国際鉄道連合(UIC)は、ブラジルから中国まで大豆を輸送するにはサントス港の利用が最も安価だと指摘した。
ジウマ・ロウセフ大統領が9日に発表した物流インフラ投資計画(PIL)で、期待される総投資額の20.2%という大きな比重を占めたのがブラジルとペルーにまたがる南米大陸横断鉄道であるが、この長大な鉄道線を分析した国際鉄道連合(UIC)のラテンアメリカ支部は、採算性の観点からは実現不可能だという結果を発表した。
UICはこの調査で、マット・グロッソ州ルーカス・デ・リオ・ヴェルデから中国の上海まで1トンの大豆を輸送するコストを計算した。仮にサンパウロ州サントス港を利用した場合、輸送コストは120.43ドルになるが、ペルーのイロ港を利用すると166.92ドルとなる。その差は、46.49ドルだ。
この計算には、まだ建設されていない3,650km(この内1,000km以上がアンデス越えの区間)に及ぶ鉄道線の建設コストを含めていない。ブラジル政府の試算によると、国内の鉄道線の建設だけでも建設コストは少なくとも400億レアルに達する。
UICは今回の計算に当たって、大豆の輸送距離、さらに現在国内で設定されている大豆の鉄道輸送コスト(3.00レアル)を掛け合わせて求めた。この計算だけで、輸送コストはサントス港までの58.28ドルと、南米大陸横断鉄道を利用した時の輸送コスト127.75レアルと、大きな差が生じることになる。
そして中国までの海上輸送コストは、サントス港とイロ港ではこれほどの差が生じないのだ。今回の調査では、サントス港から上海まで1トンの大豆を運んだ場合、海上輸送費は22.50ドルと算出された。イロを利用した場合、このコストは21.50ドルである。こうしたことから農業部門にとっては、実現可能性の観点から最も有望な鉄道線は、ブラジル中西部で生産された大豆をパラー州あるいはアマゾナス州に運ぶ北部集積ルートであって、南米大陸横断鉄道ではないことになる。
計画の大きさと採算面に対する疑問から、南米大陸横断鉄道は、リオデジャネイロとサンパウロ、カンピーナスを結ぶ大規模事業としてジルマ大統領がルーラ政権(2003年―2010年)において目を輝かせて取り組みながらも今に至るまで計画倒れになっている、高速鉄道(TAV)に例えられる。南米大陸横断鉄道の計画そのものは、実際には、この事業に対して中国資本が高い関心を示したこと、さらに同国の投資家が投資を発表しながら様々な事業を実施してこなかったという不名誉を挽回するという状況から登場したのである。
にもかかわらず、南米大陸横断鉄道は、「アジア市場向けに大洋を通じて輸出する生産物の戦略的集積ルート」として、新規民営化プランの一角を占める事業になったのである。この様な戦略的集積ルートとしては、既に、カンピオノルテ市とルーカス・ド・リオ・ヴェルデ市(マット・グロッソ州)を結ぶ鉄道線については、既に実現可能性調査(FS:フィジビリティスタディ)が終了して連邦会計検査院(TCU)がこれを承認済み。この外にも、サペザル市(マット・グロッソ州)とポルト・ヴェーリョ市(ロライマ州)を結ぶ鉄道線も、民間部門が検討中である。
UICラテンアメリカ・エリア支部のギリェルメ・キンテラ支部長は、「数十年にわたって、鶏肉集積鉄道ルートの建設に取り組んできた。なぜ今、ペルー(七面鳥)の鉄道ルートを建設する必要があるだろうか? この問題は、全くもって平和(パシフィック=太平洋)とは言い難い」と冗談を交えて批判した。なお、同支部長がコメントした鶏肉鉄道とは、サンタ・カタリーナ州内陸部と同州イタジャイー港を結ぶ鉄道線である。(2015年6月10日付けエスタード紙)