJACTIMがやっているのは、マレーシア文化支援、マレーシアの企業としてですね、よき企業市民として存在するんだということで、JACTIMファウンデーションというのを創立20周年につくっております。これは元々経団連がやっていたもので、JACTIMはマレーシアの窓口だったんですけども、20周年を機に独立して、金銭的にも財政的にもJACTIMが持とうということをやっています。これは会員全員加入です。強制的に加入をするということです。

それから2番目に、中小企業支援策。地元の中小企業を育成するということで、中小企業に支援をしています。これは日本の日商あたりからも支援を得て、個別に技術指導をするとか、そういうことをやっています。それから、雇用マッチングということで、日本企業と現地の人との職の橋渡しですね、こういうことも最近はやっています。ですから、JACTIMの役割も2000年代以降ですね、大きく変わってきている。それはやはりマレーシア政府の政策が変わったからだと言うことができます。

 それでは、これとは全く逆にですね、市場経済の下で活動している香港の事例をご紹介したいと思います。香港日本人商工会議所は1969年に設立されました。この母体はですね、日本人クラブの中にあった経済部、こちらから独立をしたものです。だんだん法人会員が増えてくるとですね、日本人会では対応できなくなってきて、商工会議所を作ろうということでできたものです。こちらは法的根拠は商工会議所法という法律の下に設立をされました。現在は住友商事の桜井さんが会頭をされています。

 こちらの会員は、最初、69年は99社だったんですけれども、今は655社に増えています。香港の場合は部会がたいへん多くて13部会ございます。その中には分科会というのも入っています。分科会というのは、部会の中をさらに細分化して業種ごとに集まった分科会という理解です。こちらですと、ライフコミュニケーションだとか、そういうところが少しよそと違うところかなというふうな感じはします。委員会は5つございます。

 香港の場合の、特徴といいますか、大きな影響を与えた出来事というのは、やはり香港の中国返還です。それまでは香港の中のことだけを考えてやっていればよかったのが、今度は中国を視野に入れなくてはいけなくなった。しかも、一つの国の中で二つの制度が採用されているというところで、香港にとっては中国というところが大きな活動範囲として入ってきます。

 その香港の活動の内容についてご紹介したいと思います。香港の場合は、政府が日本企業に何かを特別に求めるということはありませんので、まあ自由に、平等にやってくださいということで。ただし、香港が置かれた政治的、あるいは経済的変化によって、今度は日本企業の方が求める情報が変わってくるという状況が起こってきます。これが大体二つぐらいに分けられまして、50年代から出て行きますけれども、一つは中継貿易から加工貿易へ移っていくと。そうすると、従来ですと、日本の海外進出はまず商社が出て行って、次に金融、運輸が出て行く。次に製造業が出て行く。そしてそれに従って、それを補完するサービス業というのが出て行きますので、香港の場合もやはり商社が最初に出て行っています。それが加工貿易へと変わってくるので、製造業がうんと増えていきます。その中で、基本的には、例えば業界ごとの講演会だとか、あるいは視察旅行だとか、そういうことをやってきました。

一番大きな出来事というのは、1980年代中ごろからですね、香港返還というのが非常に大きな課題となってきます。その香港の返還に関して、香港の商工会議所に特徴的だと思われるのは、中国のある日本商工会議所と交流会を開いているということなんですね。そこにある、北香交流会といいますけども、1990年から2000年まで19回にわたって情報交換会をしています。これは北京の大使館、それから商工会議所、それから香港の領事館、それから香港の商工会議所、この4者がですね、協力をして、開催してきた交流会です。その中で、香港は中国のことを知りたい、中国は香港を通じて中国のことを知ってもらいたいという思惑がありまして、具体的には例えば、中国政府の外資政策だとか、あるいは金利政策だとか、あるいは農業政策だとか、そういうふうな情報交換をしています。

 それで、97年に返還されるわけですけども、香港の日本企業の活動範囲というのは、どんどんどんどん、華南経済から中国本土へと広がっていくわけで、北香交流会の次に、広東省にある日本人商工会議所、11カ所12団体ありますけども、そことの交流会を開いて、広東省の経済の情報を得ようと。それから広東省の方はですね、香港商工会議所を通じて、中国政府の方に何か問題があった時にものを言ってほしいというような思惑がありまして、交流会を始めています。ただし、この交流会はですね、やっぱり広東の方が負担が大きいということで、6回の会合をもって終わっております。

 というふうに、香港の場合は、香港政庁の政策によって日本企業こういうことをしてくださいというのはないので、日本企業が求める情報な何なのかということを中心に活動しています。

 以上、簡単にJACTIMと香港日本人商工会議所をご紹介しましたけども、この二つを比較してみますと違いが大きく見えてくると思います。マレーシアの場合はやはり、まあ香港もそうですけど、歴史というものが非常に大きな役割を果たしている。で、マレーシアは多民族国家であったということ。で、中国資本を中心に使うことができなくなった。その代わりを果たしていくのが日本企業。で、その時に日本企業は政府の政策実行への協力を求められるわけですけれども、問題もたくさん生まれてきます。その問題を解決する方法として、商工会議所が調整の役割を果たしたと。

 ただし、もしかしたらマレーシアの場合は特別かもしれない、というのは、この鈴木会頭とマハティール首相とのたいへん強い個人的な結びつきというのが背景にあるからです。しかし、大なり小なりタイでもこういう傾向が見られますので、タイもマレーシアと同じように、日本企業に対して大きな役割を期待しているということが言えます。もう一つ言えばですね、マハティール首相が返り咲きましたので、で日本にももう2度も来て、またルックイーストということを強調されていますので、またJACTIMの役割は大きくなるかもしれません。

 香港の場合はですね、基本的にはこれはレッセフェール経済ですから、自由に競争してください、そのために必要な情報を自分達で集めるということです。香港の場合はですね、講演会、情報交換会、いろんな形で情報交換・収集を行っています。

 ただし、JACTIMも、それから香港の場合もですね、日本大使館の役割非常に大きいです。それからJETROの支援もたいへん大きいです。ですから、官民、合同といいますか、協力体制でやってきているということが言えます。

 こうやって違いは見られたわけなんですけれども、現在両者ともグローバリゼーションというものにどういうふうに対応していこうかということを今求められています。

 アジアで何が起こっているかというと、通貨危機を契機にですね、グローバリズムに対応するためには地域全体で協力しなくてはいけないということで、地域統合が起こってきています。地域の中で自由貿易を推進していこうと。これも、色んな枠組があってですね、色んな枠組の中でそれぞれに対応していかなければいけない。

それから産業の高度化。例えば宇宙ビジネスだとか、バイオ医療だとか、ICT、こういう産業育成をねらっています。その方法としては、政府はクラスター政策というものを出してきているわけです。その中で、多国籍企業として日本企業はここでもやっぱり大きな役割を果たしていくと。こういう時代になった時に、地域における日本人商工会議所の役割、こういうものがですね、変化してきているのではないかというふうに思います。

 見てきましたように、会議所にはタイプAのもの、政府と日本企業の調整機能を果たす商工会議所、それからタイプB、情報収集・提供サービス型の商工会議所がございます。これはもちろんこのまま残っていくと思います。ただし、活動範囲が一国の中にとどまらなくなってきています。それから、アジア全体が、世界の工場、あるいは世界の市場として大きな役割を果たしてきておりますので、その中で協力と、それから競争が起こる中で、日本企業もいろいろ対応されているわけですけれども、それを代表する商工会議所、どういうことが求められているかというと、一つはですね、アジアの場合は一国ではなくて、在アジア日本人商工会議所全体として協力、連携して問題に対応するということが考えられます。実際に在アセアン日本人商工会議所連合会というのがもうできあがっておりますので、こういうところで情報交換、あるいは協力して、何かお願い事をしていくとかですね、提言をするとか、そういうことをしています。

 それから、日本人だけではなくて、地元の商工会議所、あるいは他の機関、外国の商工会議所、こういうものをITを使ってネットワーク化をして協力体制を作るということもできるのではないかというふうに思います。それで、問題が多様化して、広域化しておりますので、このような方法を使って、これから個々の課題に商工会議所は挑戦をしていくのではないかというふうに、アジアの例ではそういうふうに思っております。

 それから、本商工会議所に関してはですね、これから是非研究をしてみたいというふうに思って、今回来たわけです。タイプAかもしれないし、タイプBかもしれないし、あるいは他のもう一つのタイプCというのがあるのかなというふうに思いながらですね、チャンスがございましたら研究を是非させていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

 

司会

 川辺副学長様、本当にありがとうございました。それでは各部会長からの発表をいただきたいと思います。発表者の皆様におかれましてはですね、時間オーバーされる可能性もあると思いますので、その際は司会の方からですね、合図をさせていただきます。是非タイムキープにご協力いただければと思います。それでは、まずはじめに金融部会の安田部会長より発表をお願いしたいと思います。安田部会長、よろしくお願いいたします。

 

金融部会

           

                               安田篤 部会長

 皆さん、こんにちは。本年度、金融部会長を務めております、損保ジャパン日本興亜の安田でございます。本日は、ブラジルの経済動向、それから銀行業界動向、あとは保険業界動向ということで、3本立てで簡潔にご説明をさせていただきたいと思っております。

まあ大統領選直前ということでですね、先行きなかなか見通しにくい時期ではあるんですけれども、今日の副題であります、「変化の時期への準備と戦略」という切り口に少しでも近づけるようにお話しができればと考えていますので、20分ほどお付き合いください。

じゃあまず最初のスライド。こちらの方にですね、上期のブラジルの経済を振り返った上で下期がどうなっていくのかというところですね。10月に大統領選挙を控えているということで、政治面での不透明感があるものですから、経済面では若干停滞気味の時期になるということを予想しております。

それから、世界経済全体の動きについては、循環的な成長軌道に乗ってはいるんですけども、ブラジル経済自体がいま緩やかな成長性を示している一方でですね、ブラジルの内外のいろんなリスクというものが顕在化しておりまして、目先の経済成長の見通しに若干の下方修正、これを加えざるを得ないというふうに考えています。

 経済成長の見通しを下方修正した主な外的な要因は二つありまして、一つは米国の金利政策ということでですね、これはあらかじめ想定されていたことではあるんですけれども、米国が金融の正常化を目指して政策金利を上げ始めた結果、ブラジルをはじめとした新興国からの資本の流出であるとか、あるいは新興国の通貨の切り下げ、これが発生しております。

ブラジルは潤沢な外貨準備をはじめ、ファンダメンタルの方は比較的しっかりしているということに加えてですね、中央銀行が適切に市場と対話をしているということもあって、いわゆる通貨危機のような状態に陥るには至っておりませんけれども、他の新興国と同様ですね、資本の流出であるとか、あるいはレアル為替の切り下げということもありますので、相応の影響を受けているということでございます。

 それからもう一点、二点目はですね、米国の通商政策ということで、これは米国と中国の貿易摩擦、これが本格化しておりまして、双方で高関税措置を採るということが実際に見られております。こういった動き、世界経済全体の成長を妨げる要因になっておりまして、例えばアメリカだけでもそのGDPの成長率を0.5%ぐらい引き下げているというふうにも言われておりまして、ここにもまあ注意が必要だと考えます。

 あと内部要因、これはブラジルの内部要因ということなんですけれども、大統領選挙を控えてですね、政治的に不透明感が高まっている中、先般のトラック運転手のストライキ等々ですね、経済・社会のゆがみ、これがですね、脆弱性を浮き彫りにしたということで、国民の将来への不安が惹起されたというような現象が起きております。

 それから基礎財政収支。要はお金の方なんですけども、これは引き続き赤字基調が予想されておりまして、特に年金改正をはじめとする諸改革、これに実際に手を付けるということが先決と考えております。実態的には、今年はちょっと難しいので、来年以降、新政権の課題になるというふうに見込んでおります。

 それから失業率の方ですね。これも今12%台のところで高止まりという感じがしておりまして、まあ本格的な消費の回復には現在至っていないということとですね、世界的に新興国のリスクオフの動きがレアル為替の弱含みの要因になっていまして、ブラジルの国内の政策金利、これも6.5%というところで、まあこれ以上下げるのは厳しいかなという状況にまで来ていると。

 こういった状況の中で経済の回復の契機として望まれるシナリオというのはですね、まずは新政権、安定政権が着実に構造改革を進めていくということが第1点。それから外的要因の鍵となるのは、特に貿易、あるいは直接投資におけるブラジルと中国の関係、これの関係次第ということも言えるかと思います。また、今後の経済に変化を与える要因としてですね、実態にそぐわない規制を緩和する、あるいは撤廃する、あるいは新たな技術革新による産業構造の変革、こういったものが求められております。

 全体的な話は今みたいなところなんですけども、次のスライドから少し具体的なケースを追いながらですね、ご説明をさせて頂きたいと思います。

 このスライド、これは2012年以降の主要経済指標の推移と予測についてまとめております。特にですね、約半年前の本年3月1日時点で、このシンポジウムで予想した数字と今の変更点を中心にご説明をさせて頂きたいと思います。

 まずは上のところのGDPの成長率というところですけれども、世界経済の改善、あるいは国内の各種景気刺激策等を背景としましてですね、景気の拡大が加速しておりまして、2018年は2.7%のプラス成長を予測しておったんですけども、先ほどご説明したような、米国の利上げであるとか、あるいは貿易摩擦等々でですね、世界経済の成長が減速しているということと、ブラジルの国内でもスト等の影響がありまして、現時点では2018年のGDP、まあ1.1%ぐらいということで、前年2017年の実質の伸びと同じぐらいの数字にまで下方修正をするに至っております。

 それから、ブラジルの経済の将来に対する不安というのが根強くてですね、内需の低迷を背景にしまして、貿易収支の方は黒字幅が年当初に想定していた金額よりも若干拡大をしておりまして、600億ドル程度を見ております。それから小売の売上動向指数については、年初予想3%と見ていたんですけど、これを少し下回る2%ぐらいになるのではないかと言われています。

 それからレアル安の展開、これがですね、予想よりも強く進んでおりまして、インフレ率の予想率を若干上方修正して4.1%ぐらいのインフレを見ているということであります。

 それからSelic政策金利。これはですね、まあインフレを抑えてきた過程の中でですね、これまで一貫して利下げの局面を現出して参りましたけども、まあここにきてレアル通貨を防衛する必要が出てきたということで、現行の6.5%程度の水準で下げ止まっているということでございます。

 続きまして、各指標の推移、これをちょっと中長期的なスパンで見ていきたいと思っています。まずは次のスライド、GDPの成長率の推移でございます。これはですね、2003年から2010年の、8年間のルーラ政権において、リーマンショックの2009年の例外を除いてはですね、概ね年率で3%から7%の比較的安定した経済成長を遂げてきました。ただ、2015年からのジウマの第二次政権以降ですね、2年連続のマイナス成長に転落しまして、2017年以降は緩やかなプラスということで、新たな方向性を模索していると、こういう状況であります。

 次のスライド、これは経常収支の推移でございます。これは、ルーラ政権の下ですね、まあ積極的な財政、あるいは金融政策の下にですね、内需の拡大を図ってきた結果、特に2007年ルーラ第二次政権以降についてはですね、赤字が拡大致してきて、2014年には1000億ドル、GDPでは4.2%の赤字を計上しています。一方で2015年以降、これはですね、経常収支の赤字幅、着実に減ってきておりまして、以前のような政府主導による投資とか、あるいは景気刺激策、こういったことに大きく依存することなく、足元のGDPというのはほぼほぼ実力通りかなというふうに見ております。

 それでは次のスライドは、プライマリーですね、基礎財政収支、対GDP比ということです。2013年まで黒字を維持しておりましたけども、2014年あたりから景気の伸び悩みということでですね、法人税等々の企業からの税収が減ってしまっているということに加えて、労働者党政権、長く続いておりますので、まあ支出のコントロールができていなかったということで、赤字基調に転じたまま現在に至っているということで、現政権の下で色んな改革の実現を準備してきておりますけれども、中々この結果が出るには至っていないというのが実情です。

 次のスライドは失業率推移ですね。これはですね、ルーラ第一次政権の2003年ごろから失業率、じわじわと低下してきたんですけども、2015年の景気低迷、このあたりから数字が逆行しております。企業側は2017年ぐらいからは雇用の調整局面に入ってきたということで、失業率の方は二桁第、11%から12%台の高いところで推移しています。まあ2017年後半以降ですね、雇用環境改善の兆しはございますけども、現在2018年の見込みについてはやはり12.5%ぐらいを見込んでいるということでございます。

 次のスライドは、消費者の信頼感指数というところですね。この指数は2015年ぐらいに最悪の水準を記録して、その後、少しずつ回復の基調にございます。ただ、今年の5月、6月、色んな、トラックストライキであるとか、社会構造の脆弱性の露呈とか、こういったことがございまして、消費者指数というのはこれに敏感に反応してちょっと悪化しているというのが現状でございます。

 次のスライド。こちらはCDSですね。いわゆるクレジット・デフォルト・スワップ、ブラジルのリスクの増減、これを指標で表したものでございます。これとブラジルのレアルの為替、これを比べ合わせておりますけれども、過去5年間の推移を見ましても、色んな政治経済イベントに左右されているということが分かります。

 2017年につきましては、テメル政権の政策への市場の信任ということでですね、為替は比較的安定的に推移しておりましたけども、この2018年に入って、大統領選挙を控えてですね、政治・経済情勢きわめて不透明ということに加えて、米国の金利の引上げ、貿易摩擦問題といった外的な要因が加わってですね、レアルに下落の圧力がかかっているということです。特にトラック運転手のストライキの時にはですね、一時的に1ドル=4レアルに近い水準に下落しました。

 中央銀行は、市場と対話しながら効果的な市場介入を行って、一応1ドル=3.7~3.9レアルぐらいの、いわゆるボックス圏の中で安定的に推移してきておりましたが、大統領選前後でのイベントの発生であるとか、あるいは外的なレアル下落圧力というのが強まれば、やっぱり1ドル=4レアルの壁を超えてしまうんじゃないか、というような原稿を先週ぐらいにちょっと用意していたんですけど、今週に入りまして、まあ案の定レアルの方は4を超えているというような状況でございます。

 クレジット・デフォルト・スワップの方なんですけども、これは2016年に政治的な混乱が一服したことでですね、それ以降一環して減少の傾向にございましたけれども、2018年、為替とほとんど同じような動きをしておりまして、まあ直近でトルコリラの大幅下落等々もございまして、現在は300bps前後で推移しているという状況でございます。

 次のスライドはBovespa、サンパウロ証券取引所の株価指数移です。こちらはですね、ブラジルに対する外からの投資家のセンチメント、まあこの2、3年できわめて改善はしておりまして、トラックのスト等で一時的に上下はいたしましたけれども、8月の上旬は、いわゆる歴史的な高値と言われる80000ポイント、この大台を越える水準で推移しておりました。ただまあ、直近の内外要因、あるいは新興国リスクの高まりということで、現在では75000から78000ぐらいの水準で推移しております。

 次のスライドはインフレ率の方の動きでございます。棒グラフの方がインフレ率、それから横に入っている点線の方はインフレのターゲット、これを示しております。インフレターゲット、現在は下限が3%、上限は6%ということで、2016年以降インフレはまあ収まってですね、17年にはインフレターゲット下限に近い水準まで来ております。2018年も、国内経済の回復、あるいはレアルの下落等を背景に若干インフレが高まるかなというような見通しをしております。

 次のスライドは、政策金利、Selic金利。こちらの方はですね、2016年以降インフレが沈静化して以来、景気の刺激を目的とした金融緩和というのを進めておりまして、足元は6.5%程度ということですけれども、直近、新興国通貨が狙い撃ちされているということで、例えばお隣のアルゼンチンなどは通貨防衛措置として政策金利を一気に5%上げるというような、極めて荒っぽいやり方をしているということもあって、ここにきてブラジルの方も利下げの局面はそろそろ底かなというふうに見えます。

 次のスライドは外国直接投資の推移ということで、これはブラジルの中銀が発表している外国直投の推移で、これは直近3年間、だいたい700億ドル台の水準をほぼほぼ維持しておりまして、2018年も同様のレベルになるというふうに見ています。

 それから次のスライドですけども、これは金融部会に所属しております各金融機関様の方にご回答頂いて、2018年、2019年の予測数値、予測については最大値と最小値というレンジで表記をしております。ご参考までに、そこにあるFocusというのはですね、これはいわゆる、ブラジル中銀が100以上の金融機関の予測を基にまとめた指標トレンドということで、あわせて横に並べて置いております。

 まずGDP成長率の予想ですけれども、2018年については1.1%~1.5%ぐらいのレンジ、それから2019年については2%~2.5%ぐらいのレンジを見ております。いずれも、中銀のFocus同様ですね、緩やかな成長が継続するだろうというふうに見込んでいる中でですね、前回発表させて頂いた今年の2月時点の予想と比べると、成長のスピードが鈍化しているということが見て取れます。

 それからインフレ率の方ですけれども、こちらの方は2018年が4%~4.1%ぐらい、2019年は4.2%~4.25%ぐらいということで、これは政府が定めているインフレターゲットのレンジとほぼほぼ見合っているということです。

 為替レートにつきましては、2018年が3.6~3.95レアル、それから2019年については3.6~4.0レアルというふうに見ております。これも半年前ぐらいの前回予想と比較しますと、まあ内外の情勢が変わっているということで、レアル安のさらなる進行を今回見込んだという形になっています。

 それから年末時点での政策金利につきましては、今年度2018年度末は6.5~6.75、2019年は若干金融引き締めの方向に転じて、7.25~8.5%ぐらいということで、まあ緩やかな金利引き上げに向かうものというふうに予測しております。

 次のスライド、こちらの方はですね、金融部会の金融機関様の方にですね、今後の見方についてコメントを頂きまして、これをサマリーしたものでございます。

 まず最初の一項目。「大統領選をはじめとする政局展開が不透明である中、本格的なブラジル経済の回復、その契機となるものは何か」という問いに関するご回答です。

 まずはですね、構造改革への継続的な取組みと実行、これが1番ということで、具体的には社会保障制度の改革であるとか、税制改革、財政改革、あるいは政府保有企業の民営化、労働改革、企業コンプライアンスコストの低減、投資促進のための2国間協定等々、こういったものをどこまで具体的に前に進められるかというのが鍵になると思います。

 このような取組みを通じまして内外のマーケットの信認を勝ち得ることによって、レアル為替の切り下げ圧力を落とし、あるいは低インフレ、安定的な低金利環境の構築、本格的な個人消費の回復に繋がるものというふうに考えています。また、貿易、こちらの方は特に中国向けの輸出の伸び、これを本格化すること、これもまあブラジルの成長ドライバーとしては重要なことだというふうに考えております。

 次の項目、これは、今後、ブラジル経済に影響を与える外的な要因があるとすれば何か、またどの様な影響なのか、という問いかけに対する答えです。

 米国金利の引き上げを含みます、グローバルな金融政策の正常化に伴ってですね、世界的な金融引締めの動きというのは実際すでにアルゼンチン、トルコ等々、元々その経済基盤が脆弱な新興国からのキャピタルフライトを招いておりまして、ブラジルでも昨今のレアルの減価が進む中ですね、影響が顕在化しているということでございます。引き続き、世界的な金融緩和の政策が一気に巻き戻しの局面に入ることで、グローバルな資産アロケーション、これを見直しする可能性がある中ですね、各国の動向にはいましばらく注意が必要というふうに考えます。

 また、EUの政治動向であるとか、米国、中国、ロシア、北朝鮮、中東等々のいわゆる地政学リスク、こういったもの、国際社会の不透明な状況である中ですね、これが2018年以降も続くということを想定しておりまして、こういったリスクが顕在化した場合にはやはりブラジルへの影響も避けられないというふうに考えています。

 個別国で申し上げると、やはり中国の動向、これは引き続きよく見ていかなきゃいけないということで、中国からの直接投資に限らずですね、様々な国からの直接投資、これがブラジルに対して出てくれば、これは良い意味でひとつの転換期になるというふうに思っています。

 それから最後、もうひとつの項目。これは、ブラジル経済は今後どの様に変化していくかと、またこういった変化に日本勢としてどのように変化に対する準備、戦略をしていくかという、こういう問いかけでございます。

 一つは、ブラジル自身が各種構造改革を通じてですね、マーケットフレンドリーな環境を整備するということ、これにどれだけ努力を重ねるかという点でございます。労働法の改正を含め、色んな改正に本格的に取り組む、こういった姿勢は見せているので、多くの国民は改革の必要性を強く認識しておりますので、大統領選の結果にかかわらずですね、改革路線、これは大筋では続いていくだろうというふうに考えます。この流れの中でですね、持続的に改革が実現できれば、ブラジルコスト、あるいは実務運営上の障害等々、こういったものが緩和されて、ブラジルのイメージ、これを大きく塗り替えられるチャンスがあるというふうに思います。

 二つ目。これはですね、ビジネスの価値基準というのがですね、モノからサービスに動いていく中でですね、IOTであるとか、AI、ロボティクス等々の新しいテクノロジー、こういったことを駆使することによって、ブラジルの産業構造、これを飛躍的に変えてですね、多くの新しいビジネスモデルの誕生につなげるということがポイントになるかと思っています。

 ブラジルは幸いにして、そういった先進的な発想であるとか技術を前倒しで大胆に取り入れるということにかけては長けておりまして、変革を受け入れる柔軟性もあるので、そういった技術的な革新の環境変化、こういった局面に立ち向かった際には強みが発揮できるのではないかというふうに思います。

 では、こういった変化の時代、どのように備えられるかというところですけれども、通常時にはスリムな社内体制を維持しながらもですね、ここぞという時ですね、いわゆる潮目が変わった時にですね、迅速かつ集中的にヒト・モノ・カネというのを投入できる準備。特に日系企業の場合はですね、常日頃から本社の経営陣に対して、どういったタイミングでブラジルにベットをするのかと、あるいはこういうタイミングだったらしないのかということをですね、あらかじめ十分に打ち合わせしておきながら、いざという時に迅速に動けるような、こういった明確な戦略・戦術を決めておくということが重要かというふうに思っています。

 私ども金融機関といたしましても、こういった変革の時代の中でですね、いかにタイムリーにお客様のお役に立てるかということを常に意識しながら、安定的な資金の供給でありますとか、あるいは適切な金融商品のご提供、サービス等々に努めることを改めて認識しつつ、ブラジル経済動向のご説明を終わらせていただきたいと思います。

 続きまして、銀行業界と保険業界の業界動向について簡略的に説明をします。

 まず銀行業界の方ですね。最初のスライド、これは銀行の貸出残高の推移です。2011年以降、毎年二桁ペースで融資残高というのは増えてきましたけれども、2015年には6.7%と一桁の伸び、2016年以降はマイナスになっております。2017年は、個人向けの貸出は若干増えておりますけれども、昨年に引き続いて景気低迷による企業資金のニーズが落ちているということと、金融機関の保守的な与信運営等々ございまして、法人向けは全セクターにおいて減少。2018年上期はですね、個人、法人共にですね、前年並みの水準で推移しているということで、貸出残高の方はようやく底打ち感が見えたかなという感じでございます。

 次のスライドは、新規与信に対するですね、平均利ざやの推移ということで、これは2017年、政策金利自体が引き下がったということでですね、個人向けを中心にですね、貸出の利ざやは縮小しております。

 次のスライドは不良債権比率ということで、これは2015年以降、景気低迷が続く中ですね、企業の資金繰り悪化等々の影響を受けて、いわゆる延滞債権というのは増加しておりましたけども、2017年6月以降景況感の回復が少し見えてきたということで、個人・法人共に不良債権の比率は改善しております。

 銀行業界については、リーマンショック以降今年ちょうど10年目ということで、節目の年なんですけども、IMFのレポートにおいてですね、世界景気が停滞するリスクが指摘される中ですね、足元の先行きの不透明感は若干強まっているということで、いまのところ、世界経済、あるいはブラジル経済が一気に致命的な危機に陥るという兆しはございませんけれども、引き続き注意、警戒が必要というふうに考えています。

 ブラジルの金融セクターについてはですね、その健全性というのが一つの強みになっておりまして、銀行業界としては、目先の環境変化、これに右往左往することなく、お客様の事業を持続的に支えることのできるように引き続き不断の努力を重ねて参りたいというふうに思っています。

 最後に保険業界の方のご説明をいたします。最初のスライド、これはですね、いわゆる保険料収入の推移ということで、2018年1月-6月累計の保険料の収入の伸びというのは前年同期比で6.3%プラスということで、昨年、同期間比ではプラス2.7%ということで、改善の兆しは見えております。ただ、マーケットの成長の予測と比較すると若干下回っているというのが現状でございます。

 次のスライドは、保険種目別の保険料収入でございます。種目別ではやはり生命保険の分野が10%超の伸びを示しております。まあ雇用が改善してきたということに加えて、企業の新規ベネフィットの導入であるとか、あるいは団体信用保険、こういったものが好調に推移しているということで、あとは、これまでマイナストレンドであった自動車保険、こちらの方もですね、まあインフレ率並みには回復していると、こういう状況でございます。

 次のスライドは、損害率の方ですね。損害率の方はですね、2018年1-6月の累計で43%ということで、昨年比では2.8%ぐらい損害率は改善しているということでございます。

 それから次のスライドに行きまして、ブラジルの保険市場の成長の見通しということですけれども、こちらの方は、2018年の保険市場の成長見通しということで、これは損害保険、生命・傷害保険共にですね、対前年を上回る成長を予測しております。

 2018年以降のブラジル経済の先行き、若干の薄日が灯っているようにも見えておりますけども、政治的な不透明感を中々払拭はできていないということで、失業率は高止まり、個人消費も中々戻ってこないということで、景気回復の兆しが中々見えない中で保険業界もですね、まあ若干厳しい状況が続くのかなというふうには見込んでいます。

 ただし、中長期的に見ますと、社会構造が変わっていく中で、ブラジルというマーケットの中での保険商品のニーズというのは間違いなく高まっていくというふうに見ておりますので、まあこの辺を中長期的に見ながらですね、保険業界としても今から準備を進めていくというふうに考えております。

 以上、私の方からの金融部会からの発表でございます。

 

司会

 ご質問、ご意見等おありになる方、挙手をお願いできますでしょうか。はい、ありがとうございました。このような不透明な時期にですね、マクロ経済の見通しを話すというのは非常に難しい作業だったかなと思いますけども、安田部会長、本当にどうもありがとうございました。

 

安田部会長

 どうもご清聴ありがとうございました。

司会

 それでは続きまして、貿易部会の猪股部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

貿易部会

           

                            猪股淳 部会長

 貿易部会長を務めております、伊藤忠商事の猪股と申します。早速ではございますが、ブラジルの貿易環境に係ります2018年の上期について振り返りたいと思います。

 こちらに示しておりますグラフは、半期ごとの貿易額の推移でございます。左側の青色が輸出額、右の緑色が輸入額を示しておりまして、折れ線グラフは貿易収支と。またですね、真ん中より下の方に赤い線が引いてありますが、こちらは貿易収支の黒字ラインを示しております。

 17年のブラジルの貿易収支はですね、670億の黒字ということで、2年連続で黒字幅を更新しているという状況でございます。2018年上期につきましては、貿易黒字は、やや縮小してはおりますものの、輸出額、輸入額ともに上昇いたしまして、2016年上期の底からはですね、回復している状況が見て取れるということでございます。

 一方、安田さんのお話しにもございましたけれども、5月の全国のトラックストライキ、あるいは通貨安の影響、それから10月の大統領選等々と、貿易環境も不透明感がただよっているというふうに考えております。為替につきましては、ご説明あった通りですけれども、17年の期中平均が3.18レアルと。これが今年の4月以降どんどんレアル安が進みまして、ついには4を突破してしまったという状況でございます。

 次のスライドで、18年上期の輸出入についてご説明したいと思います。

 輸出動向につきまして、商品別に展開しております。この表ではですね、輸出商品を一次産品、半製品、工業製品の3つに大別しております。それぞれの輸出額の構成比では、一次産品がですね、やはり全体の約半分、48%を占めております。まあブラジルの貿易構造はですね、国際市況に大きな影響を受けがちな構造に何ら変化はないということでございます。18年の輸出総額は、数量ベースでは2.1%となっておりますが、金額ベースでは5.6%のプラスということでございます。

 続きまして、輸出、向け先別の輸出でございます。表の左側がですね、上位10カ国。右が地域別の構成比を表している円グラフになります。日本向けはですね、第9位で5.2%の減少ということでございます。また、右側の円グラフから分かりますことはですね、やはり比率として中国、欧州向けが比率高いんですけれども、全体としてやはり地域に偏りがない、向け先のバランスが取れた輸出体制が構築されているという状況は上期も継続しております。

 続きまして、商品別の輸入動向でございます。輸入総額につきましては、数量は昨年比5%のマイナスではありますが、金額では17.2%のプラスというふうになっております。金額構成で見ますと、やはり工業製品が全体の8割以上を占めておりまして、その中でも特に大きな増加が目立つ品目といたしましては、これは増加率ですけれども、中国からの輸入を中心とする送受信機。これは数量でも34.6%というふうに大きな伸びを示しておりました。今度、燃料油ですね。アメリカからの輸入を中心とする燃料油のディーゼルですけれども、こちらは金額・数量ともにですね、大きく伸びているというのが上期の状況でございます。

 工業製品に続く構成比を占める一次産品の中では、やはり原油、天然ガスがですね、数量・金額ともに増加しているのが見て取れます。半製品系では銅ですね。銅版、アルミニウムがやはり金額・数量ともに増加しているというのが上期の状況でございます。

 輸出と同じく、輸入の主要相手国でございます。左側の表ですが、2017年下期にですね、アメリカを抜き去りまして、中国が輸入相手国のトップになったわけですけれども、18年上期もですね、金額を伸ばして、1位のポジションを維持しているという状況でございます。日本は輸出と同じで、9位というポジションでございます。

 右側の地域別の構成比でございますが、これも輸出と同じでやはり中国、ヨーロッパからの輸入が多い状況ですが、やはりバランスの取れた輸入が図られているということが見て取れるかと思います。

 続きまして、日本にフォーカスいたしまして、対日貿易でございます。左側が輸出でございます。昨年比ですね、伸び率としましてはマイナス5.2%ということでございます。鉄鉱石、それから鶏肉、コーヒー豆、アルミニウムが輸出額を減少させているという一方で、大豆、航空機関係、大豆関連ですが大豆かすの輸出が伸びているという状況でございます。

 一方、右側に目を転じまして、輸入でございます。輸入につきましては、合計で26%の伸び率を示しました。特に伸びが大きかったのは、工作機械ですね。これがですね、700%近い増加ということでございます。その他ですね、自動車、トラクター部品、乗用車というものの輸入の伸び率が目立っているという状況でございます。

 続きまして、直接投資についてでございます。左側のグラフはですね、2011年から直接投資額を半期ごとに表しておりますが、話しはですね、年間と半期とちょっと混ぜながら話したいと思いますが、隔年ベースで見て行きますと、2011年、直接投資は695億ドルというのを記録いたしました。以降ですね、12年、13年と減少したのですが、14年から持ち直しました。ただ、皆さんご記憶に新しいと思いますけども、16年上期にぐんと落ち込みましてですね、それが徐々に持ち直しまして、17年は2012年と同じレベルまで回復してきております。しかしですね、貿易の状況と異なりまして、2018年の上期を見ますとですね、16年の上期と同水準というふうになっております。

 右側が国別の直接投資の内訳ですが、この中で特に下落が目立つのがですね、アメリカ。金額的にもインパクトが大きいですが、アメリカからの投資額減少が顕著に見て取れるというのが2018年上期の直接投資の状況でございます。

 続きまして、業種別に直接投資の内訳を見てまいります。一次産品の伸び率がですね、126%弱ということで、合計では構成比の大きい工業、サービスが減少したため、一次産品が伸びているものの、全体では約29%のマイナスというのが、直接投資の伸び率というか、マイナスですね、下降があったのが2018年上期でございました。

 工業関係では、化学・木材・木材紙パルプ・紙製品が186%の伸び。非鉄金属鉱産物が100.8%の伸びと、投資が大きく伸びておりました。サービス業ではですね、投資は合計で減少しているんですけれども、その中でも伸びた業種が、金融、約320%、倉庫・運送関係が270%強ということで、全体ではサービス業関係は落ち込んでおりますが、業種別で見ると、非常に直接投資が伸びている分野もあるということでございます。

 続きまして、日本からの直接投資の推移でございます。この10年間ではですね、2008年、2011年あたりに投資がどんと大きく伸びておりますが、2014年以降はですね、減少しております。2018年の上期はですね、17年に比べると回復したという状況ではございます。すでに2018年の上期の状態で、2017年の年間の投資額を上回っているという状況ではございますが、金額、棒グラフの大きさをご覧いただくと分かる通り、やはり日本からの直接投資は減少傾向にあると言わざるを得ないというふうに考えております。

 続きましては、2018年のブラジルの貿易環境に関わる下期の展望ということについてでございます。金融部会の安田さんからもご説明がありましたが、やはり不透明感が非常にあるというのは皆さんご承知の通りだと思います。不透明感があることを背景にですね、やはりGDPの成長率は下方修正になっているという状況で、年初ほどの景気の期待感というのは薄れていると言わざるを得ないと思います。為替につきましても、足元のレベルが回復してくるというのは非常に考えにくいと。これはやっぱり、アメリカの金利の上昇含みを残した金利据え置き、トルコの地政学的な問題ですね、それから短期的には、大統領選挙の世論調査でも為替が上下するぐらいなものですから、やはりレアルが高い方向に進むというのは非常に考えにくいので、今、下期、ここ数カ月ですけども、やはり今の4を中心とした、4をちょっと下回るとは思うんですけども、まあ単なる予測ですけども、レベルで推移していくんだろうということが予測できるのではないでしょうか。

 ただ、不透明感はありますけども、経済自体がマイナスに転じるというシナリオはやはり考えにくいということで、2018年の下期の貿易環境はですね、いま足元の状況が継続していくのではなかろうかというふうに考える次第であります。

 まあ、不透明感、不透明感ということで、これも皆さんご承知の通りではあるんですけども、やはりブラジルの大統領選挙、米中の貿易戦争の動向と、あと最近出てきていますトルコの問題等々ですね、やはり不透明感があると。もちろんアルゼンチンの情勢も不透明感に一役を担っているということでございます。 

 ただ、不透明感と言いましても、まあ貿易という観点でみますとですね、例えば米中貿易戦争などは、ブラジルなど南米は農産品の輸出を行っておりますので、米中貿易戦争の、恩恵というわけでもないんですけども、中国向けの輸出増という恩恵が出てきているのも事実であります。なので、不透明感はあるんですが、マイナスばかりとも言えないというのが貿易の環境ではなかろうかというふうに考えております。

 最後ですね、「大統領選挙を直前に控えて~変化の時期への準備と戦略は」ということでございます。こちらにつきましてはですね、今月初めに貿易部会で懇談会を開催いたしましたが、そこで準備と戦略という点に関しましてですね、参加者の皆様からこのような意見が出されました。それを列記しております。皆様のご参考になればと思いまして、1枚スライドにさせていただきました。

 私からは以上でございます。どうもご清聴ありがとうございました。

 

司会

 猪股部会長、どうもありがとうございました。ただいまの発表につきまして、ご質問、ご意見等ございますでしょうか。特にございませんでしょうか。どうもありがとうございました。

 それではですね、引き続き機械金属部会の発表に移らさせていただきたいと思います。植田部会長より発表いただきます。植田部会長、よろしくお願いいたします。

 

機械金属部会

                  

                                                      植田真五 部会長

 皆様こんにちは。ブラジル三菱重工の植田でございます。機械金属部会長を務めさせていただいております。

 当部会は、機械および金属に関連するメーカー、並びに商社の方々を中心としたメンバーになっております。今回のシンポジウムで発表するにあたりまして、事前に各社にレポートをまとめていただき、またですね、部会を開催して情報および意見の交換を行いました。本日はその内容を発表させていただきます。

 構成といたしましては、まず、当部会に関係するマクロ指標を説明させていただきます。続いて、セグメント別に鉄鋼、電力、建設機械、自動車およびその他の産業、オイル&ガス、紙パルプおよび業務用空調、こういったセグメントの状況を説明させていただきます。最後に、副題である「大統領選挙を目前に控えて~変化の時期への準備と戦略は」ということでまとめさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 それでは、マクロ指標ということで、最初はブラジル鉱工業生産の状況をグラフにまとめたものです。ブラジル地理統計院の資料です。2013年以降今年の7月までを示していますが、ご覧の通り、2014年、15年はマイナスが続いて、皆様も大変苦労された期間でありました。2017年に入ってプラスに転じ、18年もそれが継続すると期待をしていましたが、7月に大きなマイナスとなっています。これは、5月に発生したトラック運転手のストライキによって国内物流が混乱し、原材料の入荷ができなかったり、製品の出荷が滞ってしまったと、こういったことが大きく影響していると思っています。加えて、本日の副題にもありますように、大統領選という政治・経済的にも大きな影響を与えるイベントがあるだけに、当部会としても気を揉む現下の状況であります。

 次は土木建設指数を示したグラフです。これもブラジル地理統計院の資料です。2012年を100として、その後の推移を折れ線グラフで示しています。それぞれの年ででこぼこはありますけれども、傾向としては、2013年から17年に向けて右肩下がりの状況で、底を打った後、17年の後半からプラスに転じているということなんですけれども、まだ設備投資意欲は低いと言える状況ではないでしょうか。選挙直前は案件が動かない、とよく言われますけれども、選挙後も、新体制が有機的に動き出すには時間がかかり、それまでの期間はですね、不透明な時期が続くのはないかと考えております。

 後で別の資料を用いて説明いたしますが、当部会においては、この指数とビジネスの関係が深い建設機械を扱っておられる各社も、回復傾向は見られるものの、不安は払拭しきれないというような状況というふうに考えております。

 ここから、セグメント別の状況を説明させていただきます。まず、鉄鋼であります。ブラジル鉄鋼協会がまとめている数値を使っています。左上に2013年から17年までの年間の粗鋼生産推移を示しております。その右に、今年の5月までの粗鋼生産を示した表を準備しています。

 上期の回顧としてはですね、左のグラフから、2016年に底を打った後、17年に大きく改善をして、2018年も引き続き対前年比で増加はしているんですけれども、やはり5月のトラック運転手のストの影響、これ今までの2人も述べておられましたけれども、そういったことの影響で減速しているというような状況であります。

 国内販売は、回復をしてきた自動車業界の牽引によって増加傾向にありますが、先ほどのグラフでお示ししたように、建設業界等依然として需要が低迷しているところもあり、盛り上がりに欠けているといったような状況であります。

 輸出については、対前年比で減少傾向。輸入は国内景気の回復を期待して、若干増加傾向にあると見ていますが、世界市場は5億5000万トン分の余剰生産があって、その半分、2億8000万トンは中国と言われております。したがって、今後の為替動向によって大きく変化する可能性もあるとブラジル鉄鋼協会は懸念を示しているという情報もございます。

 下期の展望といたしましては、4つの観点から不透明な状況が続いており、引き続き今後の動向を注視する必要があると思っております。4つと申しますのは、まず、これまでも何回か申し上げたトラック運転手ストの影響に伴う景気の停滞でございます。2つ目はまさに10月の大統領選挙。3つ目は、お隣のアルゼンチンで起きている通貨安に伴う自動車等の輸出販売への悪影響、ということです。最後はですね、4つ目は、アメリカの保護貿易措置が及ぼす世界的な影響と。こういったことでございます。

 続いて電力でございます。これはエネルギー研究公社の資料でございます。左の棒グラフが2013年から昨年までの電力消費の推移、右の棒グラフが2013年、14年、および17年の電力消費量の内訳を示しています。

 今年上期の回顧といたしましては、ブラジルの電力消費は左のグラフが示すように、2017年に前年を上回り、今年の5月までの1年間の消費量で見ましても、特に産業用の増加によって前年同期を上回っているというような状況でございます。5月時点での前年同月比では、トラック運転手ストはあったんですけれども、まだその影響は出ていなかったのか、2.9%の増加を示しています。産業別に見ますと、これカッコの中の数字でございますけれども、自動車がプラス13.4%、化学がプラス5.4%、プラスチックがプラス3.8%、金属がプラス3.4%となっております。

 下期の展望としては、エレトロブラスの民営化が遅れている等ですね、電力設備投資を巡る動向が不透明で、引き続き状況を注視する必要があると思っております。また、当機械金属部会の企業が関連しているバイオマス関係の発電設備はですね、新規の案件の動きはまだまだ低調が続くのではないかというふうに予想されておりまして、アフターサービスに力を入れていく必要があるというふうに見ております。

 次に、建設機械であります。先ほどマクロ指標として土木建設指標をお示しいたしましたが、ここでは建設機械生産実績をグラフで表しています。ブラジル地理統計院が、鉱物採掘および建設機械・装置として分類している数値でございます。

 上期の回顧といたしましては、土木建設指数と同じように、建設機械自体の需要も2017年まで落ち込んでおりましたが、2018年の1~5月の需要は、製品分野によっても異なりはするんですが、対前年比で20~30%、またはそれ以上の増加が見られるといったこともあります。輸出に目を転じますと、米国向けがアルゼンチン向けの減少を補うという、ほぼ同様の傾向も示しております。

 他方、下期を展望いたしますと、これまで官公需が増加して建設機械の需要を下支えしていたものが、選挙直前直後の公共工事ストップによって減少に転じる事や、不透明な政治情勢が経済界の投資心理に微妙な影響を及ぼしていることから、上期の勢いが継続するのかどうか、これも慎重に見極める必要があると思っております。また、輸出につきましては、米国の保護貿易措置や、IMFの支援を受けているアルゼンチン経済、この影響を注視することが肝要というふうに思っております。

 続きまして、自動車その他の産業関連セグメントです。資料といたしましては、左下に自動車生産協会がまとめた自動車生産台数の棒グラフ、その上にブラジル地理統計院が発表したその他産業機械の生産動向。これは2012年を100とした指数でございますが、その資料を準備しております。機械金属部会のメンバーは非常に多岐にわたっておりますので、一口で語るというのは中々難しいところがございます。この2つのグラフを参考にしていただきながら、当部会メンバーの肌感覚といいますか、実際ビジネスを行う際に感じている状況をご紹介させていただきます。

 まず切削工具に関してです。この業界の主力ユーザーは自動車産業でありますが、色々なところで言われております通り、自動車の生産は回復してきております。大いに期待したいところではありますが、先にも申し上げたトラック運転手のストの影響や、大統領選を控えた微妙な時期ということから、先行きの不透明感は払拭しきれないという大きな捉まえ方をしています。その中で、農業機械や金型分野は比較的堅調に推移をしているというふうに見ております。切削工具分野としては、不安はあるものの、需要は今後も上向いて、下期もこの傾向が継続するものと予想をしております。

 次に、各種の回転機械に使用されるベアリングでありますが、これも自動車生産の状況と連動して、需要は横ばい、あるいは回復傾向と予想しています。今後、下期としては、現下のレアル安がどこまで行くのか、大統領選挙の行方がどうなるか等によって、こういった不安要素によってですね、前年と比べて余り大きな伸びは期待できないのではないか、微増というような見通しを立てています。

 金属加工油剤・潤滑油の業界に関しましても、自動車生産に連動して比較的堅調に推移をしていると見ていますが、その伸び率が鈍化傾向を示しているという若干不安要素もございます。課題は、レアル安と原油高に伴う輸入原料価格の急上昇というふうに見ております。

 小型ディーゼルエンジンの市場全体としては、上期・下期とも落ち込み傾向であると分析しておりますが、日本製の多気筒エンジンは堅調な見通しを持っております。トラクター分野は、ブラジル経済の回復とともに2017年に需要が戻りましたが、今年に入って再び落ち込んでいるというふうな状況です。下期に関しても、やはり大統領選挙の結果が、農業省の政策にいかに現れて、その投資心理にどのような影響が与えられるのか、こういった不透明感を感じております。ポンプに関しては、回復傾向にあるものの、全体的には足踏み状態と言ったところでしょうか。

 また、プラント向けの制御機器関連としては、2017年にプラスに転じたGDP成長率、原油高、およびパルプ需要の増加等に伴って、石油とか石油化学、紙パルプ、鉄鋼といった業種で現状設備の更新投資に対する投資意欲の回復傾向が見られるんですが、最終的な投資決定までには時間を要するものと、引き続き市場をよく見る必要性を感じております。

 次にオイル&ガスと紙パルプセグメントの状況です。資料としては、ブラジル地理統計院の石油製品・紙パルプ等の生産実績を2012年を100とした指数で表したものを準備いたしました。石油製品の生産実績は赤色、紙パルプは青の折れ線グラフで示しています。

 市場全体の動きをしては、今年1月にはバレル=60ドルだったものが、7月に70ドル近辺になったように、原油価格がですね、引き続き上昇してくるものというふうに見ています。また、ペトロブラスの投資計画もございまして、オイル&ガス市場はガス生産とかガス処理設備といった上流分野でのプロジェクトが活性化する予想がありますが、まあ大統領選を控えて大型の投資は先送りされる傾向も感じています。一方で、下流である石油・ガス化学は設備を縮小する傾向が見られておりまして、日本からの機器輸入は当分先になるのではないのかなというふうに考えております。

 紙パルプ業界においては、需要は拡大傾向にあるものの、トラック運転手ストの影響もあって、直近の生産は減少傾向にあると言えます。ただ、紙パルプ大手企業が中規模プラントの計画を持っているというような情報もございますので、これに期待をしたいというふうに考えております。

 最後は業務用空調セグメントです。ブラジル冷凍空調協会から入手した業務用空調の需要の推移でございます。これは、冷凍トンというですね、冷凍能力を表す数値を縦軸に取った棒グラフとなっております。

 2017年に若干の回復を見せて、下期から空調機の需要時期である今年の初頭までその傾向は続きましたが、需要期が終わったということと、これまで述べました色々な不安による経済回復の鈍化ということがございまして、上期は前年比103%とわずかな増加にとどまっています。今後は、10月の大統領選挙とか、気候にもよりますが、10月以降の需要期に5%~10%伸びてくれるということを期待をしております。

 以上、当部会を取り巻く環境を2018年上期および下期にわたって見て参りました。最後に、「大統領選を直前に控えて~変化の時期への準備と戦略は」という副題に対する部会メンバーの見方を紹介させていただきます。これは各位からいただいた内容を私部会長としてまとめさせていただいたものです。

 これまでご説明申し上げた通り、各指標では、数年間のトレンドの中では景気回復傾向は確かなようですが、一方で不透明感が拭えないというのが正直なところだというふうに思っております。しかし、ここでブラジルというのをもう一度見直して考えた時に、まあブラジルというのは、為替レートの変動を含めて、政治・経済的には常に変動と先行き不透明はつきものであるということで、何かが変わるたびに一喜一憂して、やり方を変えるというものはいかがなものかと、決して得策ではないというふうに考えております。会員企業が各関係先との長期的・継続的な信頼関係を構築し、維持する事が不可欠であると考えております。さらに、大統領選直前に活発に議論がされるようになった日本・メルコスールEPA締結等の新しい動きを通じて、ブラジルの製造業に貢献するという視点も必要ではないかと思っております。

 ご清聴ありがとうございました。

 

司会

 植田部会長、どうもありがとうございました。ただいまの発表につきまして、ご意見、ご質問等ございますでしょうか。特にはございませんでしょうか。それでは、植田部会長、どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、自動車部会の発表に移りたいと思います。下村部会長より発表いただきます。お願いいたします。

 

自動車部会

                    

                                                     下村セルソ 部会長

 皆様、こんにちは。自動車部会長の下村と申します。これから自動車部会の報告をします。よろしくお願いします。今回は、今年の上期の振り返りと下期の展望について、四輪、二輪の順に説明いたします。

 はじめに、四輪の上期の振り返りです。

 新車市場についてです。12年以降、大きくシュリンクしていますが、16年から回復しました。18年上期は約117万台、前年比114%と大きく伸びました。輸入車の比率は12%と、Inovar Autoの輸入車制限の解除もあり、7年ぶりに前年を上回りました。

 続いて月別の販売台数です。1月~4月は前年比120%と大きく伸びました。5月、6月はトラックドライバーストライキがありましたが、それでも前年を超えました。

 続いて生産、輸出です。上期の生産台数は144万台、前年比114%の好調です。輸出台数については、上期として約38万台と過去の最高でした。

 次に、新車・中古車別の市場です。中古車市場も新車同様に前年を上回りました。中古車、新車トータルで1200~1300万台レベルです。

 続きましては、ブランド別の台数とシェアです。テーブルを見てください。5 年前からトレンドを見ていくと、Fiatなど、これはBig4、欧米メーカーが台数・シェアを落としていましたが、日系メーカーが台数・シェアを伸ばしています。ここはちょっと頑張っております。ただ、今年の日系メーカーは、市場拡大に追いつけずシェアを少し落としています。

 次に下期の展望です。こちらから2018年の予測です。

 国内市場は大統領選挙の不安がありますが、先回の通り250万台程度を見込んでいます。前年比112%で、昨年に引き続き拡大する見込みです。

 生産・輸出台数については、生産は302万台、輸出は77万台と、先回予測から少し減らしています。これはトラックドライバーのストライキの影響でReintegraがリダクションしたことや、アルゼンチンの市場が減るためです。ただ、前年比ではいずれもプラスになると見ています。

続きまして、長期展望についてです。

 まずはRota2030についてです。前回のシンポジウムでは、Inovar Autoに比べて次の点が変更になると話しました。WTOで問題になったIPI罰則の軽減、より長期スパンでプログラム、セーフティ、コネクティビティ、新しい技術分野の強化、などです。2月から3月に発行する見込みたったのですけど、そこから大分遅れまして、7月6日にやっとRota2030のprovisional measureが発表されました。

 内容は先回説明したものから大きく変わっておりません。まず、生産工程の現地化要件がなくなります。そして、すぐれた技術の現地化に向けてR&D、エンジニアリング投資が強化されます。また、燃費改善やセーフティについては新しい技術の導入が促進されます。新たにサプライヤーの育成プログラムのイントロダクションをされます。

 また、Rota2030の発表と一緒にエコカー向けのIPI減税が発行されました。こちらは11月から始めます。今までの排気量から、燃費とCurb Weightの分類に変わりました。問題は、下の通り、今と比べてハイブリッドやPHV、ベネフィットはほとんど受けてないです。11月の施行までまだ時間があるので、さらなる税制優遇を政府にお願いしていく必要があると思っています。

 続きまして、今回のテーマである、変化の時期における日系ブランドの対応について説明します。

 まずはじめに、ここで伝えたいのは、次の政権にかかわらず、自動車政策やフリーポリシーはすごく大事ということです。RotaとIPIは先ほど話しましたので、EPAについて話します。

 メルコスールと日本のEPAについては、昨年からカマラでタスクフォースをつくったり、EPAのアンケートをやったりなど、いろんな活動をしてきました。アンケートの回答率は、自動車部会では100%、全体では70%でした。そのうち、日本とのEPAを必要と言ったのは84%とたいへん高かったです。

 一方で、日本サイドには、アメリカのFTAやRCEPがあります。メルコスール・日本のEPAのプライオリティが下がるのではないかと心配しています。11月にはブエノス・アイレスでG20もありますので、自動車部会としては、ヨーロッパ、 韓国とのEPAに遅れないように日本政府にできるだけ早く交渉を始めてもらいたいと思っています。

 今日お話したことを次のスライドにまとめます。

 今年後半は、Rota、IPI、EPAなど大きな動きがありますが、サプライヤーを含めた自動車業界は、長期的な視点に立って環境変化に負けない事業体質を自分たちでもつくっていく必要があると思っています。

 最後に、今日お話した内容に関連する、これまで行ってきたブラジル政府への提言です。コスト削減、競争力強化につながる抜本的な取り組み。自由貿易の促進。長期的なdirectionを持った自動車政策の発行。業界全体がワンチームとなって、引き続き政府に提言していきますので、どうか皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

次、二輪です。まず、生産・販売についてです。

 二輪業界もようやく市場が回復してきました。1月~6月の販売は45万台、前年比112%と、年の前半としては7年ぶりに前年を超えました。二輪のお客様となる所得層でも、失業率の改善から購入マインドが高まっています。また、輸出も前年比127%となったので、生産台数は49万台、前年比117%となりました。

 こちらは登録ベースの月別販売です。1月~6月は、3月以外はすべての月で前年を上回りました。金利が低くなっているため、クレジット販売が少しずつ回復しています。今年後半は大統領の選挙がありますので、今後の状況をしっかりと見ていく必要があります。

 最後には、支払い形態別のグラフです。緑はローン販売比率です。厳しい状況が続いていますが、少しずつ回復していることがわかるかと思っています。金利の安定や失業率の改善でローン販売が増加し、年後半も市場がさらに回復することを期待しています。

 これで私の発表を終わります。ありがとうございました。

 

司会

 下村部会長、どうもありがとうございました。ただいまの発表につきましてご質問等ございますでしょうか。ぜひとも積極的に議論して参りたいと思いますので、何かございましたらお願いいたします。特にございませんでしょうか。それでは自動車部会の発表は以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。

 そうしましたら、続きまして、前半の部最後になりますが、コンサルタント部会の発表に移りたいと思います。西口部会長よりお願いいたします。

 

コンサルタント部会

                    

                                                        西口阿弥 部会長

 皆さん、こんにちは。コンサルタント部会のEYの西口です。どうぞよろしくお願いします。

 まずは、コンサルティング会社の実績について話したいと思います。大きく二つに分けられまして、ビジネスサービスとコンサルティング会社のサービスに分けました。

 ビジネスサービスについては、法律、会計、ITメンテナンス、セキュリティーシステム、広告、人材派遣、自動車リースのサービスとなります。

 下の表のコンサルティングサービスでは、監査、税務、コーポレートファイナンスなどのサービスとなります。

 ビジネスサービスとコンサルティングサービスは、2014年度をめどに伸びております。ただし、コンサルティングサービスに関しましては、2015年はペトロブラス汚職事件、政治経済不安定による企業のコスト削減により、コンサルティングサービスはマイナスの伸びとなっております。特に、ぜいたくなサービスと言われていたデジタル関連のサービスは先送りされた模様です。監査や税務、それ以外の企業のコスト削減やプロセス改善などのコンサルティングサービスについてもマイナスとなりました。

 コンサルティングサービスの今までの動向とチャレンジについて話したいと思います。2016年から2017年までは一般的にブラジル投資案件は減り、企業戦略に関わる事業のポートフォリオのマネージメントや、事業戦略にかかる業務は減りました。2016年からは汚職防止対策のためのリスク分析や、その防止ポリシーの構築、コンプライアンスなどのサービスは増えておりました。2017年には特に事業のリスク、オペレーションのコスト削減についてのサービスが増えました。

 2017年から2018年前半は、デジタルソリューション業務についてのサービスは金融機関やバックオフィスにも導入が多くされるようになりました。特に、投資した資本に対しての利益分析が必要、コスト削減や販売拡大が課題となっている場合には、データーアナリティクスに関するサービスも増えております。データーアナリティクスに関しては、人事などでもリテンションのための従業員の行動の分析や、社内の労働裁判の提訴傾向を分析するようなデーターアナリティクスのサービスも新しく出てきました。

  ロボティクスについてのサービスは、大企業、あるいは中小企業でもマニュアル業務が多い企業が導入している傾向にあります。AIについてはまだ議論に留まっており、実際サービス提供はほとんどありません。

 コンサルティング会社の課題について話したいと思います。特に監査法人の業界で言いますと、いまトランスフォーメーションの時期と言われています。特に会計、法律、税務に関わる業務で、オートメーション化する範囲は多くあります。その際にどのような業務をオートメーション化するか、それによって減少する伝統的なサービスの代わりにどういった新しいソリューションを出せるかが課題となっております。

 また、政治・経済不安定により、社内での投資も先送りとなり、どこへデジタル関連などの戦略的な投資を行うかも課題となっております。特に税務やコンサルティングサービスのノウハウを生かし、ソフトウェアやテクノロジー会社と一緒に、システムやツールをパートナーシップによって開発をしています。どのようなソリューションをどの会社と一緒に開発していくかというのも大きなチャレンジとなっております。

 サービスの地域でのスタンダード化とは反対に、各国に合ったサービス、カルチャーに合ったサービスを提供することが重視されるようになりました。例えば、ウェブナーを使って、効率的にサービス量の削減のため好む国もありますが、face to faceで話す国ではそういったサービスの提供の仕方も変わってきます。

 経済不況に伴い、競合会社や顧客からのプレッシャー、またはサービスによってはコモディティ化され、どのように差別化をして、サービスに付加価値を与えることができるかというのも課題となっております。

 コンサルタント部会での会合では、大統領選について簡単に説明を行ってはどうかという意見がありましたので、簡単に紹介したいと思います。

 この表は、大統領候補者の政治的立場が分かるものが左にあり、右の表には8月20日現在に行われた支持率調査の結果と、ご参考のため下の段には候補者の簡単な紹介となります。

 こちらの支持率の調査はルーラが出馬しないことを前提に、副大統領候補のフェルナンド・ハダジが候補となった場合の、8月20日現在のIbopeの調査となります。PT党では、獄中にある元大統領ルーラも立候補しております。ルーラが2審でも有罪判決が出ているので、立候補が無効になる判決が出ると思われます。しかし、ルーラが出馬可能となった場合には、8月20日現在、ルーラの支持率は37%、ジャイル・ボルソナロが18.8%、マリーナ・シルバ5.6%、ジェラルド・アルキミン4.9%、シロ・ゴメスは4.1%となっております。10月7日の選挙に備え、ルーラが出馬しない場合、右翼のジャイル・ボルソナロの支持率が1位となっております。

 ブラジルは、第1次選で50%以上の得票がないと2次選がございます。マーケットにはオープンのジェラルド・アルキミン、ブラジルのセントロン、つまり小さな党の集まりがございますが、その支持を得ております。その支持によって、8月後半に始まるTV放送時間でのキャンペーン時間も長く取ることとなっており、メリットがあると言われております。

 右翼のボルソナロは、ブラジルのトランプと言われています。マイノリティのアタック、刑罰に関する姿勢、軍事政権の支持者であることから、支持率もありますが、不支持率も高いと言われております。ソーシャルメディアに力を入れており、フェイスブックでも500万以上のフォロワーがいます。

 シロ・ゴメスは元PT党。マリーナ・シルバも元ルーラ政権の環境相であったため、投資家からの人気はございません。

 一般的には、まだ誰が当選するか分からないと言われております。ハダジ、アルキミン、ボルソナロ、シロ、マリーナ・シルバは2次選に行く可能性がある候補者であると言われております。

 コンサルタント部会での会合では、ブラジルでの成功するためのヒントがあるのではないか、特に上場企業で最近株が値上がりする企業について、ヒントがあるのではないかと話し合いました。

 EYのストラテジストと話した際には、ブラジルではいくつかのヒントがあると言っておりました。

 まずは、デジタルとフィジカルチャンネルの組み合わせです。2017年から2018年7月末までの上場企業の株の上昇を見ても、Magazine Luizaは2位となっております。Magazine Luizaは1975年、小さなプレゼントのお店から始まり、今は全国740店舗、9つのディストリビューション・センターを持っています。今は販売のチャンネルとして、お店、インターネット販売、電話での販売、ソーシャルメディアでも販売をしております。インターネット販売は2017年はグループ全体の26.3%を占めました。

 顧客とつながるサステナビリティでは、会社内のサステナビリティだけではなく、顧客が消費する商品にサステナビリティを体験できる場合のことを指し、環境に関してのサステナビリティはNaturaがその例と言えます。詰め替え用の容器を販売することで、プラスチックも54%の節約、商品にもアマゾンの自然の植物などを利用したり、オーガニックのアルコール使用などが挙げられ、顧客もそれを体験できるようにしています。

  良いサービスを超えるカストマーエクスペリエンスでは、良い商品・サービスだけではなく、競合と差異化を図ることが難しくなっており、スターバックスの例のように、サービスや商品だけではなく、良い体験も大切ではないかと言われています。ブラジルのFleuryの戦略は、カスタマーエクスペリエンスを考え、ブラジル企業ホスピタリティー団体では200企業のうち、6年間連続でホスピタリティーのあるナンバー1の企業に選ばれております。子供の遊び場や、女性用の店舗もございます。

 デジタルによる利便性ですが、おなじみのUberやタクシー利用の99Taxiは皆さんご存知だと思います。Pão de Açúcarでは、去年の中旬から新しいアプリを設け、元々のPão de Açúcarの会員の顧客の消費の習慣を分析し、顧客の購入の多い商品にディスカウントを設けております。インターネット販売も行っております。

 最後に、顧客のライフサイクルに沿って顧客のニーズを予測するアマゾンは、ブラジルでは匹敵する企業はありませんが、何かヒントとなるのではないでしょうか。

 最後に、コンサルタント部会での会合では、日系企業様へ、ポジティブで投資のヒントとなるメッセージを伝えるべきではないかということで、話し合いで出た点をお話しします。

 まず、先ほど申し上げました、ブラジルで成功しているケースを分析。先ほどのスライドで、過去7カ月で株価が値上がりしている上場企業や、成功しているケースを分析すると、会社や事業などに何らかのヒントがあるのではないでしょうか。戦略、商品、サービス、コストダウン、効率向上のヒントが得られるのではないかと考えました。

 日本ブームの活用。ジャパンハウスの無印良品が好評であったことや、すき家、ラーメンなどがブームの中、日本ブームをうまく利用できる手はないでしょうか。ブラジル市場にあった工夫をし、活用できるのではないかと話し合いました。

 Rota2030。こちらについてはもうご説明ありましたが、皆さん分析されておりますが、インセンティブプログラムを最大に活用することが大切だと思います。

 最後に、長期的にはインフラへの投資。大統領選後、政治経済、良い兆しが見えるといいのですが、インフラはまだブラジルでは不備であること、PPPで投資するチャンスがあると言われております。

 コンサルタント部会では以上となります。

 

司会

 西口部会長、どうもありがとうございました。ご質問、ご意見等あれば、積極的にお願いできればと思います。どなたかございますでしょうか。西口部会長どうもありがとうございました。

 これで前半一旦終了ということなんですけれども、ちょっと時間がありますので、私の方から簡単に前半のまとめということでお話しをさせていただきますと、2018年の上期につきましてはですね、5月のトラックドライバーのストライキまでは比較的順調だったけれども、その後、米中の貿易戦争であるとか、トルコを発端としたエマージング売りに巻き込まれて、大統領選の先行きの不安もあいまってですね、不透明感が高まって為替が急落。下期は総じて軟調な展開を予想する方が多かったかと思います。それに対する準備、戦略ということなんですけれども、まあそうした環境下にあってもですね、ブラジルのアップダウンに一喜一憂せず、企業自身の強みを生かすことを考えて、やるべきことを着々と進めるということで、やるべきことというのはですね、例えば本邦企業間の連携であるとか、地域、例えばメルコスール等、地域を面で捉えた戦略の推進、また、Rota2030等ですね、にかかわるブラジル政府向けの政策の提言等、こういったお話だったかと思います。

 大久保さん、何か、もしコメントがおありになれば。

 

大久保敦 企画戦略委員長

 急に振られてしまったんですけれども、あとですね、為替リスクのミニマイズというのが、変化への対策としてよく話が出ていたのと、あとは長期的な信頼関係構築ですとか、やはり一喜一憂しないという話しも出ていたかと思います。あと、自動車部会の方ではですね、日・メルコスール、EU、韓国とのFTAに劣後しない内容を早く、交渉をですね、進めていくというような、色んな要望もたくさん出ておりましたので、そういったことがクローズアップされているのではないかなと思います。あと、日本ブームの活用とかのアイデアも出て、これも面白いなというふうに考えております。以上でございます。

 

司会

 はい、ありがとうございました。後半はですね、先ほど申し上げました通り、大久保さんに司会の方をバトンタッチしたいと思います。拙い司会でしたが、どうもありがとうございました。そうしましたら、後半はコーヒーブレイクをはさみまして、今15時20分でございますので、15時35分から、15分間お休みを入れてですね、再開したいと思います。どうもありがとうございました。

 

コーヒーブレイク

 

後半の司会

                    

                                              大久保敦 企画戦略委員長

 これより2018年下期業種別部会長シンポジウム後半戦ですね、こちらの方に移りたいと思います。よろしいでしょうか。はい、では後半の部を始めたいと思います。よろしくお願いいたします。私、後半の部の司会を担当させていただきます、企画戦略委員長のジェトロの大久保でございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。それでは早速、各部会の発表に移りたいと思いますが、タイムキープを含めてですね、皆様のご協力をお願いできればと思います。

 まずは化学品部会から発表をいただきたいと思います。羽田部会長より発表をいただきます。羽田部会長、よろしくお願いいたします。

 

化学品部会

                  

                                                     羽田徹 部会長

 (※冒頭音声なし)。よろしくお願いします。早速始めさせていただきます。化学品部会ですが、自動車などの産業向け素材からですね、食品などの消費者向け製品まで、非常に多岐にわたる市場に関わっております。よってですね、その市場一つ一つ、全部お話しすると、たいへんなことになってしまいますので、かなりまとめる形でお話しさせてもらいます。それと、他の部会さんと重なるところ、むしろ依存するところ、多いということで、マクロ的な業界動向分析というのはここでは割愛させていただきます。

 いつものように、当部会ではですね、アンケート形式をとりまして、メンバー皆さんの業績推移ですね、それと取り組みというのをベースにお話しを進めていきたいと思います。

 今回もアンケートをとっております。20社から44件の回答を得ております。その中から、多い順に上から、今日は3つ、輸送関係、ヘルスケア関係、農業、この3つを話したいと思います。

 まず全体の話になります。参考のために左側に前回のシンポジウムの結果を載せておきました。前回ですね、メンバー皆さんに対して、2018年、皆さんの業績どのように推移すると思いますか、という問いをしております。その結果です。約8割のメンバーがですね、売上・利益ともに増加するであろうというふうに見通しておりました。今回のアンケートの結果が右の2つになります。

 上期、実際にどうでしたか、業績推移は上期どうでしたか、ということ。もう一つ、下期、どのように推移するとお考えですか。そういった問いに対するアンケートの結果です。半期ごとと年間というのを単純比較は難しいんですが、今回の結果、少し気になるところが、不変、減少を見込む割合が少し増えてきてしまっているかなというところだと思います。では具体的に見て行きます。

 まず輸送ですね。自動車関係の部材となります。前回シンポジウムではほとんどの会社さんが増加を見込むという結果でしたが、今回、上期、実際に前回の予想通りとなっております。下期については、減少を見込むところ、1社出てきましたけれども、基本的には当初予想通りかなと。先ほどからもあります、自動車の増産、これに伴う販売増というのが主な増加要因なんですけれども、他に例えば、欧米メーカーへの攻略成功したというような、まあ新規開拓ですね、とか、部品メーカーのニーズに応える形で輸入在庫ビジネスを始めましたと。少しリスクをとる取組みが始まっている、そういう理解をしました。ただ一方で、特に韓国勢ですが、価格競争が深刻化しており、今後の懸念として示されておりました。

 続いてヘルスケア。食品・化粧品・医療品周りの材料となります。2018年見通し、前回シンポジウムですね、この時には全社が増加すると見込んでおりましたが、今回はちょっと違った形で返ってきております。

 この分野、販売時期に季節性があるので、簡単には申し上げられないんですが、ちょっと気になるところをこれで見る限りは、減少してしまった、もしくは見込むというところが出ているところですね。実際には全ての分野で回復傾向にあるとのことです。そのトレンドを逃さないように、販売チームの増員に取り組んでいるところもございました。一方で、価格競争、特に欧米ですね、が激化するというようなことが懸念として挙げられていました。また、一部原料の高騰ということで、利益を圧迫していると、そういった事例がございました。

 続いて農業分野になります。これは農薬でほぼ構成されております。ブラジルの農業、GDPの2割ぐらい占めるわけですが、依然好調です。昨年農業生産が史上最高を記録したわけで、ブラジルGDPのプラスを牽引いたしました。今年、そこまで行かないけれども、史上2番目レベルの農業生産が見込まれております。その部分については非常にポジティブです。

 しかしながら、その農業生産を支える農薬についてはちょっと違った見方をしております。私、農薬業界に身を置いておりますので、少し、ここの部分はですね、良い機会だと思うので、マクロ的なところからお話ししたいと思います。

 まず、これですね。農業に利用可能な水と土地が、どこに、どれだけ豊富にあるのかの世界地図です。水玉が大きければ大きいほど水が豊富にある。赤が濃ければ濃いほど、農業利用できる土地が大きいと、そういうふうにご覧ください。

 水に関してはブラジルが断トツトップです。赤いところ、ロシア、アメリカ、ブラジル、土地が豊富にあるということですが、農業を考える時にもう一つ重要な条件、気候条件ですね。その観点から見ると、ロシア、アメリカというのは非常に厳しい冬があると。一方ブラジルではそういったものがなく、年平均で1.8回作付けができると言われております。それらのことから、ブラジルというのは農業に最も適した国であると言われており、今後の人口増加に伴う食糧増産の需要を支える世界の台所としてブラジルが期待されているわけです。

 そのブラジルの国土になります。8億5100万ヘクタールありますが、この円の左側、約半分がですね、森林、川、浸水地帯となっております。ここはもう手をつけてはいけないエリアになっています。そして時計回りに、市街地、住宅地、工場地帯ですね。そして次に赤いところ、これが農業用地になります。7800万ヘクタール。結構大きなスペースで放牧地があります。そして小さいですが、林業用ということになっておりまして、一番下の空白のパイですね、ここが不毛の地と言われるセラードを中心とした遊休地となっております。

 ブラジル農業、まだまだポテンシャルがあると言われておりますが、その理由です。ちょっとサークルがずれておりますが、まずこの下のパイ、遊休地を農地として有効利用可能だと言われております。もうひとつ、放牧地、これも一部有効利用可能だと言われております。田舎に出張される方、ご存知だと思いますけれども、広大な土地にですね、牛が悠々と放牧されていると。アメリカと比べると、面積あたりの牛の数というのはブラジルは非常に少ない。つまり土地をもうちょっと有効活用できるわけですね。そういったことから、農業転用ができると期待されています。これらもろもろを合計すると、現状の農地を3倍強にできると言われております。

 そういったポテンシャルを背景に、ブラジルの農作物の今後の作付けの見通しがこういうふうに出ております。最も大きな作物、大豆の話をしますが、左上ですね、これまで大体年間平均成長率5%で順調に伸びてきております。これ、イメージでどんなものかというと、日本の全国水稲面積ぐらいのサイズがですね、毎年増えてきているというのが、ブラジルの大豆でございます。で、今後も引き続き安定して伸びていくというふうに見られております。

 この背景には中国需要の高まりがございます。今の米中貿易摩擦をみていると、このスピードというのはもっと早く増えていくのかなというふうにも考えられます。

 このほか、コーン、シュガーケーン、ウィートなども増えていくと見られております。ほかにコットン、コーヒーとございますが、この6作物で、ちなみに、ブラジル農薬商品の約8割カバーしております。

 その農薬です。これ世界市場になりますが、大体年間ですね、500億ドルから600億ドルの間にあります。世界ナンバーワン市場がブラジルとなっております。続いて、アメリカ、中国、日本というふうになっております。そのブラジル農薬市場における農薬メーカーのトップ10ランキングをここに紹介したいと思います。

 今ですね、農薬業界、業界再編が起こっております。これ、我々の農薬ビジネスにもどう影響してくるのかというのは非常に分かりません。そういうこともあってですね、ここは業界再編、グローバルなですが、そういったこともあわせて紹介したいと思いますが、ブラジルナンバーワン、バイエルです。これ、アメリカのモンサントという会社を買収して一気に1位に躍り出ています。買収金額が660億ドル。信じられない金額ですが、1位に出ております。今年の6月、ようやくですね、世界各国の独禁法審査が通って、ようやく一つの会社として稼動を始めたばかりです。

 2位に陥落したのがシンジェンタ。これ元々、ノバルティスとゼネカの合併企業ですが、2年前に中国のケムチャイナがR&Dをベースにした会社がほしいということで、420億ドルで買収しています。

 そして3位にダウ・デュポン。これはお互い生き残りをかけて合併したわけですが、これも6月にですね、無事合併完了ということで、一つの会社としてようやく稼動を始めたところです。そしてBASFなどと続くんですが、7番目にUPL、これインドの会社ですが、この会社、今月の頭にですね、9番目にあるArystaというアメリカの会社を42億ドル、現金で買収するということを発表しました。

 ということで今、農薬業界というのはこういうことが起こっています。

 ちなみにブラジル市場で10位に位置しているのが日系のIHARAという会社です。これは日本の農薬関係会社の共同出資の会社です。ちなみに弊社もその1社になっております。

 ここで2つ申し上げたいんですけれども、まず一つ目、この業界再編。非常に多額を投資して、合従連衡進んでいます。今後ですね、この投資回収のために、非常に積極的な戦略で市場に出てくると思われます。その影響がですね、我々のブラジルビジネスでどういうふうに出てくるのかというのが、分かりません。戦々恐々としているところです。

 もう一つ、ジェネリックの台頭というところです。この表ですね、青枠と黄色枠に分けております。青枠はR&Dをベースにした会社になります。つまり、年間何十億円レベルの研究開発投資をして、新規の農薬を生み出そうと努力している所です。黄色枠、特許切れ化合物、いわゆるジェネリックですね、これをベースとした会社になります。このグラフ、3年の販売推移なんですが、青枠見ていただくと、R&Dの会社、軒並み売上を落としております。一方で黄色枠、ジェネリックをベースとしている会社、これが売上を伸ばしてきているということで、我々日系、R&Dベースですが、非常に大きな課題を突きつけられているのが現在の状況です。

 では、農薬市場の見通しになります。過去3年、少し足踏みしていました。天候不順だとか、病害虫の発生がなかったということで、流通在庫の問題が大きくありました。ここにきて在庫消化が進んだと言われていまして、回復基調に入りました。作付面積の拡大に伴って農薬市場も安定して伸びていくというふうに見ております。

 回顧と展望、農業分野に戻ります。申し上げましたように、農業生産、作付面積、非常にポジティブであります。それに伴う形で農薬市場も安定して伸びていくというふうに見ておりますが、当部会としてはですね、あまり楽観視はできないというような結果になっております。その理由が、ジェネリックの台頭と、大手の合従連衡による影響の不安感というところでございます。

 では全体の総括に参ります。大方の市場で回復基調にあるのは事実です。これまで通りの地道な営業活動、コストダウン、続けつつ、輸入在庫ビジネスの開始とかですね、そういった新規事業の構築、また人員を増強するというような少し前向きな、リスクをとった取組みを始めております。

 一方で、ジェネリックを中心とする中国、そして韓国、欧米との価格競争の激化というのが課題として挙げられておりました。部会懇談会の中でも、まあ何となく、コンサバ感が漂っていたんですが、多分その要因がですね、大統領選挙の後の影響が、まあどうなるのか分からないということで、そういったものが多く横たわっていました。

 それらを総合的にまとめると、この下期というのは、まあ攻める準備はしつつも、少し様子見かなというふうな言葉でまとめることができると思います。

 最後になりますが、変化の時期への準備と戦略はということで、部会メンバーの皆さんから回答をいただいて、それをワードクラウドにかけましたところ、出てきたキーワードがこの上の部分になります。事業、需要、為替、大統領などなどですね。

 メンバー皆さんの取組みというのをですね、これらキーワードを軸に集約してみました。とにもかくにもですね、大統領選、どうなるのか分からないと、その後の影響というのは不透明であるということで、一喜一憂せずにですね、これまでの取組みというのを粛々と続けていくというのが、まず基本中の基本にありました。とはいうものの、市場回復基調にもありますし、大統領選後も、需要、それが本物化するであろうという期待もありますので、需要拡大に期待してですね、在庫の確保に努めるところ、また、工場増産のための投資を検討しようと考えていらっしゃるところ、ございました。また、投資環境の整備が進むと期待してですね、M&Aなどの可能性を探るというような体制をご検討始める会社さんもいらっしゃいました。最後になりますが、まあ為替がどちらに動くか分からないということで、周辺国への輸出の強化に取り組んでいらっしゃるところ、また、原料を国内品に切り替えようと検討されているようなところがございました。

 はい。以上になります。ありがとうございました。

 

司会

 羽田部会長、どうもありがとうございました。ただいまの発表につきまして、ご質問のある方、挙手をお願いできますでしょうか。はい、よろしくお願いいたします。

 

発言

 羽田さん、どうもありがとうございました。三菱商事の松永です。今のご説明でですね、ブラジルは非常に、農薬なんかのポテンシャルが大きいと。その一方で、ジェネリックだとか、大手の合従連衡、なかなか厳しいなということなんですけれども、今のプレゼンにはなかったんですけれども、以前私がちょっと聞いたのはですね、結構ブラジルの場合は、輸入通関じゃなくてですね、不正の密輸ですね、農薬もかなりあるというような話を聴いたことがあるんですね。ただ、今のプレゼンにそこに触れられていないというのはですね、非常にそれ、量としてはnegrigibileなのか、あるいは当局がしっかり取り締まってですね、この辺の密輸が減っているのか、その辺のことをちょっと教えていただければと思います。

 

羽田部会長

 ご質問ありがとうございます。減っておりません。パラグアイあたりから入ってきます。ブラジルの登録制度、非常に厳しいものになっています。登録制度そのものでですね。反面、その周辺国というのはまた違った登録制度がございますので、ブラジルの審査にもかかわらず、周辺国、登録取得できるケースがあります。そういったものが平気で国境を越えて入ってきております。まあ、約1割ぐらいじゃないかと言われています。よろしいでしょうか。

 

司会

 ほかに、はい、お願いします。

 

発言

 島津製作所の的場といいます。ちょっと本題からは外れる、どっちかというと枝葉末節の質問かもしれませんけど、農薬のことを詳しくご説明いただいたので。先週のニュースでちょっと気になるニュースがあったんですけど、除草剤のグリフォサートが使用禁止になるかもしれないという、背景には何かアメリカの損害賠償の問題があるみたいなんですけど、あんなメジャーな除草剤がほんまに使用禁止になると、ブラジルみたいな大規模農業にとっては致命的なんじゃないかとちょっと心配なんですが、ご専門家的にはどんな見方をされているか。

 

羽田部会長

 これを使えないとなると、多分、思ったような収穫できないと思います。ブラジルの農業、大打撃だと思います。これもですね、グリフォサート、再評価にずっとかかっているんですけども、Anvisaがなかなか評価進まなかったという背景があります。で、まあ周辺国の動きもあるんでしょう。そういったことから、連邦裁判所だったと思うんですけども、もういいかげんに評価始めなさいということで、ちょっとドラスティックな命令を出したのかなというふうに受け取っております。ただ、こうするとブラジル農業壊滅しますので、農業省を中心にですね、マッジ大臣自らですね、このオーダーを覆す準備を今しているところだとコメントしたりですね、業界挙げて反論したりしております。これは当然農薬業界だけではなくて、使用する農家さんたちもですね、なくなるとたいへんな事になりますので、そういったことで、ちょっとどうなるか分かりませんけれども、大豆播種というのが9月から始まりますので、それまでに何らかの結論が出てくるのかなというふうには見ております。

 

司会

 はい、ありがとうございました。もう一人。

 

発言

 日本経済新聞の外山と申します。ちょっと1点教えて頂きたいんですけど、為替、足元のレアル安がですね、化学品業界、特に農業界に与えるインパクトというのをですね、ちょっと教えていただきたいんですけれども、結構私取材をしていると、為替安で輸出競争力が増えるみたいな話も聞く一方で、そういう、農薬とか肥料とか、輸入しているものがコスト増になるというあれで、どっちでも良くないよねというような話はよく聞くんですけれども、ここら辺、売っている側の業界からするとどのようなインパクトがあるんでしょうか。

 

羽田部会長

 非常に難しい、複雑な質問なんですが。おっしゃる通り、こちらの、特に大豆農家ですね、大豆を売る時にはドルでやっていますので、レアル安というのは非常にポジティブではあります。けれどもおっしゃる通り、農業資材というのはほぼ輸入ですので、レアル安ということで、コスト高になっているのも事実です。農家の利益率が下がっていると言われています。一つには、レアル安ではあるものの、大豆の価格がですね、昔ほど上がってきていないということがあります。それと、トラックストにあったように、ロジコストが非常に上がっておりますので、そういったことから利益率が下がっているというのは事実です。ただ、今、中国とアメリカの貿易摩擦ありますので、そういったところで、今、大豆がブラジル産注目されていますので、そういったところで、大豆の価格自体が上がれば非常に農家にとってもいい傾向に入ると思います。よろしいでしょうか。

 

司会

 はい、よろしいでしょうか。それでは、羽田部会長どうもありがとうございました。

 引き続きまして、電気電子部会の発表に移りたいと思います。日比部会長より発表をいただきます。日比部会長、よろしくお願いいたします。

 

電気電子部会

                   

                                                       日比賢一郎 部会長

 皆さん、こんにちは。電気電子部会の日比と申します。よろしくお願いします。電子部会はですね、まず民生品、あと産業向けの電気資材を取り扱う企業の皆様、あとは電子部品を取り扱う企業の皆様、あとはソフトウェア、アプリケーション、ソリューションを取り扱う企業の皆様から構成されている部会です。毎年恒例なんですけれども、電気電子部会もですね、アンケート調査と、一度部会を開きまして、今日はそのアンケートの結果と、あとは部会でいただいた色々なコメントを中心に発表させていただきたいと思います。

 まず、今回のテーマである2018年上期回顧と下期展望ですが、始めに前回のシンポジウムの時の電気電子業界の事業環境をおさらいしたいと思います。

 当時は過去数年続いていたブラジルのリセッションから一筋の灯が見え始めた状況だったかと思います。違った表現で言えば、どん底、底打ちといった状況から、回復の兆しが見えてきた時期とも言えるかと思います。ただし、事業領域、商品カテゴリーによって回復のスピードが違っていたのも一つの特徴でした。またマクロ的には、ブラジルの大きな課題でもある財政赤字の問題が大きな懸念点でもありました。

 続きまして、昨今の事業環境でございますが、一時は安定感を見せていたブラジル経済でしたが、グローバル市場では米国の金利政策、米中での貿易戦争。そしてブラジル国内では、皆さんもコメントが多々ありましたが、5月のトラックスト、混迷する大統領選からの政情不安によるブラジル・レアル安、また、低空飛行を続けている国内の景気回復等が、我々の業界成長に影響を与えつつあります。

 こちらのチャートは、我々の業界の液晶テレビと携帯電話の小売販売の推移を示したチャートになります。ご覧いただけますように、液晶テレビに関しましては、昨年の3月以降堅調に需要は回復しております。特に今年の4月以降ですね、皆さんよくご存じのサッカー・ワールドカップがございまして、そこでの特需が大きく業界を伸ばす一つの要因になっております。

 その一方で携帯電話。携帯電話といえば世界的に伸び盛りのカテゴリなんですが、こちらは昨年の2月にプラス成長に転じておりますが、昨今伸びが鈍化傾向にあり、直近では対前年比でほぼ横ばいといった状況が続いております。

 こちらのチャートは、主要家電製品のマナウス経済特区での生産数量の推移になります。左から、液晶テレビ、携帯電話、電子レンジ、エアコン、そしてオーディオとなります。それぞれでこぼこはありますが、経年推移でみますとどのカテゴリも成長基調にあると言えるんですが、その中でも、売上を継続的かつ堅調に伸ばしているカテゴリとしては液晶テレビとエアコンが挙げられるかと思います。特に液晶テレビ、これは弊社でも扱っている商品なんですけれども、特に都市部ですね、都市部では4Kテレビや大型インチの商品。そして地方では中・小型の液晶テレビがよく売れており、ブラジル全土にわたり特徴のある商品構成で需要が増えているのが特徴と言えます。次のページに移らせてもらいます。

 こちらのチャートは2018年2月時点と、今回での、上期の回顧と下期展望のアンケート結果の推移を示したチャートになります。ご覧頂いてお分かりの通りに、2018年2月時点に比べ、今回のアンケート調査では、18年上期回顧に関しては、改善と回答いただいた企業メンバーが2月より大幅に増えているのが特徴ではないかと思います。その一方で18年度下期展望になりますと、改善から維持に回答を変えた企業メンバーが増えており、やはりこの辺りは昨今の政情不安、レアル安といった政治経済環境の変化を敏感に表しているのではないかと思います。

 さらにここをもう少し深堀りしてみますと、18年上期回顧で改善と回答された企業メンバーのコメントをいくつか抜粋しますと、消費の回復、需要の回復、設備投資の回復、自社努力の成果といった、経済の回復を感じ取ることができるコメントが多くあります。

 一方ですね、18年下期展望のところで維持と回答された企業様のコメントを見てみますと、景気回復の当社想定からの遅れ、大統領選による不透明感の増大、それに関連して政府向け需要ですね、政府向け商談の停滞、耐久消費財需要の腰折れ、レアル安による値上げ、といったコメントが出ており、内容が先行きの不透明感、直近経済の閉塞感、停滞感といったトーンに変わっているところが印象的だと思います。

 ここでサマリーなんですけれども、18年上期に関しましては、耐久財・消費市場の回復と自社努力によるプラス成長。特に産業向けビジネスは顧客の需要拡大に伴い堅調に推移、といった攻めの状態でしたが、一方18年下期に関しましては、景気回復の遅れ、レアル安、大統領選の不透明感による投資の抑制あるいは見直し、事業体質のさらなる強化、バランスシートの管理強化といった守りの姿勢に変わってきているかと言えると思います。

 ただし今後に関しましては、景気の穏やかな回復と、市場の将来性への期待をしながら、販売力の強化をしつつ、顧客基盤をしっかりと作り、生産面においても、設備投資、人員の強化は、状況をしっかり見つつもタイムリーに行っていきたいとコメントする企業のメンバーの方々が多く見受けられました。

 次ですね、シンポジウムの副題ですが、「大統領選を直前に控えて~変化の時期への準備と戦略は」というテーマなんですが、当部会でコメントしていただいたものはこちらに書いてあるんですが、昨今大統領選の行方に対する深い不透明感はありますが、それに対応して、レアル安、為替ですね、に対しての対応。あと政府支出の抑制に対する対応。これは具体的には、政府のみではなく、民間からの取り込みも積極的に行っていく。あとは状況の悪化、改善、この両面ですね、を想定した準備を怠らないといったようなコメントをいただいております。

 最後になりますが、当部会から商工会議所、ブラジル政府、日本への要望ということで1枚用意しました。こちらのサマリーですが、政治・経済・為替・治安の健全化・安定化への努力。新規事業や輸出拡大へのインセンティブの積極的・継続的な供与。もろもろの税制面での優遇・改善。ビジネスインフラ・環境の整備。ファイナンス、ファンディング、パートナリングの支援・連携促進。あと、欧州、韓国とメルコスールのEPA締結の動きが出ていますが、これに遅れを取らない日本・メルコスールEPA締結に向けての迅速なアクション。といったようなコメントをいただいております。

 私からは以上になります。ありがとうございました。

 

司会

 日比部会長、どうもありがとうございました。ただ今の発表につきまして、ご質問ある方、挙手をお願いします。よろしいでしょうか。それでは皆様、拍手でもってですね、電気電子部会の発表を終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、食品部会の発表に移りたいと思います。黒崎部会長、発表をお願いいたします。

 

食品部会

                  

                                                    黒崎正吉 部会長

 味の素の黒崎でございます。よろしくお願いいたします。食品部会の方からは、この3つの柱で本日はご報告をさせていただきます。はい、お願いします。

 こちらが食品部会会員企業ということで、44社。色んな業態で構成されておりますので、部会の議論もですね、色んな視点でのポイントが出てきて、非常に勉強になると。ただ、これを一つにまとめるというのは大変難しいという特徴でございます。ただ、議論の後ですね、懇親会に入りますと、saudeの発声とともに一瞬にして一体感が生まれるといった特徴を持つ部会でもございます。それでは早速次のポイントに入って参ります。

 二つ目はこの3点で、市場および会員企業の状況と、あるいは頑張りといったところをご報告させていただきたいというふうに思います。こちらの方がですね、市場全体の状況、我々がとらえております市場全体の状況ですけれども、売上高伸長率については16年度以降ですね、直近に至るまで緩やかな回復基調という状況でございます。特に、これ最近明確に気づいてきたところなんですけども、キャッシュ&キャリー、これAssaiであるとか、Atacadaoといったチェーン店でございますけども、相対的に店頭価格が低い大型の業務用スーパーという位置づけでございますが、業務用だったのが今は一般消費者の方も自由に使える、どんどん一般消費者の方がそっちに流れているという業態、キャッシュ&キャリー、こちらの方が非常に伸びていると。これが全体を、緩やかな成長を押し上げているという状況でございます。

 今まで主力だったスーパー、あるいは大型スーパーの状況はどうかというのがこちらでございます。これはNielsenデータでございますけれども、Nielsenはキャッシュ&キャリーまでフォローできていないんですね。そういう中で、ご覧いただけますように、全体としてはまだマイナス成長です。その中で、飲料、あるいは食品といったものもマイナス成長という状況でございます。この1枚目、2枚目で何が言えるか、これ2つあるというふうに我々考えております。

 市場全体は緩やかな回復を示しておりますけれども、流通の中での力関係といったものがどんどん変わってきていると。そういった意味では、我々各社、販売面、あるいは販売戦略、流通戦略というのはきちんと合わせて行かないと遅れをとるぞ、という点が一つ。また、消費者の起点で見て行きますと、引き続きといいますか、よりですね、消費者の方々の低価格志向というのが強まってきている。これは今後も続くであろうと。さらに、その低価格志向の中でも、品質についてはよりこだわりが消費者の方々強くなってきているという傾向が見て取れるというのが市場の全般的な状況でございます。

 それでは次にですね、会員企業の現状、活動状況、成果といったところですけれども、ここにございますように、やはり食品部会もですね、18年上期、トラックストライキ影響などで景気の不透明感が増している中、会員企業は各々の課題対応と機会を生み出す取組みを継続しておると。全体を通しますとこういうふうに言えるだろうと。

 今回は9例、11社の事例について具体的にポイントで皆様にご報告をしたいというふうに思います。表の左側は18年上期市場動向ということでございます。右側が、会員企業の成果と課題。課題、あるいは挑戦、チャレンジということでご覧ください。

 一つ一つポイントでご説明しますが、調味料につきまして、これ弊社の例でございますけれども、5月のトラックストライキ、大きな打撃を受けましたが、6月、概ね回復ということで、全体では良い状況になってきている。ただし、レアル安、輸入原料のコストアップへの対応、あるいは消費者ニーズに対応した製品開発が必要だというのが課題でございます。輸入原料を使っている各メーカーは共通の課題をこういうふうに持っているということでございます。

 次に、しょうゆ、これキッコーマンさんですけれども、当地での使用形態、味覚、嗜好に合わせて開発した「しょうゆ液体調味料」、これはしょうゆではなくて、しょうゆ液体調味料という製品コンセプトの下、新たなプロダクトポートフォリオの策定をされたと。まあ攻めですね。よって、これからのチャレンジは、日系のみならず、ブラジル人の方々、消費者の方々にブランド認知の拡大をどうしていくかということが大きなチャレンジになっているということでございます。

 酒類。こちらは東麒麟さんの方ですけれども、東麒麟さんの方は販売面、流通面の戦略をさらに強化されて、売上拡大につながっているという成果を出されています。

 コーヒー。こちらは、国内は柔軟な価格対応と付加価値型商品の拡売もあり、好調に推移。輸出品も成約率が向上というふうに報告しておりますが、これは2社ございまして、ブラジル国内市場、付加価値型商品次々に発売されているのが三井アリメントスさんで、売上拡大が続いているという攻め。で、輸出品ですね、これはインスタントコーヒーと生豆でございますが、特に生豆の方で成約率が去年に比べてぐっと上がっているというのがイグアスコーヒーさん。要は、機において敏と申しますか、タイミングですよね、それをがっちりとらえて、アジア勢との戦いがあるわけですけども、そちらに価値を進めているということでございます。ただし、輸出、やっぱりこれトラックストライキの後、他でもございましたけども、輸出向け税還付制度見直しですね、これへの対応が今後の課題になっているといったようなことでございます。

 次にチョコレートですけれども、これはハラルドさんでございます。トラックストライキの影響で売上ちょっと落ちてますけれども、利益面は改善をしているということ。で、今チャレンジをされているのが、やっぱりチョコレートはイースターの時期の卵型のチョコレートは1年の中で相当な量を売っていた、それがちょっと平準化されてきちゃっているわけですね。年間を通していかに売れていく製品を開発していくかというところへのチャレンジが始まっているということでございます。

 即席めん。これは日清さんでございます。これはカップヌードル「シーフード」の上市、これが好調と。これやっぱり、食品はおいしさが一番の基本でございます。そして、ブラジルの消費者の方においしいと思ってもらえる商品を出すことができたということでございます。

 食肉。こちらにつきましては、NHフーズさん、日ハムさんでございますけれども、日本向けの鶏肉は回復傾向。あと、南米諸国向けの肉の増加。国内では食肉原料、例、ラーメン周りの材料で、先ほどコンサルタント部会の方から日本ブームを活用しろという話がございましたが、すでにNHフーズさんはこの取組みに着手ということでございます。

 乳酸菌飲料。こちらの方はヤクルトさんでございますけれども、トラックストライキの影響を最も大きく受けた企業の一つです。やっぱりトラックストライキは、賞味期間が短い商品、例えば野菜とか果物のようにですね、ヤクルトさんも短いわけですね。そこでの打撃というのは、売上面では取り返しできませんけれども、この間にも生産部門での各種コストダウン、利益力の強化ということに取り組まれたということでございます。新たなチャレンジも、ヤクルトさんの中では、宅配ビジネスモデルの革新ということで始まっているということでございます。

 あと、食品添加剤、香料。こちらは高砂さんとナガセさんですが、対前年実績増と。両社とも良い成績で来ているということでございます。現地系顧客や中小規模顧客等へのアプローチ枠を拡大していると。攻めに転じているということでございます。あとは、新たなる製品開発というのが今のチャレンジと。

 今11社をご紹介いたしましたが、非常に厳しい環境の中でもそれぞれですね、こうやって成果を出し、課題を明確にしてやってきているということが言えると思います。

 そういったことを踏まえて、市場の今後のポイントを3点整理しております。

 1点目はどの業種も一緒ですね。不透明感、大統領選を控えた不透明感、これは同じでございます

 2つ目。ライフスタイルの変化に伴い、新たな消費者ニーズが顕在化してきていることに加えて、特に食品・飲料についてですね、先ほど申しましたように低価格志向の強まりが見られる。これは当面継続していくだろうと。低価格志向でしかも質を求めるニーズは高まってきている、あるいは細かくなってきているという状況でございます。

 3点目は、一つはトラックストライキ以降も課題は残っているということ。まあ、再発もあり得るだろうというふうに見ております。あとはやはりレアル安。輸入原料のところですね。これ共通して言えることです。あるいは税制。様々なリスクへの対応がこれからさらに迫られるであろうというふうなポイント。この3点が今後の見方でございます。

 そういった中で、これからのキーワードということで食品部会で選びましたのは、3点。リスクへのしっかりとした備え。ブラジル人消費者の方のニーズへの徹底適合。3つ目が、1、2を踏まえたポジティブなチャレンジをやっていこうということでございます。

 それでは最後の副題。今の3つのキーワードにそってご説明いたします。

 一つ目はリスクへのしっかりとした備えですけれども、まあリスクへの備えの徹底強化ということでございます。非常に具体的な話で申し上げれば、トラックストライキ再発、これに対してどう備えていくか。我々1回学んだわけですので、いかにそれをきちんとより強く準備できるかということでございます。

 二つ目。こういった中でやはり、企業として利益創出力の強化をいかにやっていくか。先ほどのヤクルトさんの、現場の創意工夫による製造コストダウンといったことが典型ですけれども、それを各社やっていくということ。あるいは、為替動向に応じた適切な原料買付けや、現地調達比、他の部会の発表でもありましたけれども、比率のコントロール。あるいは、複数購買を徹底的に進めていくといったことは急務ということでございます。

 3点目。やはり利益だけではなくて、PLだけではなくて資産効率をどう強化していくか。ROAあるいはキャッシュマネージメントをいかに強化していくか、キャッシュをよりどう生み出していくかといったところにも、このリスクが多い中、あるいは変化の中でチャンスが多い中に備える上では必要かなということでございます。

 総じて申し上げれば2つ。一つは徹底的にリスクを洗い出していこうと。それは臆病なほどに洗い出していくと。臆病なほどに洗い出して何も起こらなかったら、ばかじゃないの、じゃなくて、それでよかったんだと思うことだと思っております。

 あと、トラックストライキがございましたように、ピンチをどう力に変えていくかということかと思います。ピンチはいろいろ、またやっぱり想定しても起きると思いますので、それをチャンスに、あるいは力に変えていくぐらいの意志を持っていくことが必要かと思います。

 ブラジル人消費者ニーズへの徹底適合。二つ目でございますが、こちらの徹底適合は大きく二つの視点で整理いたしました。

 一つは、スペシャリティーの追求による競争力強化。ここで申し上げていますスペシャリティーというのは、他社、あるいは競合他社が真似できない、あるいは真似しにくいことをスペシャリティー、つまり別の言い方をすると、それによって付加価値がつく、さらに言えば適正な利益がとれる、なぜならばスペシャリティーによって価格競争に入らなくていいということでございます。スペシャリティーの追求というのが一つの視点でございます。

 例えば、即席めんで先ほど、シーフード、ブラジルの消費者の方に受けていると、日清さんですね、申しましたが、それもスペシャリティー。なかなか真似ができない味。だけど、こちらにありますように、もう一つは、生産R&Dだけではなくて、販売面。要は今まで他のラーメン会社が手をつけていないチャネルへの拡売。これもスペシャリティーなんですね。スペシャリティー×スペシャリティー。これはさらに強くなるスペシャリティーですということでございますので、こういった取組みを日清さんがされているということでございます。

 食肉。NHフーズさん。先ほど申し上げましたようにラーメンもありますけれども、実はブラジルのお肉屋さんに行くとブロックのお肉が多いんですけれども、スライスされたお肉が非常に少ないですよね。そこにやっぱり、利便性といったところに目をつけられたスペシャリティーが展開しているというのがNHフーズさん。

 食品添加剤。これ長瀬さんの例でございますが、トレハロースというスペシャリティー素材をいかにより活用していくかという視点でのチャレンジが始まっています。日本ではお餅や麺に使われる素材でございますが、ブラジルの消費者に合わせていく。ブラジルでスペシャリティーを作るという点では、チョコレートやケーキといったところへ使えないかというチャレンジが今始まっていると。これもスペシャリティーだと思います。

 しょうゆ、キッコーマンさん。先ほど申しました通り、新たなチャレンジが始まっているわけですけれども、これは新たな製品戦略、あるいは製品コンセプトづくり、プロダクトポートフォリオの転換によって、しょうゆ液体調味料でブランド認知を高めていこうということのチャレンジでございます。我々メーカーですので、最終的には究極のスペシャリティーはブランドかというふうに思います。そういったチャレンジが始まっているということでございます。

 ブラジル人消費者ニーズへの徹底適合ということで、二つ目の視点はですね、ブラジル人社会の変化への適切な対応ということでございます。一つ目は健康志向ですね。こちらは減塩、減糖、それ以外にもいろんなチャンスがこれから出てくるということでございます。

 二つ目、消費者行動の変化。先ほどの説明でもご報告しましたが、ハラルドさんの例で、新たな季節性に左右されない商品開発へのチャレンジと。

 三つ目。Facebook、SNSの普及。これに我々は、食品部会、あるいは我々企業がどう応えていくのか。単なるワンウェイコミュニケーションじゃなくて、2ウェイをどう活用していくのか。食品部会、全般的にはデジタル対応は多分遅れていると思いますけれども、デジタルの波はもう受けざるを得ない。何がどう変わるか分からないということは、しっかり備えて、さらに活用していけるようなレベルに我々なっておく必要があるだろうと。SNSの普及がなければ、今回のトラックストライキもあんなに大きなものにならなかったわけですよね。そういったことも踏まえてやっていこうということでございます。

 3点目ですね。リスク、あるいは消費者ニーズの1、2を踏まえた上で、ポジティブなチャレンジを、食品部会としては、それぞれのスタンスでやっていこうということでございます。

 事業環境の変化をチャンスと捉えたチャレンジということでございます。一つは既存ビジネスモデルの見直し。これは例で、先ほどヤクルトさんのですね、受発注、宅配の仕組みを変えていこうと。SNS、スマートフォン、インターネットを活用してですね、この伝統的で強かったやり方を変えていこうと。したがって、ヤクルトレディの動きも変革していこうという取組みにチャレンジされています。これも非常にポジティブなチャレンジということかと思います。

 あるいは、エリアの視点で言うと、ラテンアメリカにもっと出て行こうと。こちらの方は、長瀬さんやNHフーズさんが既に開始されています。他の企業も追っていきたいというところでございます。

 三つ目ですけれども、プロダクトポートフォリオ、さらには事業ポートフォリオの進化と革新ということでございます。従来の事業ポートフォリオに捉われない新たなビジネスへの挑戦ということ。まあビジネスモデルを作っていくというぐらいの志を持って、東京本社に輸出していくぐらいのですね、そういうモデルでチャレンジしていければというふうに思います。

 ポジティブなチャレンジということでございますが、まあチャレンジにつきものなのは何かというと、失敗でございます。私もたまに、部下に、チャレンジする、なんて言って、しますと言うわけですね。お前、でも失敗するかもしれないよ、どうするのと、すると、覚悟を決めていますと言うんですね。まあそれはいいからと、確かに必要条件かもしれないがと、毎回覚悟を決めて毎回失敗していたんじゃ、これは何にもならんと。ということで言うと、やっぱりポジティブなチャレンジをする上で、失敗した時にその失敗を失敗で終わらせないといいますか、失敗してそこから機会を作る、あるいはそれをどうつなげていくといった、シンプルな方法論を各社持って戦っていくべきだろうというふうに我々考えているということでございます。

 それでは最後でございますけれども、食品部会、Team Japanとしてがんばっていきたいということでございます。互いの強みを生かした協業や、連携の可能性を模索、これからしていきたいなというのが、食品部会の議論のひとつの結論でございました。例えば、長瀬さんがお持ちのスペシャリティー素材、トレハロースを、我々ブラジルのチームの中で、他のところでも使えないか、それで一緒に協業できないかといったようなこと。あるいは、この表にございますように、食品部会だけではなくて、他業種部会との可能性はないだろうかといったようなことも、これから模索していければというふうに思います。そして、事業だけではなくて、コーポレート部門、あるいは人事部門、労働関係の部門。カマラさんで労働部会がすごくよく頑張っていただいていると。それをいかに我々活用できるのかなといったような視点も含めた連携の模索をこれから是非やっていきたいと。そしてそれは、結果として(2)にございますように、事業を通じてブラジル社会、消費者への貢献をしていこうじゃないかという志を持っていきたいと。もちろん事業から出てきた利益の一部をCSRで活用していくということは継続でしょうけれども、ここのポイントは、事業を通じて、メーカーなので、商品なのか、サービスなのか、あるいはプラスアルファ、何かできるのか、ブラジルの社会・消費者に貢献していくということをベースに頑張っていきたいと。それが成長のサステイナビリティを支えるものになるだろうというのが食品部会の考え方でございます。

 最後に、食品部会としては、Team Japanとしてそういったベースを持ちながら、3つの戦いをやっていこうじゃないかということでございます。一つは、競合との戦い。徹底的に勝ち抜くこと。そこにはやっぱりスペシャリティーが必要であろうと。で、スペシャリティーは一つだけではなくて、掛け合わせるスペシャリティーができれば最高だろうと。そしてブランド価値を高めていくということ。

 二つ目は、時間との戦い。時間との戦いの一つはですね、やっぱりスピードですよね。今まで2年かかっていたもの、これをいかに1年でできるか、1年かかっていたものをいかに半年でできるか。いろんなリスクがある、そして環境変化は非常に激しい、あるいは速度を増している、その中でいかに我々はスピードアップできるのか。これが一つの勝負だし、もう一つの時間との戦いの視点では、タイミングですね。いくつかの食品部会の企業でタイミングをバシっと捉えて良い業績に結び付けている事例がすでに出てきておりますけれども、タイミングを逃さない。よく、チャンスの女神は前髪しかないと申しますけれども、通り過ぎたらもうつかめない、チャンスが来た時にがばっとつかまえるということをやっぱり意識して、やっていくということかと思います。

 最後3点目、3つの戦い、固定概念、既成概念との戦い。我々、個としても、組織としても、成功体験、失敗体験に基づいて、知らないうちに固定概念、既成概念ができているというのが現状だと思います。特にやっかいなのは成功体験ですよね。それをいかに破っていくかということが大切な戦い。なぜならば、固定概念、既成概念が我々のチャレンジをさせない一番の原因になるのではないかなというふうに思っています。

 こういったことで、Team Japanとして食品部会、明るくですね、がんばっていくという所存でございます。ご清聴ありがとうございました。以上です。

 

司会

 黒崎部会長、どうもありがとうございました。ただいまの発表につきまして質問のある方、ぜひ挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。はい、では松永会頭よろしくお願いします。

 

質問

 三菱商事の松永です。黒崎社長、どうもありがとうございました。日系の食品業界の方がですね、非常に努力をされているというのが良く分かりました。また、食品に限らずですね、色々示唆に富んだアドバイス、最後の部分など非常に参考になるかと思いました。ありがとうございます。今のプレゼンに、直接関係ないかもしれませんけれども、先週、今週とですね、日本の国会議員の先生がこちらに結構いらっしゃってまして、いくつか質問を受けて私自身回答ができなかったんですけど、まず一つは先週、宮腰総理大臣補佐官がいらっしゃって、泡盛をぜひ輸入したいということとですね、やっぱり芋焼酎、なんで輸入できないんだ、みたいな話があったんですね。私も黒崎さんと同じでウィスキー派なので、あまり芋焼酎とか関心は高くないんですけど、あれは若干、何かの成分が高すぎる、だから入れないというんですけど、そんなに健康にですね、本当に被害があるのかどうか、良く分からないし、本当のところはですね、ああいうところはやはりカシャッサなんかを守ろうとしているのか、その辺の、どうしてあんなにあそこだけ厳しいんですかと、いつ輸入再開できるんですかというのが一つ。もう一つがですね、まさに昨日なんですけども、平木経産省政務官がいらっしゃって、平木政務官から受けたご質問はですね、ここのブラジルのスーパー、商品棚を見てもですね、例えばアメリカだとかヨーロッパのメーカーさんのお菓子や食べ物はたくさんあるんだけど、日本のが少ないですよねと。あれはどうしてですかと、こういうご質問を受けたので、もしお分かりになればちょっとその辺をお話しいただければと思います。

 

黒崎部会長

 はい。まず芋焼酎、非常に大切な質問だなと、個人的にも。正直言って、よく知りません。昔は大丈夫だったんですよね、海童とか。

 

発言

 一定の基準が決められていて、他の焼酎は大丈夫なんですけど、芋焼酎はなんか引っかかってしまうということで、そもそもその基準が何の根拠があってできたかというのは次の宿題にしてください。

 

黒崎部会長

 二つ目の、日本のお菓子ですね。少ないですよねということですけれども、これもちょっと、本当は正直言って良く分からないんですけれども、ただ、例えば日本のチョコレートですね、私いつもスーツケースいっぱいお土産で持って帰って部下たちにあげるんですけど、ものすごくやっぱりおいしいと言うんですよね。本当はチャンスあると思うんですけれども、日本のメーカーさんの意欲の問題なのか、あるいは税制上どうなのかというのは、ちょっと確認してみないと分からないと思います。ちょっと残念ですよね。

 

司会

 他に質問ございますでしょうか。はい、よろしいでしょうか。ちょっと、日本食材が並んでいないというのは、私どもの努力不足というのもあるかもしれないので、頑張っていきたいと思います。それでは、食品部会の発表は以上とさせていただきます。黒崎部会長、どうもありがとうございました。

 引き続きまして、運輸サービス部会の発表に移りたいと思います。矢澤部会長より発表いただきます。よろしくお願いいたします。

 

運輸サービス部会

                   

                                                        矢澤吉史 部会長

 運輸サービス部会、NTTブラジル、ウィスキー派の矢澤でございます。よろしくお願いします。前回ですね、時間制限オーバーでたいへんご迷惑をおかけしましたので、なるべくスライドを減らしまして、時間制限内に収まるように進めたいと思います。よろしくお願いいたします。

 運輸サービス部会は6つの業界の集合体でございます。物流、航空貨物、海運、航空旅客、ホテル・旅行、で我々IT・通信という、実にall inclusiveな業界になっています。今回の発表資料も6つの各業界チームの方にですね、作って頂きまして、発表になります。よろしくお願いいたします。

 まずですね、物流でございます。昨年です、下半期から発生しています税関ストライキに加えまして、5月末にはトラック運転手のストライキがほぼブラジル全土にて発生したことが記憶に新しいと思います。主要幹線道路が封鎖され、国内、輸出入ですね、貨物に大きな遅延が発生して、ガソリンの供給も絶たれ、郊外ではバスの運転停止や、肉や卵、野菜がスーパーから消えるといった事態が発生して、生活基盤やビジネスにも大きな影響を及ぼしました。一方でですね、2018年の上半期のブラジルの貿易黒字は299億3300万ドルで、輸出額は対前年比で5.6%増、輸入額は対前年比で7.2%増となっています。

 貨物ですね、後から少しずつ回復してですね、新規のブラジルの相談や進出の引き合いも増えているということでございます。

 ブラジルの引越し荷受け、日本通運さんの実績では、昨年下半期同様、赴任者が帰任者の数を上回るという傾向が続いていまして、引越し荷物の件数は対前年比でプラス36.7%となっているようです。棒グラフですね、日本発船便の輸出件数を示しております。東アジア、南米向けは減少傾向。北米、中米は増加している傾向というふうに思います。

 下半期に関しましては、引き続きストライキ、税関ですね、のところに注視が必要で、先月一旦停止していました税関ストライキも今月から再開ということになっているようです。

 続いて航空貨物になります。トラックストライキの影響で緊急貨物が増加しまして、いわゆる特需というものが発生しまして、航空貨物は輸出・輸入共に貨物量が急激に増えたということでございます。特にですね、輸出に関しましては、対前年同期比で21.7%増。グアルーリョス空港では対応が追いつかず、現在も輸出貨物の荷受け制限を実施中といわれています。結果ですね、カンピーナスのビラコポス空港、輸出貨物が集中し、ターミナルへの搬入、最大で3日ぐらいかかっているという情報もございます。

 輸出貨物ですね、遅延のほかに、トラック料金の値上げ、そして航空貨物の運賃の大幅上昇も同時に発生しているといった状況でございます。このストライキによる輸出貨物増加は来月までは継続する見込みで、貨物のスペース確保のためには早めのブッキングが必要ということでございます。棒グラフはサンパウロの両空港の上半期の輸出量の大幅アップが見て取れるものだと思います。要因はですね、先ほど申しました通り、トラックストライキということが分かります。

 次は海運でございます。ブラジルに最も関係の深い3つの船、コンテナ船とドライバルク、ばら積み船、自動車に分けて見ていくんですけども、まず上半期ですが、コンテナ船は全世界的にですね、4~5%程度ですね、穏やかな増加があり、大型船のピークを迎えてスペースの供給量が必要以上に増え、運賃水準は概ね下っているという傾向でございます。

 ばら積み、ドライバルクですけども、世界的に回復基調でございまして、ブラジルも鉄鉱石や大豆等ですね、中国経済に支えられて好調ということでございます。自動車はですね、トラックドライバーのストライキなどネガティブな要因がございましたが、昨年から継続して輸出は好調ということでございます。

 下半期の展望でございますが、日系ですね、海運業界で最も大きなトピックスは、Ocean Network Express、ONEということでございますけれども、日本郵船、商船三井、川崎汽船のコンテナ部門が統合して誕生した新会社でございまして、ONEという総称でございます。統合当初ですね、不具合もございましたが、現在は状況も落ち着きつつあるということでございます。

 コンテナはですね、割合安定した世界情勢を反映しまして、海上の動きも増加する傾向で、ただ一方で、ロシア、イランへの経済制裁や、トランプ大統領の保護主義的な発言、言動ですね、行動も含めて、それへの報復。中南米にあっては、アルゼンチン経済が引き続き懸念条件ということでございます。

 ばら積みですね、ドライバルクにつきましては、米中貿易摩擦の影響が心配事項と。自動車は、ブラジルからの輸出の75%を占めるアルゼンチン経済の行方が焦点になっているようです。

 次はですね、航空旅客になります。上半期の国内線の有償旅客キロは対前年比でプラス4.2%、提供座席キロも前年比で4.2%増で、利用率80%を維持していると。堅調な伸びがあるということでございます。

 国際線は、ブラジル系ですね、航空会社の累計ですけども、有償旅客キロは対前年比でプラス15.8%、提供座席キロも前年比でプラス19.4%ということでございますけども、一方利用率はマイナス2.5ポイントで、この数字は、座席の規模の拡大でありましてですね、旅客数は大幅な増加となっているという状況でございます。

 下半期の展望につきましては、国内線は上半期同様に緩やかに航空需要が増える見込みでございますけども、一方で大統領選の影響により旅客の移動に鈍化の懸念もあるということでございます。

 国際線は下半期も旺盛な需要が続き、増便が期待されています。例を挙げますと、LATAM航空のサンパウロ=ボストン線が週4便追加され、エミレーツがですね、サンティアゴ=サンパウロ=ドバイ線を週5便追加と。エミレーツに関しましては、既存のサンパウロ=ドバイを含めると週12便ということになっているようです。

 特記事項としましては、前回のシンポジウムでも申し上げました、サンパウロ市内と空港を結ぶ鉄道、CPTM13号線ですね、今年3月、予定通り無事開通しています。6月から本格運行をしているということですけども、利用した方はいらっしゃいますでしょうか。いたら手を挙げてもらえますでしょうか。1人、ということで、そんなような状況でございます。

 またですね、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、ブラジルからの訪日数をいかに増やすかと。旅行商品の企画や、航空運賃低減が課題になっているということでございます。

 また、近年話題のエンブラエルですが、7月末現在での日本航空会社の保有機台数につきましては、日本航空グループが32機、フジドリームエアラインズが12機ということになっているようです。

 続きまして、旅行・ホテル業界になります。上半期の実績ですけれども、表をご覧ください。こちら、ブラジルビジネス旅行代理店協会という協会の発表した数字でございます。第1四半期はですね、国内線の航空券発券枚数はプラス1.5%と。売上は約10%と大きな伸びを示しておりますが、これはですね、国内線の運賃が平均的に値上がりしたということを示しているようです。一方ですね、国際線、発券枚数は対前年比プラス9.7%、売上も8.3%増と、伸びているかに見えますが、為替ですね、の影響で、これを差し引きますとドルベースでの売上はほぼ前年横ばいという状況なようです。

 次にですね、ホテル業界になります。対法人向けの営業成約数ということでございますけれども、宿泊数では20%減っています。一方で、売上は前年比で6.5%増と。この要因につきましては、ホテルの宿泊単価が平均的に上がったことが要因と言われています。また、旅行代理店を経由しましたホテルの販売は減少傾向が続いていると。対法人販売でもインターネット経由の販売、予約成約が増加している傾向だということでございます。

 下半期の展望ですが、景気回復の遅れ、ブラジル経済への不信感、ドル高レアル安継続、等ですね、本格的な弱みがありまして、旅行市場は上半期よりも悪化することが懸念されています。ネット経由での個人向けの販売ですね、航空券やホテルですけども、BtoCはさらに増え、各日系旅行代理店は積極的なデジタル化、法人営業の強化、独自の新しい旅行企画、ネットでは難しいようなきわめて細かなサービスとアフターケアというものを追及していく必要があるかと思います。

 またですね、日系移民の110周年記念イベントが各地で開催されていますが、日本からブラジルへのインバウンドですね、旅行、インバウンドで業務を後押しするような大きなイベントは今後あまりなく、治安の悪化や経済回復の鈍化もあり、残念ながら日系旅行業界のインバウンド業務を押し上げるような動きは見つからないということでございます。

 一方で、アウトバウンドでございますけれども、顕著に伸びる見込みがある分野がございますと。それは、日本へのですね、就労目的の渡航、移住という分野でございます。日本は不足している労働力を補う必要がございまして、海外からの労働力をですね、積極的に受け入れる事が経済発展には必要と言われていますけども、ブラジルからの就労目的の渡航も移住も今後まだ伸びていくものと見込まれています。一方で、日系四世へのビザ発給、受け入れ制度も先月スタートということでございますが、ちょっとネガティブなお話としまして、日本語検定試験4級以上、18歳以上30歳以下の年齢制限、家族の帯同ができないと、非常にビザ発給条件が厳しくて、これを使って日本に仕事に行く人がですね、どれだけ増えるかは非常に疑問だという声も上がっています。

 最後にですね、赤の字で書いています、粉のトピックスです。まあ怪しい粉もあるんですけども、コーヒーや赤ちゃんの粉ミルクのことを指しています。アメリカ行きの機内持ち込みは注意が必要ということでございまして、基本、350ミリリットル、12オンス以上の粉類の機内持ち込みはアメリカへは不可能になりましたということです。詳細は皆様がお使いの旅行代理店にお問い合わせください。

 最後に、IT通信になります。最初、モバイルから入ります。上半期の回顧ですが、携帯チップ契約数はですね、景気低迷の影響に加えて、キャリア間の接続料金の値下げで、複数チップを保有する必要がなくなり、引き続きですね、103万の減少となっています。4Gに関しましては、2G、3Gからの移行が順調に進んでいまして、上半期で約1343万増加と。ブラジルマーケット、市場の49%を占めるに至りました。マーケットシェアですけども、引き続きVIVOが、32%ですかね、トップでございます。

 下半期の展望ですけども、LPWA、あまりちょっとなじみがないと思うんですけども、Low Power Wide Areaという、消費電力を抑えて遠距離通信を可能にする新しい通信方式なんですけども、これが今年中に認可予定となっています。これがですね、認可されますと、何があるかと言いますと、通信コストの大幅な削減が実現します。特にですね、こういったもので、IoT分野ですね、より一層の成長が見込まれて、今後数年で、農業分野を中心に、機械やインフラのセンサーですね、監視用のIoTサービスの開発も急速に進んでいくものと思われます。また、4Gですね、LTEのより一層の普及、私はまだあまり、いまいち実感ができていませんけども、動画やビッグデータを活用したソリューションもさらに開発が進み、インターネットのトラフィックはさらに増えていくものと見込んでいます。

 次はブロードバンドになります。最新の情報では、ブラジルのインターネットユーザーは世界第6位でございます。日本よりも多くてですね、昨年より5%増えているという状況でございます。ユーザー数では南米1位ですけども、これは人口が多いだけということで、表のCの通りで、人口あたりの普及率は決して高いわけではありません。

 表のDですね。Dにつきましてはブロードバンドのマーケットシェアになります。NETですね、30%、VIVOが25%、Oiが20%ですが、これはどんどんマーケットのシェア下げていまして、これに対抗してSkyとかですね、あとTIMといった新しい業者が、特に郊外の方でシェアを奪って伸ばしているというのが大きな原因になります。

 下期の展望としましては、光ファイバーのカバレッジエリアの拡大や通信品質の改善が期待されます。こういった通信インフラの改善が進めば、クラウド型ですとか、色んなインターネットを経由したサービスもどんどん増えてですね、さらに利用料金も下がっていくというふうに見込まれています。

 IT業界を総括いたしますと、ブラジルはですね、今年3月、テメル大統領が「E-デジタル」という法令に署名しました。この法令はですね、ブラジルの国家デジタルトランスフォーメーション戦略の実施方針で、かなり多分ハイレベルな話なんですけれども、ITインフラの強化や、IoTの拡大方針も含まれているとなっています。このですね、ブラジルのE-デジタルですけれども、次回の9月のカマラの昼食会で、まさにこのブラジル国家デジタル戦略局長ご自身からご講演があるというふうに聞いております。

 このようにですね、デジタル化はクラウド系サービスのニーズも増えて、さらに情報セキュリティ、IT投資もすでに顕著に増えていますけども、一方でですね、こういった分野に精通したITエンジニアはなかなか確保できないというジレンマもございます。

 下期の展望ですが、グラフが示しています通り、クラウドビジネスの市場は今後3年でさらにぐんぐんと伸びる予想があります。BPOですね、Business Process Outsourcingという分野に関しましても同様でございまして、どんどん業務を外部へ移行するプロセスも加速しています。こういったBPOですとか、情報セキュリティですね、あとクラウド、外部の委託はますます増えていきますけども、同時にですね、外部の方の先の情報漏えいも非常に増えていますと。外部へ委託する場合には、非常に、信頼性をベースにですね、かなり慎重になる必要がございます。

 以上、6つの業界の現状と見通しを発表させていただきました。そしてですね、副題の、変化の時期への準備と戦略ですが、まずは変化の時期の変化とは何かを見てみたいと思います。

 ハーバードビジネスレポートでは、2000年以降、デジタル化による既存のビジネスの破壊。すでにですね、Fortune500の半分以上の会社が消滅しているとレポートしています。

 また、44%のビジネスリーダーは、彼らの既存ビジネスモデルが5年以内に消えると言っています。

 8割の従来型の伝統企業は、3年後には10%のシェアを失い、世界中の8割の会社が、今後生き残るにはデジタルトランスフォーメーションが必要と言っています。

 あと、ブラジルにはですね、本当に変化の時期が来るのかという声もありますけれども、皆様の言っていますレアル安ですね、の継続や、選挙後ですね、経済が仮に上向いても、内需指向が強まって輸出が伸びないんじゃないかとか、結局は中国経済に左右されると言った要素が多分にあるという意見がありました。そのためにですね、大統領が代わっても、中国がどうなっても、生き残り、成長していくためにはどんな準備がいるかという観点で、部会内の意見を集約させて頂きました。

 まずですね、イニチアチブ。新たなビジネスチャンスですね。盛んに皆さんも言われています、新規分野への積極的な投資。前回はBtoBtoXという言葉でご紹介しましたが、社会の問題解決や新しいバリューチェーン、そういったものに視点を置いたアプローチ。ブラジルでいえば、経済だけでなく、スポーツ、芸術、文化と様々な新規分野への投資ですね。日伯交流の活発化が必要だということですね。

 そしてあと、一方で変わってはいけないものもあるということで、エッセンスの尊重、維持というのも大事で、日本企業の本質的な価値ですね、あとバリューというものは決して変えてはいけないものだという声もありました。こういったエッセンスという意味では、日本人の心、エッセンスを尊重、維持しているブラジル日系社会とのですね、さらなる融和と協調発展は、我々日系進出企業がブラジルでこれから成長するためには必要と、大事なエッセンスという声もありました。

 最後はですね、我々経営自体のデジタルトランスフォーメーションということで、もはやですね、デジタル化は、IT担当に丸投げではなくて、経営者自体が考えるという時代に入っています。経営の効率化ですね、あと見直し、データ分析によってスピーディーな、客観的な経営判断が必要ということで、活用の幅をどんどん広げていくべきと思います。キーワードはデジタルトランスフォーメーションと。外界の変化に応じて、どんどん変化を返すべきと、強く感じます。

 以上でございますけども、こういった変化の時代でございますけども、昨日かな、ご案内させてもらいましたITセミナーもこういった情報収集にご活用ください。9月20日、木曜日の3時からですね。商工会議所の大会議室で予定しております。NTTグループからDocomoのIoTのビジネス責任者ですとか、昨年に続き竹内という者が、IT戦略=ビジネス戦略というテーマで講演させていただきます。あとですね、今年は特別ゲストを呼びまして、シリコンバレーですね、サンフランシスコに本社を置くパロアルトネットワークスからですね、情報セキュリティの専門家も呼んで、最新の脅威やソリューションというものをご紹介申し上げます。ぜひふるって応募をよろしくお願いします。

 最後にすいません、もう一点この場をお借りしまして、実は9月の末をもちましてNTTブラジルの勤務を終えまして、弊社グループがM&Aをしました会社の方に移ります。これをもちまして運輸部会長を、本流の物流ですね、NYK、日本郵船の吉田社長の方に交代します。私、細谷さんと交代してからまだ間もないんですけれども、短い間で非常にいろんな勉強をさせていただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。どうも、ありがとうございました。

 

司会

 矢澤部会長、どうもありがとうございました。ただいまの発表につきましてご質問のある方、挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいですか。それではですね、運輸サービス部会の発表は以上とさせていただきます。矢澤部会長、どうもありがとうございました。

 後半の部はかなり早いペースで、もう最後の発表となります。建設不動産部会の発表です。今川部会長より発表いただきます。よろしくお願いいたします。

 

建設不動産部会

                   

                                                       今川尚彦 部会長

 4月から建設不動産部会の部会長を務めています、ブラジル戸田建設の今川です。本日は建設不動産部会を代表し、部会内の各部会員の現状、建設不動産業界の現状、各社の取組みなどについて報告させて頂きます。よろしくお願いします。

 まず各社の2018年上期の業績を、アンケートの回答を基に振り返ります。グラフは2016年上期を100とした場合の2017年、2018年の受注高です。赤が2016年、緑が昨年、オレンジが今年です。4社のうち建設Aは、2016年比で昨年は2倍、今年は2.5倍と受注増となっています。まあただこれは、半期での受注推移であります。通期予測としては過去2年と同水準となる見込みで、近年向上しているとは言えないという状況です。建設Bは昨年落ち込みましたが、今年は一昨年のレベルに回復しています。不動産は好調で、過去2年間と比べて今年は約30%の増となっています。最後のインフラ建設は、公共事業の中断が影響し、今年は特に伸び悩んでいます。

 上期の全体的な出来事としましては、為替の悪化、それとトラック運転手のストライキが挙げられます。為替は年始に1ドル=3.2レアルだったのが、6月には3.7レアル、現在に至っては4レアルまで下がってきているという状況です。10月の大統領選の結果次第では、さらに悪化することも予測されております。

 5月に起きたトラック運転手のストライキは、約10日間にわたって全国で流通がストップ、全ての社会機能が麻痺寸前にまで陥った異例の出来事でした。当社でも、工事現場に資材が届かない、社員・スタッフが出社できないというような影響が出ておりました。

 部会内の上期の特徴としまして、産業全体では昨年よりやや上向きの景況感がありますが、建設は経済状況の影響を少し遅れて受けるため、いまだ案件の少なさ、小規模化が続いています。ただ、慎重姿勢の日系企業と比較して、非日系企業ですね、ブラジル、あと欧米企業は徐々に投資が戻ってきております。建設2社ともに非日系案件の比率が高まってきます。しかしながら、予算が絞られた設備投資ですので、受注競争は厳しく、競争力の向上と利益の確保が大きな課題となっています。

 駐在員向け住宅斡旋業の不動産は、ここ数年の駐在員と帯同家族数の減に歯止めがかかった感はありますが、これまで通りの業務形態では売上増は見込めず、付加価値サービスや現地向けのサービスを充実させなければなりません。

 インフラ建設は昨年から公共インフラ関連事業の多くが中断していることが大きく響き、業績が悪化しました。事業資金が滞り、事業主の支払い不履行が相次ぐなど、業界全体が苦境に立たされています。事業再開を働きかけるなどの交渉に注力していますが、同業他社の中には他工種工事に転向する企業も増えてきています。

 続いて建設不動産業界の現状についてお話します。ご覧のグラフは、全体のGDPと建設部門のGDPを比較したものです。右側の緑が全体、左側の紫が建設部門です。ブラジル経済は昨年、3年ぶりにマイナス成長から抜け出し、1%ではありますがプラスに転じました。一方で建設部門は回復が遅れ、2016年から3年にわたり、マイナス9%からマイナス5%台とマイナス成長が続いております。ただ今年は、0~1%程度が見込まれており、今年ついにですね、マイナスからの脱却が少し見え始めたというところです。大統領選の結果によるところが大きいですが、2019年、来年以降ですね、プラス成長が続く機運を感じることができます。

 次に失業率について見てみます。6月末の失業率は12.7%。2017年から高い失業率が維持されたままです。失業者数は依然として1320万人を数えています。ブラジル地理統計院の発表によれば、国内の正規雇用者数はピーク時の2014年から今年5月までに400万人の減少が発生しております。建設業の正規就業者数は、2014年の第2四半期と今年との比較では125万人の減。2014年の84%となっています。このように、建設部門の雇用状況は依然として厳しい状況です。

 次に不動産市場についてお話しします。ご覧のグラフはサンパウロとリオの住宅の売買および賃貸の取引希望価格を指標化したFipe Zapの2008年からの年間上昇率の推移です。青はサンパウロの売買、赤がリオデジャネイロの売買、緑はサンパウロの賃貸、紫はリオの賃貸の数値です。水色が総合市場物価指数のIGP-Mです。過去10年間を振り返ってみますと、2014年までは住宅価格上昇率がIGP-Mを上回っております。特に2010年、11年、12年は上昇率が顕著で、不動産バブルの様相を呈していました。ブラジルの経済が落ち込んだ2014年下期以降は、売買、賃貸ともに歯止めがかかり、2015年から2016年にかけ上昇率は、赤いラインの下ですね、マイナス側になっております。今年に入り、サンパウロはややプラス側に戻りつつあります。

 次にサンパウロ市内のマンション市場を見てみます。グラフは2009年から2018年までの分譲マンションの販売戸数と成約戸数です。左側が販売戸数、右側が成約戸数になっています。2014年までは新規販売が3万戸の水準で推移しています。2013年までは成約戸数も非常に高い水準が維持されています。ところが、2014年に成約戸数が激減、2015年、16年は販売・成約ともにそれまでの約3分の2まで減っております。昨年は販売が3万戸台に戻り、成約も2万3000戸に回復しております。今年は、5月までの実績をみますと、販売数は昨年よりも減っても、成約数は昨年とほぼ同水準となることが予想されています。不動産市場の回復が少し見えてきているということが読み取れます。

 以上、建設部門と不動産部門の概況、状況をお話ししましたが、次は、これからの変化にどう対応していくかについて報告いたします。

 建設、不動産、インフラ部門は、どの国においても景気の波に翻弄されやすい業界です。ご覧のグラフは1980年から約40年間のGDPの成長率の推移を、ブラジルと日本で比較したものです。日本は2010年に大きく低下していますけれども、それ以外はですね、ほぼ0から5%でプラス側で上下をしながら安定的な成長を40年間続けています。これに比べブラジルは、40年間で3度の大きな波があります。マイナス5%からプラス10%と、非常に大きく激しく変化していることが分かります。10月の大統領選挙によるところは大きいですけれども、先ほどまでの報告の通り、他業界に比べ少し遅れていますが、来年以降の景況感の回復が少し見えてきています。しかしながら、長い目で見ると、また新たな経済の浮き沈みの波が来ることは間違いないと思われます。特に浮き沈みが激しいブラジルにおいて、時代の波に翻弄されないような確固とした事業形態を持つことが肝要です。これまでの事業形態を見直し、新たな挑戦をしていかなければならないと強く思っております。

 非常に難しい課題ですが、避けて通れない道であり、新たな事業や技術の導入に挑戦している各社の取組みを今から報告させていただきます。

 まず一つ目は、インフラ建設に従事しているCGC社様の事例です。CGCは地盤改良という特殊土木技術を武器に、主に公共事業の土木工事を行っています。しかし近年、政治家の贈収賄事件等の影響で公共工事の多くは中断、停止をしております。このため、下期は大統領選等もあることから、ますます先の見えない公共事業から、民間事業の建設工事への割合を増やしていっております。左の写真は新築建物の地下5階の状況ですけれども、床の施工不良により水が湧き出ていたところを防水処理で補修を行った事例です。右側、既存建物の地下1階で地盤の改良工事を行ったものですが、他社が持っていない小型機械を狭隘部で使用しております。今までの公共事業に依存した営業活動から、民間事業へ活路を見出そうとしています。他社が行わない丁寧で確実な施工、アフターフォローで、新規顧客やリピーターの獲得を目指しています。

 次は、建設のHOSS建設の取組みです。HOSS建設は古いコンクリート建造物のひび割れ診断を行い、崩落等の事故を未然に予防する技術を導入しています。「HIVIDAS」という技術を使えば、従来の人による目視・打音調査の代わりに、高感度赤外線と熱画像で同時撮影。画像処理により、ひび割れや、浮き・はく離等を抽出、損傷展開図を作成できます。人の経験のみに頼るのではなく、遠隔地から画像で継続的に診断、適切な対応ができます。ブラジルは鉄骨造よりもコンクリート造が非常に多い構成になっています。老朽化の進んだ建築物も非常に多くあります。これから需要増加が予測されるリニューアル、メンテナンス事業に対し、他社が持たない新たな技術で差別化を図っていきます。

 最後は当社、ブラジル戸田建設の取組みです。当社は新規事業として、パラグアイへの進出、それと風力発電に取り組んでおります。まず一つ目のパラグアイですけれども、近年首都アスンシオンの建設ラッシュが著しく、建設部門の成長率が2016年は18%、昨年は8%の増加率でした。いくつかの日系企業を含め、ブラジル製造業の進出がここ数年注目されております。

 ブラジル製造業の進出が増えている大きな要因の一つは、コストの低さです。ご覧の通り、パラグアイと南米の他国を比較した場合、賃金、電力料金、法人所得税、付加価値税ともに格段の安さになっています。賃金についてはブラジルと比較して約3分の2。電力では約5分の1。法人税では3分の1。付加価値税も3分の1です。安定したインフレや為替、順調に成長するGDP、南米諸国の中では優良な国際格付けをもった要素が進出を後押ししております。

 パラグアイのもう一つの大きな利点は各種税制優遇措置です。税制優遇措置としては、投資企業に10年間の免税を保証する法律、単一課税1%のマキラ制度、フリーゾーンなどがあります。先週就任したベニテス新大統領は、公共インフラの改善、製造業のさらなる企業誘致を公約に掲げております。さらにビジネス環境が整うことが期待できます。また、ブラジルと比べ労働訴訟が少ないのもパラグアイの魅力です。以前パラグアイである日系企業のお客さんとお会いしてお話しを聞きました。2013年に進出、アスンシオンの首都近郊に従業員数約2000人規模の工場をもつ日系企業さんです。これまでの4年間、昨年までですね、4年間で、わずか2件の労働訴訟しか発生していないということです。それに比べて、まあ当社の話になりますけれども、ブラジルでは毎年10件以上の労働訴訟が発生、現在も80件程度労働訴訟を抱えているというのが現状です。

 右下のグラフは、ブラジルの新規労働訴訟件数を労働法改正前後で比較したものです。昨年11月の労働法改正により、今年1月から6月の新規訴訟件数は昨年の同月比で約4割程度減っております。しかし、新法施行直後は大幅に件数は減っておりますけれども、最近は減少幅が少なくなってきています。レベルがまた元に戻っているというのが現状です。各企業様とも、ブラジルで非常にご苦労されている訴訟対策、これには非常に膨大な時間と作業量、費用がかかります。我々一足先にパラグアイにおりますので、皆さんをパラグアイでお待ちしております。

 それではもう一つの当社の取組みです。もう一つの新規事業は風力発電です。建設事業者としてではなく、発電事業者としての参画を目指しております。ブラジルでは近年、再生可能エネルギーが飛躍的に発達しております。水力発電への依存度が高いブラジルでは、昨今の異常気象による渇水問題、環境保護、農業用水確保の問題から、水力以外の再生可能エネルギーへの転換が求められています。

 表の通り、ブラジルの風力発電の設備利用率は40%強と、世界的にみてもきわめて高い。また、発電コストを他国と比較しても低コストとなっています。日本の当社の本社では、浮体式洋上風力発電といいまして、海上に浮かぶ風車を建設し、2年前から商用運転が始まっております。このノウハウを海外展開していきます。今後さらに需要が見込まれ、安定的な収入を獲得できることを目的とし、ブラジルで初の当社の海外発電事業を目指しております。

 こうして各社とも、新たな事業、新たな技術の導入により企業価値を高め、差別化により、短期的なものでなく、時代の変化にも柔軟に対応できる事業形態を目指していっております。

 以上、建設不動産部会の発表とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

 

司会

 今川部会長、どうもありがとうございました。ただいまの発表につきまして、ご質問のある方、ぜひとも挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。前半部分が押していましたので、ちょっと時間ありますので、ぜひ前半部分も含めて。はい、お願いします。

 

発言

 ありがとうございました。三菱商事の松永です。最後の風力発電なんですけど、これは設備利用率というのは、風が吹いている時間というのは、一日のうち回っている時間ということですよね。

 

今川部会長

 そうです。実際発電している。

 

松永会頭

 それでコストは、これはドルで、これは陸上ベースということですよね。海上のこの、浮体のあれではなくて。

 

今川部会長

 陸上です。

 

松永会頭

 ブラジルでこういう浮体の洋上のやつを取り込もうみたいな、そんな動きもあるんですか。

 

今川部会長

 うちとして今考えているのは、陸上です。海上じゃなくて陸上です。ただ、事業としてのノウハウというのは一緒ですので、そのあたりは活用していこうというふうに思っております。

 

司会

 はい。他に質問ございますでしょうか。はい、山中公使、お願いいたします。

 

発言

 前半のやつでもよろしいですか。すいません、前半のところで一個質問があってですね、猪股社長にプレゼンしていただいた話のところで、54ページの対内直接投資のグラフの中で、2018年の上期、これ前半だけだったと思うんですけども、17年の通期を超えているということで、ある意味で増加率としてはかなり高い直接投資、日本からの対内直接投資の増加額なんじゃないかなと思うんですけど、これは何か具体的な理由というか、大きな投資案件があったのかどうか分かりますか。

 

猪股部会長

 申し訳ありません。これはブラジルの中央銀行の数字を拾ってきてプロットしている図ですので、詳細な内訳まではちょっと分かりかねるんですけども、金額的にはですね、17年が5億4000万ドル、で6億6000万ドルということで、そんなに投資額としては大きくないわけですね。例えばエネルギーであったり、鉱物資源であったりというところでの投資というのはこんな金額ではとても収まりませんので。だから、色々なその、例えば日本が投資している工場のですね、追加の増資とかですね、そういうものの積み上げなんだろうというふうには思っていますけども、大きな投資がこの18年の上半期であったというのは、私の中ではあまり認識がないですね。

 

司会

 はい。すいません、建設不動産部会の今川部会長の発表終わりましたので、最後、拍手でもってですね、ちょっと席に戻られてしまいましたけども。すいません、進行が。ありがとうございました。

 まだちょっと時間ありますので、前半も含めてですね、ご質問のある方、ぜひとも挙手をお願いできればと思います。はい、では松永会頭。

 

発言

 すいません、また松永です。電気電子部会の日比さんにちょっとご質問なんですけどね、最後のところで日本・メルコスールのEPA、これもぜひということで、力強いお言葉をいただいてありがたいなというふうに思っているんですけど、一方でマナウスの、税関特区というんですか、あそこで、EPAがですね、これ実際に発効すると、日本から持ってくる部品なんかが無税で入るので、そこのメリットはありますよねと。マナウスのあそこの経済特区を利用して、その税金のメリットを享受しながらものを作っていたのが、EPAができちゃうと色んなところから入ってきてですね、そうなるとデメリットになるので、あそこにいる業者さんの中には、やっぱりEPA反対だというような会社さんがいるのかなと、こういうことなんですね。

 

日比部会長

 ご質問ありがとうございます。回答はイエスアンドノーなんですけども、やはりEPA(以下、音声なし)税制上のメリットがうまく使えなくなるんじゃないかという危惧感は当然我々も持っています。ただし一方でメリットもあるので、これはどちらがいいのかというのは具体的な施策を見ないと分からないところもあるので、部会で話した時も、これは両方の、メリット、デメリットがあるよねということになっています。

 

司会

 ありがとうございました。他に質問ございますでしょうか。日通の細谷さん、帰られる前に何か質問ございますでしょうか。これだけは帰られる前に質問しておきたいということがもしあれば。特によろしいですか。すいません、ちょっと無理に振ってしまいましたけども。

 それでは、以上で前半5部会、後半5部会、計10部会の発表を全て終了いたしました。今回の副題のテーマは、「大統領選を直前に控えて~変化の時期への準備と戦略は」ということで、各部会からですね、色々な発表がなされました。特に多かったのがですね、まあブラジルは常にフラクチュエイト、ブラジル経済フラクチュエイトしていて、不透明感はつきものなので、一喜一憂しないと。長期的な信頼関係の構築とか、長期的な視点で環境変化に対応できるように体質を強化しなければいけないというような意見がございました。

 それから、そういった中でですね、日本の強みですとか、高機能、高付加価値に取り組む、スペシャリティ―の強化、といったような意見が出ておりました。そして、これまでの取り組みをですね、粛々とやると。地道な営業活動、コストダウン、新製品投入とかですね、そういった意見がですね、出されておりました。

 また、そういった中で、リスクへの備え、リスク分散というのもですね、皆さん、各部会で色々なコメントが出ていたかと思います。例えば為替リスクのミニマイズですね。それからキャッシュマネージメントの強化といったこと。レアル安対応ですとか、それからコストダウン。そうした中でパラグアイの活用というような話も出ていたかと思います。また、公共部門へのですね、顧客が多い場合ですね、顧客基盤の転換といったところもテーマとして出ておりましたし、また、現地調達の強化ですとか、輸出を強化していこうとか、さらにはリスクへの対応として最悪シナリオにも対応を準備しておくといった意見が出ていたかと思います。

 そうはいうものの、今後ですね、ブラジルが飛躍的に発展する可能性も出てきますので、将来に対する予測に対してしっかり研究をしていくといった意見も出されたかと思います。そうした中には、新規事業ですとか、ビジネスモデルの見直しですとか、投資M&Aといった意見や、それからブラジル人の消費ニーズを徹底的に適合させるために色々考えていくといったような意見も出ていたかと思います。また、日本ブームの活用ですとか、成功事例の研究といったことも挙がっていたかと思います。

 それから、あとはですね、Team Japan、連携というのもキーワードとして出ていたかと思います。Team Japanとして協業、連携していく。それから日系社会との連携、協調といったような意見もございました。

 いずれにしましても、変化の時期への準備と戦略で、黒崎部会長から3つの戦いということでですね、競合、スピード、タイミング、時間、既成概念との戦い、チャレンジをしていくといったことが大事というような指摘があったかと思います。また、デジタル化へのビジネス変革への準備ということで、ジャック・ウェルチのですね、組織の内部変化が外部へかについていけなくなった時、終わりがすぐそこに来ているといったような話があったかと思います。

 それではですね、ここで、本日特別参加いただきました、我々商工会議所の名誉顧問であります在サンパウロ日本国総領事館の野口総領事、そしてその後、ブラジル日本大使館の山中公使にですね、本日の部会の発表について講評、コメントをいただきたいと思います。それではまず、野口総領事、よろしくお願いいたします。

 

講評

                   

                                        野口泰 在サンパウロ日本国総領事

 どうも、高い所から失礼します。野口でございます。長時間にわたりまして、皆様本当にご苦労さまでございました。本日、様々な部会のですね、発表、お聞きをいたしまして、共通していたといいますか、印象に残っておりますのは、中々いまブラジル、難しい時期といいますか、忍耐の時期というか、我慢の時期というか、まあ様子見の時期というふうに捉えておられる方が多かったかなという印象を持っております。もちろん様子見の中でもですね、今この時期にですね、色々打てる手を打っていこうというふうなお話が多々あったかとは思っております。

 考えてみますと、今、中南米でですね、中南米の大きな3つのエコノミー、これがブラジルとメキシコとかアルゼンチンだと思いますけども。ブラジルはやはり大統領選挙が目前に控えておりまして、中々、大統領選挙後のブラジルが見通せないといいますか、不透明な状況にあるということもありますし。メキシコは6月に新しい大統領が選出をされてですね、ロペスオブラドールという左派系の大統領が12月に就任するということで、この経済政策がどうなるのかということについても、まあ不透明感があるとは思いますし、さらにメキシコは、NAFTA見直しという非常に難しい、何と言いますか、交渉といいますか、局面に立たされているということで、メキシコも中々不透明な状況にもあると。さらにアルゼンチンはですね、今日も色々と議論になっておりましたように、国際金融市場で色々、攻撃をされているというか、非常に標的になっているような、それによって、通貨安等のですね、状況にあるということで、この中南米の3つの大きなエコノミーがですね、いずれも困難な時期に直面しているのかなというふうな印象をもったところであります。

 それから、松永会頭の方から、ここ最近日本の国会議員の方が来られているということで、先週は宮腰光寛内閣総理大臣補佐官と。宮腰補佐官はですね、総理官邸におられて、日本の農水産品のですね、海外への展開に力を入れておられる方でありますけれども、宮腰補佐官は滞在中、カマラの昼食会に出席をされ、さらにFiespともですね、意見交換をされ、そして日系団体、特に県人会連合会、山田会長なんかともお話しをされてですね、そこで非常に、日メルコスールEPAを強く望まれているというメッセージは受け取られたところであります。11月30、12月1日にG20のサミットがブエノスアイレスで開かれる際にですね、安倍総理が南米に来られると、アルゼンチンに来られると、メルコスールの一角の国に来られる際にもですね、何かできないかというふうな問題意識を強くお持ちいただいたところであろうかと思います。特に、日本が農水産品を輸出したい、より関税を下げる、非関税障壁をもっと下げていくためにも、まあEPAというのが必要性が出てくるかと思いますので、そういった認識をもって帰られたところでありますので、ご報告をいたします。

 さらに、経済産業省の政務官をされておられます平木政務官もですね、昨日、何名かの商工会議所のメンバーの方ともお話しをされ、日メルコスールEPAについての問題意識をさらに高めたところでありますし、来月には、まだ確定はしておりませんけれども、外務省ですとか、農林水産省の政治レベルの方ももしかしたらサンパウロにお見えになるかもしれませんので、そうした政治レベルの方にですね、引き続き日メルコスールEPAの必要性というのを持っていただきたいというふうに思っているところであります。

 もう1点、今日の議論とは直接関係ありませんけども、宮腰内閣総理大臣補佐官が今週の火曜日にですね、ジャパンハウスで、泡盛と和牛の夕べと、鹿児島牛を含む和牛とですね、それから泡盛を中心とする日本のお酒をプロモーションするイベントを主催をしていただいたところであります。その際にですね、発表されましたのが、これまでブラジルが福島県産の農水産品の規制、これをしていたのをですね、解除するという決定をですね、火曜日に発表したということでございます。これによってですね、中南米地域ではブラジルが最後の規制をもっていた国でありましたので、その規制の障壁が取られてですね、地域全体として福島の農水産品の規制がなくなった地域と、これはアジア、ヨーロッパ、アフリカでもまだ全部なくなった地域はありませんので、中南米地域が初めての地域となったということで、今後の福島県産の農水産品の海外展開、特に福島の復興にも資するですね、そうした取り組みを我々としても支援をしていきたいというふうに思っています。

 最後に、矢澤部会長の方から日系四世のビザに対するコメントがございまして、日系四世のビザにつきましては、三世までとは違ってですね、ご指摘の通りいくつかの条件、まあ日本語の能力がN4という、それなりに日本語がしゃべれる、理解できる要件ですとか、あるいは年齢制限ですとか、あるいは家族を連れていけないですとか、いくつかの条件が付されています。こうした条件が付されている背景としましてはですね、やはり90年代以降、出稼ぎブームの中で、多くの日系ブラジル人が日本で働かれておりまして、今も20万人弱の日系ブラジル人がおられましてですね、日本の製造業、この人で不足といわれる製造業の中でですね、貴重な貢献をされているというふうに承知をしております。この90年代以降の多くの日系ブラジル人が直面された問題、特にご子弟の教育の問題、言葉ができないので学校になじめない、通学が困難になってくる、中々そういった学力、学歴がつかないので非常に困難な生活を強いられる、というふうな経験をふまえてですね、日系四世の方にはですね、ぜひ日本を知っていただいて、将来日本とブラジルをつなぐ懸け橋になっていただきたいという思いはありつつもですね、やはりこれまでの経験を踏まえて、同じような、なんと言いますか、困難を抱えられないように、特定の条件をつけさせていただいているというところでありまして、いずれにしましても、7月の1日に制度が始まりまして、今後の動向も見据えてですね、何か必要がある場合には何らかの改善策等を採ることもあり得るかとは思っているところではあります。

 簡単ではございますけども、私の最後の言葉といたします。どうもありがとうございました。

 

司会

 野口総領事、どうもありがとうございました。続きまして、山中公使よりコメントをいただきたいと思います。山中公使よろしくお願いいたします。

 

コメント

                   

                                        山中修 在ブラジル日本国大使館公使

 在ブラジル大使館経済班公使の山中でございます。高いところから失礼させていただきます。本日はこのシンポジウムにお招きいただきまして、ありがとうございました。私、昨年8月にブラジルに着任して、その直後に実はこのシンポジウムに一度ご招待をいただいていた経緯があるんですけども、出席できなかった経緯がありまして、1年経ってようやくこのシンポジウムに参加させていただきまして、非常に、個人的にはちょっと感慨深いものがあります。私の前に野口総領事から重要な点を結構網羅していただきましたので、私からはちょっと簡単なコメント等させていただきたいと思います。

 まず、ブラジリアからサンパウロに来て毎回感じることでございますけども、やはり経済活動のダイナミズムというのを実感できるというのが非常に大きな違いだと感じています。ブラジリアからブラジル経済を見ておりますと、どうしても統計の数字とか、連邦政府の政策を通じた経済活動という形で見ることになりまして、実際にこう、日々経済活動に携わられている皆様の、日頃の研究・検討の成果というのをこういう形でうかがえたのは非常に参考になりました。

 もちろん、商工会議所の方々から普段お話を聞く機会多いんですけども、会員の皆様方の共通の関心事項になってしまうということが多くて、個別の各分野でのこういった草の根的な活動の実態、関心事項について掘り下げた形で話をうかがう機会は少ないので、今回非常に学ぶところが多かったと思います。

 本日のシンポジウムで出てきたキーワードを非常に単純に言えば、皆さん不透明感に非常にさいなまれているということで、特にこの大統領選挙の話ですけども、実はこの大統領選挙、当然大使館としても集中してフォローしているところですけども、まさにこの半年、全く先が読めません、不透明ですというふうに言い続けていてですね、気がついてみると投票まで50日を切っていると。こういう状況でこの不透明感というのは、本当に、中々ブラジル史上でもないんじゃないかというふうに思うところでございます。さりながら、大使館としても引き続き情報収集、分析に努めていきたいと思っています。

 そうした中で、それの対応策として、ブラジルの不透明感というのは今に始まったことではなくて、これまでもずっとそうだったんだということで、そこはそういうものだと割り切って対応していくというのが一つの知恵かなというふうに思って聞かせていただきました。さりながらですね、そういうふうに、変わらぬ一面として、ブラジル規制当局の対応の時間があまりにもかかるというところ、ここは誰が大統領になっても変わらぬ面はもちろんあるんだとは思いますけども、先ほど福島県産農産品の輸入解禁の話が出ました。振り返ってみると、まあ私もその一端で、ANVISAと色々やり取りをさせていただきましたけども、皆さんの中には結構時間かかったなと思われる方も多いと思います。それでも我々一応、大使はじめ、ANVISAにつむじを曲げてもらわないように、手を変え品を変え、色々工夫してアプローチして、今回ここに辿り着いたという部分も、私から言えばそういう部分もあります。

 ということで、ブラジル、変わらぬ面はあるんですけども、今後、皆さん日々鋭意工夫されて、知恵を絞られている中で、その足元にも及びませんけども、規制当局に対して色んな角度から、引き続き無い知恵を絞って、いろいろ皆さんのお役に立てるような手助けを大使館としてもしていきたいなという風に考えています。

 また、多くの方が触れられた日・メルコスールEPAの話についても一言申し上げさせていただきたいと思います。まずは、東京にはるばる赴かれて、日伯経済合同委員会の場で、日・メルコスールタスクフォースが主導してこられたメルコスール進出企業の方々の意識調査結果を、東京の記録的な酷暑に劣らぬ熱弁で語られた松永会頭に敬意を表させていただきたいと思います。

 ご承知の通り、日本政府の方針は、まだ検討中ということでありますが、経団連、CNIの共同報告である日本メルコスール経済連携協定に向けたロードマップが日本政府に正式に提言として提出されると承知しております。これによって検討がより具体的に進むことを期待しております。我々大使館といたしましても、そういった検討に資するよう、メルコスールとEU、そして韓国、カナダ等とのFTA交渉について、皆様のご関心も念頭に置いて引き続きフォローしていきたいと思っています。また、この皆様の熱意をしっかりと東京に伝えていきたいと考えております。

 以上、簡単ではございますが、私のコメントとさせていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

 

司会

 山中公使、どうもありがとうございました。プログラムではこの後、在ブラジル日本大使館に着任されました真鍋公使よりですね、着任のご挨拶ということでお願いできればと思います。よろしくお願いします。

 

着任のご挨拶

                  

                                    真鍋尚志 在ブラジル日本国大使館公使

 先ほどご紹介いただきました、在ブラジル日本国大使館に経済担当公使として参りました真鍋と申します。よろしくお願いいたします。そしてまた、今日はこのシンポジウムにご招待いただきまして、ありがとうございました。

 7月31日に着任して、まだ1カ月も経っていないということで、ちょっと私がこの場でブラジル経済について何か申し上げるのはまだ時期尚早だと思いますので、今回はご挨拶ということで簡単に自己紹介させていただきたいと思います。

 私、外務省に研修語学というのがありまして、私、野口総領事と同じくですね、スペイン語研修ということです。それで今までは、古い順に言うとメキシコ、スペイン、ペルーで勤務して参りました。そして今回は、初めてのポルトガル語圏のブラジル、しかも中南米随一の大国であり、BRICSの一角でもあるブラジルでの勤務ということで、非常に楽しみにして参ったところでございます。

 私が外務省の本省の東京にいる時にはですね、主に経済局、それから中南米局で勤務をして参りました。経済局ではですね、特に一番最後経済局で経験したポストで、EPA、今回も日メルコスールEPAの話が大分出ておりましたけれども、EPA交渉を担当しておりました。具体的には、RCEP、日中韓FTA、それから日オーストラリアEPAを担当しておりました。RCEPと日中韓FTAはまだ交渉が立ち上がって間もない頃の交渉会合を何度か経験させていただきましたし、それから日オーストラリアEPAについては逆に、交渉の最終盤ですね、交渉をまとめて署名して、国会で承認されるというところまで担当をさせていただきました。日メルコスールEPAについては、まだ検討中ということでございますけれども、この日メルコスールEPAの可能性ですとか、必要性につきまして、また皆様とも色々と意見交換させていただければというふうに思っております。

 私としてはですね、着任してこれからですね、日本とブラジルの経済関係強化のために精一杯取り組んで参りたいと思いますし、また、先ほどTeam Japanという話もございましたけれども、まさにTeam Japanとしてですね、皆様からもご意見、ご助言、あるいは叱咤激励、陳情などいただきながらですね、ぜひ一緒に取り組んで参りたいと思いますので、これからよろしくお願いします。今日はどうもありがとうございました。

 

司会

 真鍋公使、どうもありがとうございました。以上で本日の業種別部会長シンポジウムを終了するということになりますけれども、終了するにあたって、閉会の辞をですね、木下総務委員長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

閉会の辞

                      

                                                         木下誠 総務委員長

 はい。まずは、5時間超にわたるですね、長いシンポジウムにご参加いただいて、活発にご議論いただきましてありがとうございました。ご講演いただいた川辺副学長、ご講評いただきました野口総領事、山中公使、たいへんありがとうございました。またご挨拶いただきました真鍋公使にも御礼を申し上げます。

 本日は、大統領選を直前に控えて~変化の時期への準備と戦略は、というテーマで各部会から発表いただきましたけれども、こうした不透明な時期ではありますが、ブラジルのポテンシャルの高さというのはですね、ブラジルに働く我々には非常に実感できるものではないかというふうに思っております。ぜひ、カマラの皆様で結束してですね、さらにブラジルの魅力をブラジルの国外にもですね、我々の本社の人間にもアピールしていきたいというふうに思いますので、ご協力をお願いできればと思います。

 いくつかの部会から頂戴しましたご要望、アイデアに関しましては、松永会頭の下、政策対話委員会を通じて、引き続き検討・対応させていただければと思います。本日はたいへんありがとうございました。

 なお、この後ですね、懇親会をご用意させていただいております。会場はちょっと少し分かりにくいらしいんですが、この扉を出て左に曲がって頂いて、ガラスの壁を突き当たってさらにもう1回左ということらしいので、ちょっと非常に難しいんですけども、皆様ぜひ探り当ててですね、ぜひふるってご参加いただきますようお願い申し上げます。

 本当に本日はどうもありがとうございました。

 

 

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