今年4月に中国モリブデン社(CMOC)は、アングロ・アメリカン社のニオブ・リン酸事業を17億ドルで買収、同社が所有するニオブ鉱山並びにリン酸鉱山はブラジル国内に集中しているために、新たな中国企業によるブラジル国内の非鉄金属並びに肥料分野の投資拡大並びにマーケット活性化につながると予想されている。
同社に25年間勤務しているMarcos Stelxer取締役は、中国モリブデン社(CMOC)による買収後も継続して経営の陣頭指揮を執る。世界の鉄鋼生産が需要を7億5,000万トン上回っている現状では、ニオブ事業の拡大は見込めないにも関わらず、世界の鉄鋼製品の受給状況が好転すれば事業拡大が見込める。
リン酸(P)は窒素(N)並びにカリ(K)の「肥料の三要素」と呼ばれる一つであり、ブラジルは肥料消費の70%以上を輸入に依存、ブラジル国内の穀物生産が順調に推移しているために、リン酸鉱事業は国内での肥料生産拡大で需要が見込める。
ニオブ生産の世界のトップメーカーはブラジル資本のカンパニア・ブラジレイラ・メタルジア・エ・ミネラソン社 (CBMM)で年間10万トンのニオブを生産、一方アングロ・アメリカン社は年間1,200トンのニオブを生産、生産のすべては輸出となっているが輸出の30%は中国向けとなっている。
国内で生産されるリン酸鉱はすべて国内需要向けであり、特にMosaic社並びにYara社にリン酸鉱を販売、今年のリン酸鉱需要は前年比3.0%~4.0%増加予想、今後も年間数%増加が期待できる。
また中国モリブデン社(CMOC)が買収したアングロ・アメリカン社の国内で生産されるリン酸鉱は中西部地域に集中しており、年間35万8,000トンのリン酸鉱を生産している。
2015年末のアングロ・アメリカン社の負債総額は129億ドル、今年4月にニオブ・リン酸事業を17億ドルで中国モリブデン社(CMOC)に売却したため大幅な負債軽減につながっている。
中国モリブデン(CMOC)は、アングロ・アメリカン社ブラジル国内のリン酸鉱山買収で10%の国内マーケットシェアを獲得、またブラジル国内のニオブ鉱山買収で世界2位のニオブ生産会社となる。
ニオブは高級鋼材・特殊鋼材を生産するために必要不可欠な原料で微量添加により鉄鋼製品の強度・靭性・耐熱性を飛躍的に向上させる特性があり、ニオブを添加した高級鋼材・特殊鋼材・スーパーアロイは、石油・天然ガスパイプライン・自動車・大規模建築・タービンなどに使用されている。(2016年10月3日付けヴァロール紙)