ブラステンピとコンスルを展開するワールプールのジョアン・カルロス・ブレガ・ラテンアメリカ担当社長は、小売業界が現時点で営業を再開したとしても消費者の安全は担保されておらず、財界や政府が期待するような販売の伸びにはつながらないという考えを示した。
「復帰を口にしたところで無駄だ。需要なき供給だけが発生する。なぜなら、経済を動かす重要な要素は信頼感であるが、それが揺らいでいる。人々が病を患った場合に治療を受けるための病院がないため、病気になることが許されないというのが、消費者が発しているメッセージだ。考慮すべきは消費者の信頼だ」という。
ラテンアメリカで2万4,000人の従業員を束ねる同社長によると、信頼を取り戻すために必要なことは3方面での活動だという。すなわち、病気になった場合に治療が受けられると示すこと、経済対策と各種改革の可決、経済の改善である。
「病気になっても治療が受けられるように保健が市民に行き届けば、商業活動を維持できる。そして回復のペースは、国会が経済のボトルネックを解消すれば加速する。反対なら、消費者はブレーキをより強くかける。今は超党派で取り組むべきであって、些細なことで気論を戦わせていてはいけない」という。
保健分野の取り組みについてブレガ社長は、サンパウロ州とサンタ・カタリーナ州のように一時的に病床を増やすといった方向で対策が既に始まっていると受け止める。「この取り組みは、市民の目に良く見えるようにすべきだが、様々な問題が同時に発生している」という。
一方、経済省についてブレガ社長は、必要とされる対策を講じていくものと確信しているとしつつも、与信供与の拡大と税負担の軽減が必要という考えを示した。
「すべての業種にストレスがかかっている。政府は、そこに寄り添い、資金の供給と期日の先送りで市場に潤いを与えると発言すべきだ。35%という税負担には、誰もが、緩和が必要だと認識している」と同社長は指摘した。またジャイール・ボルソナロ大統領が保健省のガイドラインに反して検疫隔離措置の終了を主張していることについては、実際問題として検疫隔離措置は正しく、採用されるべきだったという見方を示した。
また同社長は、商業部門の営業を継続しつつも学校の休校措置が採用された最初の段階で、製品の販売はむしろ伸びたという。ところがショッピングセンターと路面店が営業を停止して以降、需要は落ち込んだ。同社長は、白物家電に対する需要は現時点までに60%落ち込んだと推算、今後さらに落ち込んでいくと受け止めている。
「オンライン販売は、この落ち込みを補填するものではない。というのも、消費者の懸念が食品や消毒用アルコールジェル、マスクといったものにあるからだ。消費者の信頼を取り戻す必要がある」という。
需要の落ち込みに加えて製造ラインにおける従業員の健康に対する安全確保のための間隔保持措置の施行を受け、同社は、サンパウロ州リオ・クラーロ市(※原文はサン・カルロス市)とサンタ・カタリーナ州ジョインヴィレ市の工場で集団休暇を実施している。30%から減産を実施したが、その規模は、州政府が施行し措置を受け50%に拡大している。こうした状況の中、ワールプールは、4月の課税の取り消しを求めている。
さらに同社長は、州と市に人の移動を制限する対策を講じる裁量を与えた連邦最高裁判所(STF)のマルコ・アウレリオ・メーロ判事の判断を批判した。「この問題に5,500人の船頭がいて、事業を継続しようという人の足を引っ張っている。最小限の人の流れは必要だ」と主張した。
またワールプールは、リオ・クラーロ市とジョインヴィレ市で臨時救護施設で使用する設備向けに製品を寄付した外、病院の支援も行っているという。また同社の2か所の工場では今後、保健分野の専門家が使用するアクリル製の顔面防護マスクを週1,000枚製造する。「社会は団結しつつあり、状況の把握も進んでいる。だが、重要なことはショックを吸収する機構の導入だ」という。(2020年3月31日付けバロール紙)