コンサルタント部会(関根実部会長)並びに日伯法律委員会(村上 廣高委員長)共催による「ブラジルの税務諸報告のデジタル化に関するセミナー」は、2014年7月22日午後3時から6時までマクソウドホテルに150人以上が参加して開催、進行役は関根実部会長並びに矢野クラウジオ副委員長が務めた。
初めにデロイト社ジャパンデスクの池谷裕一部長並びにギリェルメ・ヴィエガス・リコ税制担当部長は、「Siscoserv-国際サービス業務の登録システム」について、Siscoservは、ブラジルの法人またはブラジル在住の個人が海外から受ける、または海外に提供しているサービス並びに無形資産、取引の輸出入統合システムで税務義務監査を目的に推進、物品の輸出入管理システム(SISCOMEX)と SISCOSERVの相違点、またBacen(為替送金管理システム)と組み合わせることにより、海外からの入金並びに送金が管理可能であり、駐在員の海外出張の経費である航空運賃、移動費、輸入部品のメンテナンス代金、海外で契約、実施したサービス代金、海外本社への経費送金、輸出入に関する輸送費、保険費、経費などの送金、ロイヤリティ、リース代などは、月別、国別、ブラジルサービス業種ナンバー別(NBS)に登録する必要があり、これらの新しい登録義務で、未登録、登録エラー、期限切れなどが発生すれば、該当するサービスの金額の最大5%まで罰金として徴収、RAS/RVS登録、Siscoservの入力情報、罰金、導入プロセスなどについて説明した。
KPMG社労働法・社会保障担当のアドリアナ・ソアレス・ロジ シニアマネージャーは、「eSocial-個人所得、社会保険のシステム化」について、eSocialはSPED Social、EFD Socialとも呼ばれ、5番目のデジタル簿記公共システムであり、電子帳簿システムでは一番複雑なプロジェクトで、eSocialは多数の従業員に関する情報の届け出を簡略化・合理化・組織化し、従業員の労働権をより安全なものにする。
直接及び間接労務費にかかわる情報の連結であり、基本情報 の各種事由として ○従業員の入社データ ○雇用契約の変更、 ○雇用契約の解除、 ○従業員の職務の変更 、 ○労働者派遣契約(非正規労働者)、 ○ 労働者派遣契約の変更 ○従業員の休職期間の明示、 ○休職理由の変更 、 ○従業員情報のアップデート 、 ○従業員が所有する資格・免許・健康状態に関する証明書、 ○休暇の届け出、 ○業務上の事故、 ○ 関連事項の届け出、 ○従業員に適用される特別な労働条件の期間の明示、 ○憲法並びに社会福祉院(INSS)、労働協約、連邦法によって保証されている正式雇用期間の明示 、 ○従業員の復帰 、 ○超過勤務記録の入力が義務付けされている。
また月次事由として、 ○会社別の給与支払い名簿(子会社が存在する場合)、 ○従業員の給与および昇給 ○派遣労働者に係る支払い、 ○サービス提供者/派遣労働者に係る協同組合からの支払い、 ○雇用主が製造または取引している製品の従業員による入手、 ○雇用主が製造または取引している製品の従業員への提供、 ○賃金からの控除並びに源泉徴収、拠出、 ○勤続年数補償基金(FGTS)および社会保障院(INSS)への積立金の明示などとなっている。
eSocial導入の準備は徐々に進められており、データ入力方法を具体的に知らせるための納税者マニュアルが、2014年8月までに発表される見通しで、その後、6カ月間の試験期間が設けられる見込みであり、企業はこの試験期間中にデータ入力を開始しなければならないが、しかしeSocialへの移行義務が発生するのは、2015年下半期以後になると予想されている。
eSocialが導入されれば、労働法に準拠していないあらゆるものは指摘され、雇用主はそれを直ちに是正する義務を負い、eSocialは労働上の手続きを厳格に正しく行い、不備を未然に防ぎ、ブラジルにおける労働関係の新たな秩序を構築することとなるが、そのために企業は多くの費用を負担を余儀なくされると説明した。
PwC税制担当のグラジエリ・バチスタ・デ・オリベイラ部長は、「移転価格税制」について、OECDガイドラインを規範していない、適用対象となる取引、独立企業間価格の算定方法の選択、1997年度よりの導入、輸入取引における独立企業間価格の算定方法として独立価格比準法(PIC)並びに再販売価格基準法(PRL)、原価基準法(CPL)を適用、PRL法における輸入取引の産業別の法定利益率、計算方法、輸出取引における独立企業間価格の算定方法、コモディティ商品以外の輸出取引におけるセーフ・ハーバー・ルールの適用、PRL法における各事業分野別の利益率として、利益率40%は製薬材料および薬品、煙草製品、写真・映画・光学器械および器具、歯科並びに医院向けの器具・機器、石油・天然ガスの精製および石油化学製品、利益率30%は化学製品、ガラスおよびガラス製品、パルプ並びに紙、紙製品、金属製品、利益率20%はその他、独立価格比準法(PIC)とは、国外関連者等との間の取引と比較して、類似した支払条件の下で納税者もしくは第三者が行った売買取引における、ブラジル国内または他国の市場で計算された同種同類の財並びにサービス、権利の価格の加重平均値であることなどを説明した。
EYジャパン・ビジネスサービスの林 裕孝部長は、「ECF-新たに義務付けされた税務帳簿システム」について、ブラジル会計基準の会計上の利益(IFRS)へのコンバージェンスの一環として、2007年末に会計基準の改正に関する法令を制定 して、IFRSを適用した場合と暫定ブラジル会計基準を適用した場合との中立性を維持するRTTを作成して税務貸借対照表の作成を義務化、RTTは今後廃止となり、新方式では税務貸借対照表を持つことなく、IFRSに基づき算出された純利益をスタートに使用し、損益影響を及ぼすIFRS調整を排除する税制調整を実施しなければならない。
RTTをめぐる主要論点としてRTT関連諸規定や在外所得の取り扱い、持分法の原則適用の場合では新分割支払い方式の導入、また2014年度までは新BRGAAPに基づいた計算も容認、2015年度からは新BRGAAPに基づいた計算のみ税務上容認、2014年1月1日から適用される早期適用の場合は2013年度までは新BRGAAPに基づいた計算も容認、2014年度からは新BRGAAPに基づいた計算のみ税務上容認、また持分法の個別論点、のれんの税制恩典、子会社及び関連会社に対して持分法の適用などについて説明した。
デロイト社ジャパンデスクの池谷裕一部長並びにギリェルメ・ヴィエガス・リコ税制担当部長「Siscoserv-国際サービス業務の登録システム」
KPMG社労働法・社会保障担当のアドリアナ・ソアレス・ロジ シニアマネージャー 「eSocial-個人所得、社会保険のシステム化」
PwC税制担当のグラジエリ・バチスタ・デ・オリベイラ部長 「移転価格税制」
EYジャパン・ビジネスサービスの林 裕孝部長 「ECF-新たに義務付けされた税務帳簿システム」
Fotos: Rubens Ito / CCIJB