金融部会
皆様こんにちは。金融部会部会長の、みずほ銀行の深井です。本日は、金融部会より2015年上期の回顧と2015年下期の展望というテーマで、マクロ経済、銀行業界、保険業界について発表させていただきます。
先程相原委員長からですね、「必ず復活ブラジル経済!~日系企業はどう立ち向かうか~」ということで、前向きな発表ということを期待されているのかとは思っておりますが、残念ながらですね、まあ皆さんご存知の通りに足元、特に上期の各種マクロ指標については良い数字はほとんど出ていないという状況です。ただ、将来に向けて足元を見つめるということからも、一旦上期について回顧させていただいて、その後今年末にかけての金融部会としての見方、予測等を簡単に触れさせていただきたいと思います。それではまず上期の回顧ということで、最初のスライドをご覧ください
2015年上期を振り返ってみますと、昨年10月の大統領選挙で薄氷の勝利を収めたルセフ大統領の第2次政権が1月にスタートしました。しかしながら、早くも3月には支持率が急落、議会内の求心力も大幅に低下しております。最近ではですね、弾劾や辞任の可能性も否定できないという状況になってきています。またレビ財務大臣をはじめとした新経済スタッフもですね、財政再建策を積極的に進めておりますが、景気低迷や議会の反対等により足元十分な成果は上げられていないと。この結果、財務目標の下方修正を余儀なくされております。
まず経済全般について、インフレ、高金利が進む中、上期はマイナス成長となる見込みで、この流れは下期も継続する見込みです。
GDPについては、個人消費の落ち込み、工業生産の低迷等からマイナス成長、今マイナス0.6と言われています。それからインフレについては、今年に入って公共料金の引き上げ、食料品・輸入品等の値上げ、それから財政政策に伴う税制恩恵や補助金廃止等により急上昇しております。このインフレを抑制すべく中銀は政策目標金利、いわゆるSELICですけども、上期だけで4回、合計で2%引き上げを行なっております。この結果、6月末時点では13.75%。これ下期に入りますけども、7月にはさらに0.5%の追加利上げを余儀なくされております。
為替につきましては、ファンダメンタルの弱さがありますし、レアル安で推移しております。3月には2000年代初頭の通貨危機以来12年ぶりの安値を記録。その後若干落ち着きは取り戻しておりますけども、7月また、中国株式の急落、S&Pの格付け見通し等でレアル安が進行と。本日もマーケット開けたところでまた3.5を切ると、また今3.4で戻していると思いますけども、3.5を超える水準にまで達しているという状況です。
財政はやはり経済の減速による税収減、財政再建策の成果が上がらずということで、プライマリー収支黒字目標を当初のGDP比1.1%から0.15%へ下方修正を行なっています。
失業率は、昨年は歴史的な低水準で推移していたのですが、今年に入り景気減速に伴い急速に上昇、今8%、9%になっております。
経常収支も同様にですね、過去最悪の赤字を記録した2014年から大きな改善は見られないという状況です。
これはですね、過去3年、2012年からデータとしてまとめております。内容につきましては今お話した通りなんですけど、データの一部補足ですけども、ちょっと小さいんですが2015/12予測値というのは、年末の値をですね、中銀Forecast、経営機関のエコノミストが発表しているデータをまとめたものですけども、それを入れております。内容については今お話しした通り、GDP成長率については年末にかけてやはりマイナスという予測をForecastの方は出しております。それから経常収支につきましては、これは6月時点ですけども、すでに660億ドルのマイナスという状況になっております。他につきましてはこの後個別にご説明をさせていただきます。
それでは個別にご説明させていただきます。まずGDP成長率と工業生産の伸びです。棒グラフが四半期ごとのGDPの前年同期比の伸びです。2013年の後半から成長率の低下傾向が継続しており、2014年はゼロ成長、2015年ではついにマイナス成長となっております。
折れ線グラフが工業生産の伸び率で、右軸で読みますが、これも2013年後半から前年比伸びが急低下。2015年はマイナス成長になっております。企業および消費者のマインドの悪化に歯止めがかからず、生産販売の落ち込みは業種を問わずほぼ全ての部門に拡大しております。
続きまして小売の売上高です。これはいわゆる個人消費を表しているものですけど、こちらの推移を見ていただきますと、ここ数年ずっと伸びは鈍化しております。昨年からさらに急降下しているのが分かります。原因としては、やはり食料等の物価上昇による実質購買力の低下、それから景気減退による雇用・所得への影響。それから高インフレ、高金利における金融機関、小売販売等によるクレジット供与、オートローンとか銀行の各種ローンですね、これが引き締められている、ということから消費全体が減退させられていると考えられております。
続きまして、インフレです。代表的なインフレ指数として拡大消費者物価指数、いわゆるIPCA、こちらは赤い太字になります。従来中銀のターゲットというのは、上限が6.5%ということになりまして、昨年はほぼ上限に張り付いておりました。ただし今年に入ってこの上限を突破して、上期では8.89%、足下9.56%となっております。
従来ですと、この紫の線のサービスセクターがですね、インフレをある意味牽引していたところがありますが、今年に入りまして、この青い折れ線グラフ、こちらの方がガソリンとか電気代ですね、こちらの政府統制価格、いわゆるRegulated Price、これが年明けから急騰していると。これが大きな要因となってIPCAは6月末で8.89、今足下9%というような状況になっています。
続きまして金利、為替の推移です。こちらの赤線が金利になります。いわゆる政策金利、SELICというところですけども、先ほど申し上げましたように、2015年に入ってインフレの高騰を受け、政府としては4回、合計で2%の利上げを行なっております。昨年末が11.75%、これが6月時点で2%上げて13.75%になりました。
下期に入って、7月29日ですけども、通貨政策審議会いわゆるCOPOMでもってさらに0.5%上げまして、足元いま14.25%ということで、このデータが2008年から取ってあるんですけども、その中でも一番高い状態ということになっております。7月29日のCOPOMの会議の後、一応これ以上の年内の利上げはないのではないかというようなことが示唆されており、マーケットでも年内はおそらく14.25%で続くのではないかというふうに足元言われております。
それから、為替の方です。こちらのブルーのラインですけども、こちらも年初からレアル安がずっと続いております。背景には、米国の利上げ観測、資源価格の下落による新興国通貨の売り、それからブラジルの財政赤字・経常赤字、こちらの状態が良くないということで、マーケットからかなりレアル安の動きに圧力がかかったということがあります。
で、一旦3.3から3.4ぐらいになって、その後ちょっと落ち着いたところはあったんですけど、その後ですね、やはり政治的不安定要素が拡大していると。それから中国株式が急落、S&Pが格付けを見直しといった悪材料が出て、足元さらにまたレアル安が進んでいると。ここに出ているのは8月の17日の終値ですけども、3.47と。これは今日時点で一旦3.5を切っているという状況です。
次は財政です。プライマリー収支。こちらもですね、新聞等でよく報道されておりますけども、政府が目標を下げております。昨年、大統領選挙前、減税を行なったり公共事業の実施等により財政がそもそも悪化している中、第2次ジルマ政権になり、各種財政再建策を打ち出しております。ただし残念ながら経済そのものが減速しているということで、税収が大幅に減っていると。それから一方で財政再建策がなかなか、議会の反対にも遭い、実施に移らないということで、これは下期に入ってですけども、7月22日に2015年のプライマリー収支の黒字目標、こちらをGDP比1.1%から0.5%へと大幅に下げております。ちなみに2016年、2017年の目標につきましても、当初2%を設定しておりましたが、それぞれ0.7%、1.3%へと引き下げております。
こちらも、財政とも関係しますが、政府債務です。こちらもご覧いただくと分かる通り、この赤い太線が政府の総債務ですね、こちらになっております。昨年以降まだまだ増加している状況で、こちらの方もプライマリー収支目標だけでなく、対GDP比の政府債務目標というのがありますが、こちらの方もですね、こちらは比率ですが、上向きに修正しております。元々は対GDP比64.1%という目標を設定していたのですが、現在では64.7%。来年以降も上方修正しております。
この青とピンクの棒グラフのこの面積のところですけども、こちらの方はですね、BNDESを中心とする公的金融機関の貸出残高ということになっております。これも従来から言われています通り、BNDESが政府財政を補填してきたというところがありまして、まだ足元では増加傾向に歯止めがかかっていないと。これは3月までですので、直近のデータはまだ分からないんですけども、まだまだ引き続き高水準にあるということが見て取れます。
こちらはソブリン格付です。これも最近マスコミ等でもう毎日のように報道されているので、皆さん馴染みがあるかと思いますけども、これは1986年からのデータを取っております。大手格付け機関、S&P、フィッチ、ムーディーズですね。この3つの格付け機関の推移を取っております。
S&Pは2014年に投資適格の一番下であるBBBマイナスに早々と格下げをしております。昨年末に下げております。ただその時は見通し、いわゆるOutlookというのは安定的ということにしておりました。一方でムーディーズは、昨年はまだ投資適格の一番下のもう一つ上のBBB、ムーディーズの場合はBaa2ですね、こちらの方を維持して、加えて見通しは安定的ということで2014年を終えております。
これが今年に入りまして、これも上期というよりは最近の話ですけども、7月29日にS&Pが見通しを安定的からネガティブというふうに変えております。こうなりますと、もうこれ以上下がないという、S&Pについて言うともうこの下がないと。この下はもう投資適格から外れてしまうという状況になっております。
ムーディーズにつきましては、7月から評価を行ないまして、先日、8月11日に格付けの見直しを行ないまして、BBB、Baa2から一つ下げてBaa3、BBBマイナスに下げております。当初マーケットではBBBマイナスのさらにネガティブというのが想定されていたんですけども、結果としてはムーディーズはBBBマイナス、Baa3の安定的、Stableといったところで留まりました。これはマーケットの予想よりは良かったという状況になっております。ただS&Pの方がですね、すでに一番下のところに来ておりますので、今後、半年から9ヶ月ですね、改めて見直しが行われた場合には、S&Pについて言うと投資適格を外れるという可能性は否定できません。
格付けによる影響いろいろとあると思うんですけど、一つは海外の機関投資家がブラジルに投資を行う際、やはり格付け、特に投資適格、格付け機関2つ以上の投資適格というのを条件としているケースが多いというふうに聞いておりますので、S&Pプラスもう一つが仮に落ちた場合には大きな影響が出て来るのかなということで考えております。
続きましてこちらもマーケットの情報です。株価と、それからCDSというデータを取っております。株価の方は皆さんご存知のようにBOVESPAの指数を取っております。昨年末は50000ポイントで終わりまして、6月末にかけては株価は上昇して53000ポイントということで6.1%上昇しています。
この株価上昇の上期の要因としては、好業績銘柄による牽引と。それからあと、ペトロブラスが決算発表できずにいたんですけども、今年1月に昨年7-9の決算を発表できたということで、まあ上場廃止の危機を脱したということから資本市場に少しお金が戻ったということが言われております。
ただし下期に入ると、これは7月ですけども、再び下落傾向ということで、8月17日現在では今47000ポイントと昨年末の値を下回っているという状況です。このあと年後半にかけては、まあ色んな要因はあると思いますけども、一つは景気悪化から銀行の不良債権が増加、銀行株の下落が指数を押し下げるというようなことも言われております。
それから、こちらのCDSです。こちらはちょっと馴染みがない指標かもしれませんけども、Credit Default Swapの略です。国債や社債などのポリティカルリスクをですね、ヘッジするデリバティブ契約の一つです。ブラジルのCDSといえば、いわばブラジルのソブリンリスクに対する一つのリスク料ということでお考えいただけたらと思います。
これは3年物のCDSになります。グラフを見ていただくと分かります通り、この2008年ですね、これはちょうどリーマンショックの時、これはブラジルに限らずエマージング・マーケット全体が大きく揺れた、先進国もそうですけども、揺れた時です。この時点ではピークは350ベーシスポイント、これを上回っております。その後は比較的安定して、まあ大体80から150ベーシスポイントぐらいで過去推移しておりました。
それが今年に入りまして200ベーシスを上回る水準ということです。足元では、今週ですかね、確認したところ255ベーシスポイントということで、リーマンの時ほどではないですけどもかなり値が上がってきていると。これの意図するところとしては、やはり海外の投資家を中心にブラジルのカントリーリスクについてヘッジする動きが活発化してきているということかと思います。
続きまして失業率です。こちらの方も先程ご説明した通り、2008年からデータを取っていますけども、昨年、年間で4.8%ということで、ブラジルの歴史上最も低い水準まで下がった状態が続いています。ただ今年に入ってですね、やはり企業の雇用調整が本格化してきたということもあり、急速に上昇してきております。
こちらは外貨準備高です。2012年以降ですね、ほぼ同じ水準、まあ3500億ドル、3600億ドルを超えた状態と。足元、まだデータがアップデートされてないんですけども、3700億ドル程度ということで、外貨準備については今のところまだ大規模な減少というのは起きていません。今後も、外準が大きく毀損するということは今のところは想定していないという状況かと思います。
以上が上期のおさらいということになります。続きまして下期の展望ということで、次に2枚スライドを用意させていただいております。前回2月に発表させていただいたのと同じ、金融部会所属の各銀行による下期の予測を、メインシナリオとリスクシナリオという形で分けております。各行が独自に想定するシナリオに基づく予測を集計しておりますので、金融部会としての統一見解と言うよりは各行見通しの最大公約数ということで考えていただけたらと思います。
このデータの集計時点は一応7月末ということですので、また8月に入ってマーケットが大きく動いておりますので、おそらく各行さんまた見通しを変えている可能性はありますが、その点はご容赦いただきたいと思います。それからこちらのカッコ内の数字ですね、これは2月のシンポジウムで同じ形で発表させていただいておりますが、その時に予測した年末の数値ということです。それぞれメインシナリオとリスクシナリオということで用意しております。
メインシナリオを見ていただいても分かります通り、2月に予測したデータから、わずか6ヶ月間ではありますけども、経済状況が大きく下振れしていずれの数値も悪化しているというのがご覧いただけるかと思います。
それでは個別に、まずGDP、景気についてですけども、景況感は家計・企業ともさらに悪化。第3四半期以降も景気減速は続くのではないかということで、GDPの成長率の予測値はマイナス1.7%からマイナス2.2%。2月の時点では今年はマイナス0.4からマイナス0.5ぐらいというのを予想していたんですけども、足元では大きくそれを下回っております。
インフレにつきましても、これも上期と同じですけども、食品・輸入品を中心とした物価上昇圧力が引き続き強く、年末にかけては9%台になるということを各銀行とも予測しております。
それから為替については、足元、財政目標の引き下げ、それからS&Pの格下げ、見通しの変更ですね、それから中国の人民元の基準値の切り下げ、それから逆に米国金利の引き上げ等ですね、色々な内外の要因が出ておりまして、引き続きボラティリティの高い状況が続くというふうに予測しています。7月末時点の各銀行の予測としては、年末にかけては3.2から3.5というレンジで決着するのではないかということで予測をしております。
それから金利につきましては、これも先程来ご説明していますが、現在SELIC、政策目標金利が14.25%になっておりますが、これについては年末まではこれが維持されるのではないかというのが、ここは各行とも同じ意見を出しております。
次がリスクシナリオになります。GDP成長率はマイナス2%からマイナス3%。インフレ率は8%から10.3%。為替は3.7から4.2。年末政策目標金利、SELICは12から15と、かなり幅があります。
リスクシナリオで皆さんがコメントしたのはこの内容なんですけども、色々と想定されるシナリオはあると思いますけども、一つはジルマ大統領が弾劾あるいは辞任といった形で政権を離れると。それに加えてレビ財務大臣も離任してしまうということで、ブラジルに対する信任が大幅にさらに低下すると。加えて、S&Pになるのかもしれませんが、格付けをBBBマイナスからBBと、投資適格を失うというような、まあかなり悲観的なシナリオではありますけども、そういったことを一応リスクシナリオとしては書いております。
この中においてはですね、レアルは、メインシナリオでは足元の3.5からどちらかと言うとレアル高という予測をしていたんですけども、リスクシナリオになりますと3.7からさらに4を切るような水準を予測している銀行もあります。状況としてはやはり政治的な混乱とか、高金利、高インフレがさらに継続、それから資本流失も起こるというような、まあいわゆる負のスパイラルが発生するというのを最悪のシナリオということで考えております。最悪じゃないですね、リスクシナリオとして考えております。
以上が各銀行からのアンケートを基にした下期の予測ということですけども、まあ今回のシンポジウム、タイトルは少し前向きに「必ず復活!ブラジル経済」ということですので、先日金融部会で会合を開いた時に前向きな話は何かないかというのを少し議論させていただきました。それを少しまとめたのがこちらになります。
まず、最初にですね、ここちょっと紙には全部書いていないんですけども、2016年のシナリオというのも簡単にヒアリングをさせていただいています。2016年については、メインシナリオですけども、GDPはマイナス0.7からゼロ。残念ながらプラスにはならないという状況ですけども、今年がマイナス2%程度ということが見込まれていますので、それよりは若干改善するかなということです。それから雇用環境については、引き続き悪化がやはり続くのではないかと。失業率は高水準で推移と。
ただしインフレについては、今年9%、場合によっては10%と言われておりますので、そこからすると来年は5%台前半、5、6%に収斂していくのではないかというような見方をしております。
為替については、先程のリスクシナリオでは3.7から4という話をさせていただいていますけども、これもまあ、財政再建の進捗等によっては今年のベースシナリオの3.5から3.5程度で推移するということも、そういう見方も出ております。
それから金利については、これは今年いま14.25ということですけども、インフレがまあ5%台に低下して来るということで金利の引き下げ余地も出て来るということから、来年については11%から13%台ということで、今年よりは引き下げができるのではないかという見方をしているのが各行の見方です。
それからここにちょっと書かせていただいていますけど、先程のリスクシナリオではルセフ大統領の罷免あるいは辞任ということプラス、レビ財務大臣の辞任というのを書かせていただいたんですけども、こちらでは、大統領は罷免あるいは辞任するものの、レビ財務大臣は残るというような状況において、まあ一時的に政治的な混乱は起こるものの、経営者とか消費者、投資家のマインドが前向きに変わってですね、景気、為替、株価とも底打ち、反転するのではないかというような意見も出ております。
それから、これは金融部会のコメントではないんですけども、先日発表されたVEJA誌なんかでは、まあこちらも同じようにシナリオを3つ書いておりますけども、楽観シナリオとしては、2016年以降ですけども、経済成長はプラスに転じるというようなことを書いております。ただその前提条件としては、財政再建策が政治的合意の下、議会で承認され、円滑に推進されるということが大前提ということは書いてあります。もちろんリスクシナリオも書いておりますので、もしご興味のある方はご覧ください。
それからあと、これはブラジルの強みの一つではないかということで金融部会で話した内容ですけども、安定した金融システムということで、後ほど銀行部門の説明でも触れますけども、ブラジル経済の強みとしては金融システムの安定があるのではないかと。ご存知の通り大手4行、5行でマーケットシェアの70%を占めるという、寡占状態ではあるんですけども、これらの大手銀行の収益力、それから自己資本比率ですね、Capital ratio等は引き続き強く、ここに来て不良債権比率は当然ながら上がってきてはいるものの、引き続き財務内容もしくは収益力等を考えると金融システムそのものに影響を与えるような、銀行の経営不振等というのは予想されていないと。昔日本では、銀行が不良債権問題から非常に大変な状況になって、結果的に経済全体が混乱してしまったという事態もありましたけど、ブラジルにおいては、まあ金融については、少なくとも大手行については非常に強い、財務的にも収益性も強いという状況が続いておりますので、これはブラジルが今後復活する上では重要なファクターになってくるのではないかと考えております。
最後はですね、M&Aや直接投資に期待ということで書かせていただきました。これはですね、為替については先程来お話させていただいている通りレアル安にずっと振れておりますが、海外の投資家にしてみるとですね、今の3.5、さらにこれからまたレアル安傾向になった場合には投資のタイミングとしては非常に魅力的になってくるのではないかと考えております。
先日もオイルメジャーのシェルが50億ドルの投資を発表しておりますし、足元ではペトロブラスの資産売却ということが大きく動いておりまして、外資、日系企業を含めですね、外資の方で戦略的な投資を考えている方、この方たちというのは今後投資機会はさらに増えて来るのではないかということで考えております。これはまあ当然直接投資ということになりますので、ブラジルの経済にとってはですね、まあプラス材料ということで考えております。
続きまして銀行業界についてお話させていただきます。まず貸出残高ですけども、こちらは2015年上期は全体としては10%ということで、前年2014年とほぼ同じ伸びをしております。ただし、内訳を見てみますと、個人向けの貸出、これは2014年の6月のデータと比べてプラス5%となっています。
それ以外については、2014年6月の同時期のデータと比べてマイナス22%。伸びてはいるんですけども、その前のデータですね、2014年の12月期と2013年の12月期、ここら辺を比べたデータと比べると軒並み貸出金は伸び率が減っていると。これはマイナスということではなくて、伸び率が前年もしくは過去のデータと比べて上がっているか下がっているかということです。貸出自体は当然伸びてはいるんですけども、伸び率が個人部門を除いては軒並み下がっているという状況になっております。
あと銀行のところは少し飛ばさせていただきまして、こちらは延滞率ですね。これも先程お話し申し上げましたけども、各部門、法人向け、個人向けとも延滞率は上がってきております。これはまだ上昇傾向にはあるかなとは思っておりますが、銀行全体としては大手行を中心に非常に財務力は強いということで、懸念する材料はないかなと思っております。
最後になります。保険市場です。種目別に見ますと特に企業を対象とした火災・新種保険について成長が鈍化傾向にあります。こちらのスライドですけども、ブラジルの保険監督庁であるSUSEPの統計データによりますと、直近の2015年1月から5月の前年同期比での保険料収入の伸び率は3.6%。二桁成長が続いた2013年度までと比較すると、昨年、今年とも経済成長が低迷する中で保険マーケットも成長が鈍化してきているという状況です。
それから損害率についてですが、こちらもSUSEPの統計データによりますと全体としては悪化。その要因としては、企業を対象とした火災・新種保険、運送保険において損害率が10%を超えて悪化していることにあります。当地の保険業界は保険会社数が多いことも相まって競争が激しく、保険事業の低い収益性を運用収益によりカバーしているのが実態です。
それから、これが最後ですけども、今後の保険市場の将来性についてということで、ブラジル経済の不透明さ、自動車新車販売の落ち込み等、個人消費の停滞により保険業界を巡る環境の先行きは厳しい状況が続いております。しかし、大手再保険会社スイス・リーの調査によりますと、国民1人当たりの保険料水準は日米の10分の1程度ということで、中長期的には貧困層の富裕化により今後も成長が見込まれているということが保険業界のコメントでございます。
すいません、時間オーバーしまして。以上駆け足でしたけれども金融部会の発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。
司会
どうもありがとうございました。ちょっと時間が押していますので、質問ある方、一つぐらいあれば。なければ、後でまとめてしていただいて結構です。では次に行かせてもらいます。2番目は貿易部会の方ですが、富島様にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。