ブラジルの労働法では、労働者保護の原則並びに権利非譲歩の原則、雇用関係継続の原則、現実重視という4原則があり、労働訴訟で労働法解釈に疑義が生じた場合、司法では労働者に有利な解釈が優先するのが通例となっているために、年間数百万件に達する労働訴訟が発生している。
サンパウロ州繊維工業組合(sinditextil)では、42繊維会社が加盟して4万220人の労働者が従事している一方で、2016年の労働訴訟件数は、前年比5.2%増加の5468件、2014年の28%増加を記録している。
労働訴訟件数の63%は元従業員、28%は元契約社員や労災による休暇中の従業員であり、sinditextilに加盟している42繊維会社の67%は、年間の労働訴訟費用が50万レアル、14%は50万レアル~250万レアル、13%は250万レアル~750万レアル、7.0%は1,000万レアルの労働訴訟コストの負担を余儀なくされている。
労働訴訟コストの25%は賠償金支払い、25%は弁護士費用、21%は労働訴訟に関する鑑定人費用、23%は労働訴訟に関する経費、また賠償金支払いの62%は5万レアル以下となっている。
労働訴訟で最も多いのは残業代支払い、労働環境不備による賠償金支払い、モラルハラスメント、労災補償、休憩時間の取消、セックスハラスメント、職場の安全性などが挙げられる。
サンパウロ州繊維工業組合のArthur Pacheco会長は、改正労働法では食事時間による休憩時間が明確化、労働訴訟の敗訴による弁護士費用の支払いなど企業経営者にとって無明瞭な争点が減少すると予想している。
繊維部門や縫製部門の雇用総数は、150万人に達して製造業部門の18.3%を占めており、サンパウロ州の繊維・縫製部門の雇用は、ブラジル全体の1/3を占めている。(2017年10月17日付けヴァロール紙)