ブラジルの経済成長率、国民の所得並びに雇用創出を加速させるためには、一連の構造改革並びにブラジルコストと揶揄されてブラジルの競争力を削ぐ不必要な障害の除去が不可欠であると全国工業連盟(CNI)は指摘している。
過去10年間のブラジルの平均経済成長率は、僅か1.3%に留まっており、今後10年間のブラジルの平均成長率は、最低でも3.0%が必要であり、今後10年後以降も継続して更に高い経済成長率を維持する必要があると全国工業連盟(CNI)は指摘している。
ブラジルにおいては、複雑な税制、労働・雇用面での過剰な保護措置、一向に改善しない治安といった問題がブラジルコストと呼ばれており、税制では50種類以上の税金、GDP比40%近くに達する高負担の重税、制度が頻繁に変ることなどが問題とされ、企業への負担が大きい税制コスト。
また治安対策として警備会社からの警備員の派遣、警備システム構築、防弾車購入などの治安コスト。高額な融資金利や手数料代などの金融コスト。道路、港湾設備の不備や港湾ストなどによる経費や時間のロスによるインフラコストなど企業活動で競争力を削がれている。
全国工業連盟(CNI)では、ブラジルコスト削減のために税制、財政政策、環境、労働関係、インフラ、イノベーション並びに貿易関連の8分野の25項目の改善を指摘している。
税制関連では、国会での早急の税制改革の必要性を指摘、連邦税である社会統合計画負担金(PIS)と社会保障負担金(Cofins)の連邦税、州税の柱である商品サービス流通税(ICMS)、工業製品税(IPI)並びに市税のサービス税(ISS)を統合した付加価値税(IVA)の導入を指摘している。
また現在の法人所得税(IRPJ)並びに純利益に対する社会納付金(CSLL)の税率34.0%を20.0%への引下げによる国庫庁の歳入減少を補うために、企業の利益・配当金に関する税率の調整を指摘している。
また財政政策関連のブラジルコスト削減では、行政改革による公務員の人件費削減や効率化による競争力の強化を指摘、良い例として2019年末に承認された社会保障改正による年金・恩給向け支出削減効果を挙げている。
雇用並びに所得メンテナンス向け緊急ベネフィットプログラム(BEm)は、従業員の労働時間の時間短縮、給与支給額調整、労働契約解除が含まれており、全国工業連盟(CNI)は支持している。
インフラ関連のブラジルコスト削減では、天然ガスの運輸・配給・売買に関する規則を柔軟化し、国営石油公社ペトロブラスが独占する同市場に民間企業を参入させ、競争を促すことでエネルギーコストを低減し、工業分野の生産性を向上が可能となる天然ガス規制の承認。ブラジル中央電力公社(Eletrobras)の民営化。沿岸航行輸送強化プログラム。スタートアップ向け規制緩和。次世代の通信規格である5G向け基地局のインフラ整備入札などを挙げている。