2018年に創立100周年を迎えるアントニオ・エルミリオ・モラエス一族のヴォトランチングループの2015年の純益は、ブラジル国内のリセッション影響やラヴァ・ジャット作戦汚職問題の影響で、公共事業が軒並み中止されたためにセメント、鉄鋼製品、アルミ製品などの販売減少で前年比 77%と大幅下落している。
2015年のヴォトランチングループの総売り上げは315億レアル、そのうち150億レアルは海外15か国で展開する事業の売上であり、またユーカリ材原料の短繊維生産で世界トップの白物パルプ製造会社フィブリア社に29.4%資本参加による配当金並びにサンパウロ州内の自社資産売却も売り上げ増加につながった。
しかし2015年のヴォトランチングループの税引前利益に支払利息と減価償却費を加算したもので総資本に対してどの程度のキャッシュフローを産みだしたかを簡易的に示すEBITDAは、前年比では2.0%減少の70億レアルに留まっている。
2015年の同社の投資総額は前年比32%増加の33億レアル、そのうち約50%は新規事業に投資、残りは事業継続のためのメンテナンスや設備投資、今後数年間にオレンジジュース生産事業のCitrosuco売却などでコア事業に投資を集約すると予想されている。
昨年の同社の負債に対するEBITDAは2.78倍であったが、創立100周年を迎える2018年には負債を一掃して、運転資金を100億レアル以上に積み上げるとヴォトランチングループのジョアン・ミランダ会長は強調している。
ヴォトランチングループでは、ゴイアス州ニケランジアのニッケル鉱山並びにサンパウロ州サン・ミゲル・パウリスタ工場の操業再開は未定であり、また今年1月に閉鎖したサンパウロ州リベイロン・グランデ市のセメント工場の再開も未定となっている。
ジウマ・ロウセフ大統領罷免問題やラヴァ・ジャット作戦汚職問題でブラジルは政治混乱をきたしており、また経済リセッションによる製造業部門停滞、失業率急増、インフレや銀行金利の高止まりなどでブラジルが危機に瀕しているにも関わらず、国を憂う政治家の声が聞こえない。(2016年4月6日付けエスタード紙)