昨年12月に日本の公正取引委員会に相当する経済防衛行政審議会(Cade)は、ブラジル国内のセメント業界は寡占状態にある同一業種の企業が競争を避けて利益を確保するため、価格・生産量・販路などについて協定を結ぶカルテルを形成していたと指摘していた。
セメント業界大手企業がカルテルを形成したと判断されれば、最高罰金として売上高の20%まで課税されるために、罰金総額は31億レアルに達する可能性があり、カルテルを形成したセメントメーカーは平均24%に相当する資産売却の必要に迫られる可能性がある。
経済防衛行政審議会によるセメント業界のカルテル調査は2007年に開始、カルテル形成をしていた企業として、Holcim do Brasil社並びに Votorantim Cimentos社、 Camargo Correa Cimentos 社、Cimpor Cimentos do Brasil社、 Itabira Agro Industrial社 Companhia de Cimento Itambe社を挙げているが、今年1月22日のCadeで審議が中断されたにも関わらず、5人の審査官のうち3人が罰金刑に賛成すると予想している。
Votorantim Cimentos社に対する罰金は15億6,000万レアルで自社のセメント生産の35%に相当する資産売却を余儀なくされる可能性があり、Holcim do Brasil社に対する罰金は5億800万レアル、Itabira Agro Industrial社には4億1,170万レアル、Cimpor Cimentos do Brasil社には2億9,780万レアル、Camargo Correa Cimentos 社には2億4,170万レアル、Companhia de Cimento Itambe社には8,820万レアルの罰金が科せられる可能性がある。
カルテルを形成した6社がCade審議会の判定に沿って罰金を支払えばブラジルのセメント業界は壊滅的な打撃を受けるために、6社はあらゆる手段を用いて長期に亘る法廷闘争に持ち込むと予想されている。
ブラジル国内には16セメントメーカーが90カ所のセメント工場で年間7,100万トンのセメントを生産、2006年から建築ブームが続いてセメント需要が拡大、また大型インフラ設備向け投資の拡大などが牽引して、セメント業界は増産を続けている。
南東部地域のセメント生産は全体の48.9%に相当する3,360万トン、北東部地域は19.9%の1,375万トン、南部地域は14.6%の1,010万トン、中西部地域は11.3%の770万トン、北部地域は5.3%の370万トンとなっている。
2013年4月のセメントメーカーのセメント生産能力は8,200万トン、リオのオリンピックや経済成長加速プログラム(PAC-2)の大衆住宅プログラム、港湾並びに道路、空港などのインフラ設備向け民営化プログラムが目白押しで、2016年には1億1,700万トンの生産能力に達すると予想されている。
中国は年間20億トンのセメントを生産しているが、中国のセメントメーカーCitic-Hic社は、セメントの原料となる石灰石が豊富に埋蔵されているパラナ州アドリアノポリス市に5億1,800万レアルを投資して、Cia.Vale do Ribeira社と共同で年間100万トンのセメントを生産する工場を建設して、ブラジル進出に足掛かりを築く。(2014年3月12日付けヴァロール紙)