中国の内需減少による経済成長率の停滞や欧米の景気後退、鉄鉱石の国際コモディティ価格の下落並びに鉄鉱石の需要を上回る供給過剰などの要因で、昨日ヴァーレ社は2016年の投資総額を前回発表の76億ドルから62億ドルに下方修正している。
鉄鉱石の生産はヴァーレ(ブラジル)、BHPビリトン(豪州)、リオティント(豪州) の3社で60%のシェアを確保、現状としてこの3社が鉄鉱石価格の下落を覚悟のうえで増産を続けるのは、シェアを拡大して生産性の低い業界下位を駆逐して 寡占化を進めることで、将来的に鉄鉱石の価格支配力を強めようという狙いがある。
ブラジルのVale社とBHPビリトン社がそれぞれ50%出資の合弁企業サマルコ社の鉱山廃水ダムの堤防決壊事故による環境破壊修復や種々の賠償問題が発生しており、ヴァーレ社によるサマルコ社への支援義務が議論されている。
昨日、格付け会社フィッチ・レーティングスはサマルコ社の格付けをBBB からBB-に引下げたが、ヴァーレ社並びにBHPビリトンがサマルコ社に金融支援すれば再度の格上げの可能性がある。
ヴァーレ社の2016年の投資総額62億ドルのうち32億ドルはプロジェクトの遂行、残りの30億ドルは操業メンテナンスに投資されるが、2011年の180億ドルの投資総額から過去5年連続で投資額が減少してきている。
ヴァーレ社の2016年の鉄鉱石生産は、前回発表の年間3億4,000万トン~3億7,600万トンから3億4,000万トン~3億5,000万トンに下方修正、多くの業界関係者は、鉄鉱石価格の低迷やサマルコ社の鉱山廃水ダムの堤防決壊事故の影響で来年のヴァーレ社は配当しないと予想している。
ヴァーレ社ではサマルコ社の堤防決壊事故の影響で2016年の売上は5億4,300万ドル減少すると予想、またサマルコ社による5,500万ドルの配当もなくなると予想、連邦政府ではVale社とBHPビリトン社、サマルコ社3社に対して、リオ・ドーセ河流域の環境回復向けファンド資金200億レアルの拠出を要求している。(2015年12月2日付けエスタード紙)