昨日ブラジルからの撤退を発表した米国資本フォード社は、6年前からブラジルでの大衆車生産継続の意欲減退の兆候を示していたが、2年前にブラジルの自動車産業の城下町であるサンパウロ市近郊の50年間に亘って生産、トラック並びにコンパクトカーFIESTA車を生産しているサン・ベルナルド・ド・カンポ工場(SBC)閉鎖を発表していた。
しかし昨日11日に、フォード社はバイア州カマサリ工場、セアラー州オリゾンテ工場並びにサンパウロ州タウバテ工場での自動車生産停止で、ブラジルでの自動車生産の完全撤退を発表した。
フォード社の2020年のブラジル国内のバスやトラックの除く乗用車のマーケットシェアは、僅か7.14%とトヨタ社やルノー社よりも大きいが、過去5年間はブラジル国内での投資を等閑にしたために、長年のコンペチター3社のGM社、ワーゲン社並びにフィアット・クライスラー社(FCA)に大きく後塵を拝している。
フォード社のブラジルでの自動車部門は、今後隣国アルゼンチンで生産しているピックアップトラックなど、大型車の輸入販売が中心となる見通しで、サンパウロ市の南米本社や国内の製品開発センターは維持する。
南米フォード社のLyle Watters社長は、ブラジルでの自動車生産の中止はするが、アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領に5億8,000万ドルの新規投資で、次世代のピックアップ車Rangerの開発及びGeneral Pacheco自動車工場の新規設備投資を約束している。
自動車産業界のリーダー達は、COVID-19パンデミック初期に連邦政府へのクレジットなどの救済措置を要請したにも拘らず、話合いが一向に進んでいないと指摘しており、現政権に対する不満が鬱積している。
約6か月前に、本社から工業製品税IPIクレジットが累積して使用できない支店には投資できないと警告されたとブラジルAudi社の経営陣は説明、昨年12月にパラナ州のワーゲン社と共同使用で自動車を生産している工場の生産停止を余儀なくされている。
また1か月強前にメルセデス・ベンツ社は、不安定なブラジル国内経済や高騰一途のドル高の為替などの要因で、サンパウロ州イラセマポリス工場での電気自動車生産の継続ができないと生産停止を発表している。
フォード社は、5年前の2016年に日本市場から撤退、またオーストラリアでの自動車生産終了、欧州での工場閉鎖、ロシアの乗用車市場からの撤退、南米での商業トラック事業撤退など世界的な事業の見直しを実施している。