キリンHDは、今年8月2日、ブラジルの飲料大手スキンカリオール・グループの株式50.45%を39.5億レアルで取得することで合意したと発表、しかし、その後スキンカリオール社の少数株主が、キリンHDによるアレアドリ社の株式取得差し止めを求める仮処分申し立てを提起。同社によると、ブラジル・サンパウロ州イトゥー市裁判所が、8月4日に当該仮処分申し立てを部分的に認める決定を下していた。
株式取得差し止めを提起していたのは約49%の少数株主はアドリアーノ氏の兄弟のダニエラ女史、ジョゼ・アウグスト氏並びに従兄弟であるジルベルト・スキンカリオール副社長らの創業一族で、ジルベルト氏は株式売却の際には他の株主に優先交渉権を与え、事前通知する条項があり、キリンによる買収は無効と主張していた。
この同市裁判所の命令に対してキリンHDは、8月15日に上級審であるサンパウロ州裁判所に異議申し立てを行っていたが、10月11日、同裁判所において、満場一致で当該命令を取り消す旨の決定が下されたために、スキンカリオール社の買収に目処が立ったことになる。
ここ15日間の間に49%の株保有するジルベルト・スキンカリオール副社長らの創業一族のJadangilグループは、初めてキリンからのオファーである25億レアルでの株式買い取りを今月7日にはほぼ合意すると予想されていた。
しかし、判決の前日にキリンに対して株式譲渡金額ではなくて、契約内容に不満足なためにオファーを却下すると申し出ていた。判決は一般に公開されて約1時間で終了、Jadangilグループのダニエラ女史、ジョゼ・アウグスト氏並びに従兄弟であるジルベルト・スキンカリオール副社長並びに同グループの担当弁護士、アレアドリ社の株主並びにキリン側株主が出席。しかしアレアドリ社のアドリアーノ氏並びにアレシャンドレ・スキンカリオール氏は欠席した。
裁判担当のエニオ・サンタレーリ・ジュリアーニ判事は「優先交渉権を持っていたJadangilグループはキリンが支払った39億4,800万レアルに相当する積立をしなかったために、交渉権を失った」と説明した。
また判事はキリンとの買収交渉は少数株主であるJadangilグループに事前に申し合わせがなかったことを否定するように「外資がスキンカリオールへの参入で被害を受けることは正当ではない。またこれほどの買収交渉に誰も気づかないとは考えにくい」続けた。
ペレイラ・カルダス判事はスキンカリオールの買収交渉停止は将来の同社に損害を与えるために適切ではなく、「経営者同士の争いは暴力的だ。少数株主はなにも支払わずに経営権を握って企業をつぶすことはできない。彼らが優先交渉権を主張するならお金を積まなければならない。また私はキリンがビール生産の代りに酒をつくるか、企業をつぶすために40億レアルを投資したとは思わない」と説明している。
アレアドリ社側のマット・フィーリョ弁護士事務所のエドアルド・ムニョース弁護士は「戦いは終わっていないが、この判決は非常に重要である」と説明。連邦高等裁判所で判決を覆す可能性は残されている。キリン側のトジーニ・フレイレ弁護士事務所ではムニョース弁護士に同意、キリン側はすでにスキンカリオールの経営に準備が整っている。
Jadangilグループの弁護士達並びに少数株主関係者はあわてて裁判所を後にした。その後でこの判決には「驚いている」とコメント。キリン側では「少数株主側との距離を置いておくつもりはない。彼らと良好化関係を築くことを待つ」と述べたが、少数株主へのオファーについてはコメントを避けている。(2011年10月12日付けエスタード紙)