ドイツ資本チッセンクルップは、リオ州東部サンタ・クルースのアトランチコ製鉄(CSA)並びに米国のアラバマ州モービルのスチール・アメリカス製鉄所の売却を検討している。
チッセンクルップ社の昨年の鉄鋼生産工場の純益は、リーマンブラザーズ銀行の破綻をきっかけとした世界金融危機で米国の鉄鋼需要が大幅に落ち込んだ影響で、スチール・アメリカス製鉄所は赤字を計上、その他の鉄鋼生産工場は黒字を計上していた。
ブラジルのCSA製鉄所で生産した鋼板を米国のスチール・アメリカス製鉄所へ送り、ステンレス鋼を生産して米国内の工業部門へ供給していたが、米国内の鉄鋼需要の悪化の影響を受けて、CSA製鉄所の鉄鋼生産の減少が余儀なくされるために、同製鉄所の売却も予想されている。
またチッセンクルップ社が 73.13%、ヴァーレ社が 26.87%の資本参加しているCSA製鉄所の売却の要因として、米国の鉄鋼需要の悪化以外にも、労働コストの上昇並びにインフレの悪影響、レアル高の為替などが収益を圧迫して売却を後押ししている。
ブラジル鉄鋼院(IABr)のマルコポーロ・メロ・ロペス会長は、「2008年の世界金融危機による米国やヨーロッパの鉄鋼需要の回復は2012年が予想されていたが、いまだに需要が落ち込んでいる」と説明している。
SLW Corretora社のチーフストラテジストのペドロ・ガルジ氏は、「ブラジル資本のゲルダウ社並びにCSN社、 Usiminas社は買収に積極的ではないために、26.87%の資本参加しているヴァーレ社が仲介して、中国などの外資系企業への売却が濃厚」と予想している。
チッセンクルップのHeinrich Hiesinger社長は、リオ州とアラバマ州の製鉄所には120億ユーロを投資したにも関わらず、売却金額は投資金額をはるかに下回る70億ユーロと予想している。(2012年5月16日付けエスタード紙)