小売業界では、電気電子製品の販売が8%も落ち込む中で、スマートフォンだけは堅調で34%の伸びを記録。
不況を受けて、冷蔵庫や洗濯機、テレビ、自動車、さらには家具など高額な消費財で軒並み販売が落ち込む中、スマートフォンだけが堅調に販売を伸ばしている。調査会社GFKによると、2015年1―3月期に小売業界の売上が、電気電子製品全体では前年同期比8%減と落ち込んだのに対して、スマートフォンだけは同34%増と堅調に推移した。2015年第1四半期に電気電子製品を扱う小売店の売上は、前年同期と比較して20億レアル縮小した格好だ。
GFKのオリバー・ローマーシャイト電気通信部門担当部長は、「現時点で売れているのはスマートフォンだけだが、それは、この製品がデジタル時代の十徳ナイフだからだ」と言う。可処分所得が減少していることで消費者は、多機能でポケットサイズのコンピュータとしても機能することから、スマートフォンを買い物リストの上位に引き上げている。
モトローラ・モビリティーのマルコ・アルーダ販売担当取締役によると、同社は、全力を挙げてスマートフォン需要のキャッチアップに努めているという。2014年末以降、同社は、サンパウロ州ジャグァリウーナ市の工場で3交代の生産体制を展開している。白物家電や家電製品の工場が人員を削減する中、同社は、逆に研究開発(R&D)部門で200人の増員を進めている。
スマートフォンの堅調な販売についてアルーダ取締役は、この商品が「消費者の垂涎の的」という理由だけではなく、様々な要因があると指摘する。その要因1つは、国内の携帯電話網が新しい4G(第4世代携帯電話通信規格)に移行していること、さらに、多くのキャリアがスマートフォンの販売で魅力的なプランを提示していることだ。さらに、国内でスマートフォンへの関心が高まっている別の要因は、従来型の携帯電話の置き換え需要である。GFKによると、現在、販売される携帯電話10台のうち9台がスマートフォンである。驚くべきデータのひとつは、不況にもかかわらず、スマートフォンで人気の機種は、低価格機種ではないことだ。例えばモトローラの場合、最も売れているのは699レアル前後の価格帯にあるMoto Gで、569レアル前後のMoto Eではない。
スマートフォンの製造原価のほぼ半分を輸入部品が占めるため、為替相場がドル高レアル安に傾いていることは、製品の価格も圧迫し、販売に冷や水を浴びせる可能性もある。だが、今のところ、そうした懸念は杞憂のようだ。
これ以外にもGFKの調査が示した驚くべき結果は、地域別に見たスマートフォンの販売比率で、国内でも比較的低所得の地域、つまりブラジル北東部と北部、中西部の比率が、前年と比較して拡大していることだ。景気の後退サンパウロ州の地方都市で電気電子製品の小売店を140店舗展開するサイベラルのウビラジャラ・パスクオット取締役によると、スマートフォンが業界の売上を支えている、と認める。だが、「その販売は、既に過去の勢いを失った」と言う。
4月分を含めたGFKの速報データによると、スマートホンの販売の伸びは、依然として2ケタを維持しているがその勢いを失っている。1月から4月にかけて、販売の伸びは29.5%であり、第1四半期の34%を大きく下回る。また携帯電話全体でみると販売の伸びは前年同期比22.6%で、スマートフォンが携帯電話全体の販売も支えている。というのも、1―4月期の従来型携帯電話の販売は、前年同期比60%減と大きく落ち込んでいたためだ。
4月にスマートフォン販売の伸びに陰りが見られたことで、調査会社ITデータのイヴァイル・ロドリゲス取締役は、2015年第2四半期の販売見通しを下方修正した。同氏によると、これまで1,360万台としていた販売台数の見通しを、第1四半期並みに引き下げた。この結果、第2四半期の販売台数は前年同期と比較して、2%から3%の伸びにとどまる見込みだ。(2015年6月15日付けエスタード紙)