政策対話委員会の櫻井淳副委員長(ブラジル三菱商事)、労働ワーキンググループ松澤巧グループ長(ブラジル味の素)、東崇徳副グループ長(ブラジルトヨタ)は2016年7月20日、CNI(ブラジル全国工業連盟)のRafael Ernesto Kiechbusch産業政策労働分野スペシャリストを訪問、大使館から小林和昭参事官、事務局からは平田藤義事務局長、天谷浩之アドバイザー、吉田章則調査員が同行した。
天谷アドバイザーから、AGIR活動の概要と進捗、今回の訪問の趣旨を説明、ラファエル氏からCNIにおける労働分野のチーム構成と活動内容が紹介された後、双方が取り組む労働分野における政策提言活動における協力方法について意見交換を行なった。まず、ラファエル氏から、2014年大統領選挙に向けたCNI提言書、テメル暫定政権に変わった直後の2016年6月にまとめた“税収へのインパクト無し”をタイトルに掲げた119の提言のうち労働に関する項目について詳しい説明が行なわれた。労働党政権時には躊躇していた項目を入れるなどして31項目が労働分野の提言であることを説明、ブラジル政府が変革期にある今が打ち込むチャンスであると述べ、カマラとの連携活動に期待を寄せた。
次に松澤グループ長から、昨年3月にまとめた労働WG提言10項目の中から最優先要望項目として選考した本丸提言3項目を説明、ポテンシャルのあるブラジルに日本企業の更なる進出や投資を呼び込むためには同提言で指摘する問題点の改善が必須であるとカマラの考え方を伝えた。さらに、全ての労働者を同一条件のもとに置く現労働法の硬直性を指摘した上で、労働環境が多様化する中で労働法に柔軟性を持たせることが企業の生産性向上に繋がるとして、企業の視点のみならず労働者のニーズも念頭に置きながら本丸提言を取りまとめたことを説明した。
また、東副グループ長は、企業と組合間のコミュニケーションにも課題があるとしたうえで、団体交渉の価値を高める必要性を説くCNIの提言を組合側はどう捉えているのかを質問、ラファエル氏は、本提言に対する組合の捉え方は様々で政治が絡むこともあり、CNIでも慎重に対応していると返答した。さらに、本質的な問題を解決するには統一労働法の改正が必要であり、その実現には、同法改正を提言するカマラとの連携活動が効果的だとして、今後互いに協力しながら立法府、行政府への提言活動に取り組んでいくことを合意した。
会合に望む労働WG東崇徳副グループ長、労働WG松澤巧グループ長(左から)
CNI産業政策労働分野スペシャリストのラファエル氏
CNIと労働WGの会合の様子
一行は続いてMDICを訪問、AGIR活動のカウンターパートである貿易産業部門のNizar Lambert Raad氏、Celio Luiz Paulo氏、Ricardo Debiazi Zomer氏、Temístocles Lisandro Sena Loiola氏と懇談を行なった。先ずカマラから、これまでの政策対話へのMDICの真摯な協力姿勢への礼を述べたうえで、今後、課税、労働分野におけるいわゆる本丸項目についての政策対話の進め方についてざっくばらんに相談を行なった。ニザール氏は、過去、貿投委において課税や労働分野のテーマを取り上げたことがあるとして、MDICが関係省庁からの参画を募るなどコーディネート役を果たすことで本丸提言についても貿投委の枠組みのなかで協議することが可能であると述べた。これに対し平田事務局長は、初期の貿投委では財務省からの参加もあり、特に移転価格税制の改善に向け、MDICが財務省とカマラの対話機会を橋渡ししてくれた経験があることを紹介した。また、ヒカルド氏は、提言項目によっては貿投委の下にサブコミッティーを作り、専門家同士で協議する場を作ることも考えられるとして、基本的な進め方としては、貿投委の枠組みをベースにMDICがコーディネート役となって所管省庁との対話機会を設定する方向で考えていきたいと述べた。カマラはこれを願ってもない提案として歓迎、所管省庁が違っても引き続きMDICをカウンターパートにAGIR活動に取り組んでいきたい旨を伝えた。
これを受けMDICから、政権の行方がはっきりする9月中旬以降に具体案を提示するとのコメントがあり、10月に予定される貿投委までに何らかの取り組みを始めたいとの意向が示された。
コメントを行なう平田事務局長
MDICとの対話の様子MDICのメンバー:リサンドロ氏、二ザール氏、リカルド氏、セリオ氏(左から)
MDICとの対話の様子