日伯法律委員会並びにMattos Filho Advogados法律事務所、日本の森・濱田松本法律事務所との共催による、ブラジルPPP/コンセッション制度の概要と最新情報についての研究会は、2015年3月24日午後4時から6時までMattos Filho Advogados法律事務所に80人が参加して開催した。
初めに2014年10月からブラジルのMattos Filho, Veiga Filho, Marrey Jr. e Quiroga法律事務所(サンパウロオフィス)にて執務をしている岸寛樹弁護士は、ブラジルPPP/コンセッション制度の概要‐日本におけるPFI制度(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)との比較ついて、PPPの基礎概念として「官民連携」の総称であり、PPPの中にはPFI、指定管理者制度、市場化テストなどがあり、コンセッションとは民間資金などの活用による公共施設整備などを促進する法律(PFI法)であり、日本では仙台空港、関西空港、伊丹空港でPFI法を採用していると説明した。
PFIの分類としてサービス購入型PFIでは庁舎や給食センターの建設、混合型PFIでは福祉施設・文化関連施設の建設、独立採算型PFIでは空港ターミナル建設などが実施されている。
ブラジルのコンセッションの法律上の定義として、公共事業が先行する公共サービスのコンセッションであり、ブラジルのPPPは2004年に連邦法11079号で成立、スポンサーコンセッションでは鉄道や有料高速道路建設、アドミニストラティブコンセッションでは刑務所の運営委託などとなっている。
PPPの対象事業は次の要件を満たすものであり、2,000万レアル以上の契約、サービス期間は5年から35年以下、雇用、設備取得、施設建設のみを事業内容をすることはできない、公共からの支払いはアベイラビリティペイメント方式、混合型では70%以上の収入が政府からの支払いによるものは議会の議決
が必要、公共からの支払いはPPPs Fund of Garantees (FGP)が保証、自治体(州及び基礎自治体)は連邦法に基いて独自の運用とすると決められている。
PPPに関する裁判例としてリオ・ダス・オストラス市が2007年に下水処理施設の拡張および運営でPPP方式を採用して建設を開始、2013年に新市長が請け負い企業に支払いをストップしたために請負事業者が提訴、これはブラジルのPPP事業における保障制度の重要性を示す好例となっている。
PPPの保証形態として予算割り当ての確約、法律上認められた特例ファンドの設立・利用、ブラジルのPPPの手続きの流れとしてスキーム図を用いて民間事業者からPPPプロジェクト提案を連邦政府が審査→政府の提案公表と民間の関心証明手続き(PMI)→パブリック・コンサルテージ(日本のパブリックコメント手続きに相当)→資格審査と価格審査の2段階の競争入札→契約締結となっている。
PPP契約上の留意点として報酬の支払い‐公共団体の支払いは民間事業者の仕事の完成後で支払額調整点インフレ補正があり、公有財産の提供‐PPP契約ではサービス提供に必要な公有財産を民間事業者に提供する旨の規定を置くことができる。自然災害などの不可抗力発生時のリスク負担として一般的にリスクを低コストでコントロールできる側がリスクを負担するのが理想であり、契約の終了は公共の利益に基づく返還要求、公共団体による解除、民間事業者による解除などを説明した。
Mattos Filho Advogados法律事務所のブルーノ・ダリオ・ヴェルネック弁護士は、英語で「日本企業がブラジルにおけるコンセッションやPPPで注意を払わなければならないか」と題して、コンセッションに関する法律は連邦法8.987/ 1995並びに連邦法9.074/ 1995、PPPに関する法律は連邦法11.079/2004で定められており、契約期間は5年以上35年以内、道路、医療施設、住宅、水道、サッカースタジアム、刑務所など多くのプロジェクトが存在している。
PPP方式による病院建設はサンパウロ州やバイア州で実施されており、学校建設はミナス州のベロ・オリゾンテ市、高速道路建設ではサンパウロ州やミナス州、刑務所建設ではミナス州やアマゾナス州、リージョナル空港ではミナス州、水供給システム建設はバイア州並びにミナス州、アラゴアス州、エスピリット・サント州、政府系のPPPプロジェクト向けの特別クレジット提供として社会経済開発銀行や連邦貯蓄金庫、現在PPP方式で開発中の案件としてリオ市の電気自動車プロジェクト、サンパウロ市やベロ・オリゾンテ市での公共駐車場建設、高速道路建設の投資予算は996億レアルで総延長距離が1万1,000キロメートル、100件以上の港湾建設、360件を上回る都市交通プロジェクトなど日本企業にとっても大きな投資チャンスになると説明した。
レナート・ジオ弁護士は「ブラジル子会社に関する親会社の責任」と題して、日本では会社法の改正によるグループ内部統制強化の動きがあり、グループ全体でのリスク管理の重要性、ブラジル子会社の責任が親会社に波及する可能性があり、ブラジル法における海外親会社の連帯責任として、日本の親会社とブラジル子会社は法人格が異なる子会社に発生した損害等株主としての責任、例外としてブラジル子会社の責任が親会社に直接及ぶ場合もあり、直接親会社の連帯責任等が定められている例、日本におけるグループ内部統制の厳格化として会社法改正(2015年5月1日に施行)における動き、会社法において、内部統制システムの内容として、「当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するための体制」が含まれる旨を明記、日本の親会社において、内部統制システムとして子会社管理に関して決議すべき事項の追加、子会社の業務執行に関連して、親会社取締役の責任が問われた裁判例などについて説明した。
Marrey Jr. e Quiroga法律事務所(サンパウロオフィス)にて執務をしている岸寛樹弁護士、ブラジルPPP/コンセッション制度の概要‐日本におけるPFI制度(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)との比較
Mattos Filho Advogados法律事務所のブルーノ・ダリオ・ヴェルネック弁護士、英語「日本企業がブラジルにおけるコンセッションやPPPで注意を払わなければならないか」
レナート・ジオ弁護士 英語「ブラジル子会社に関する親会社の責任」
日本語「ブラジル子会社に関する親会社の責任」
日伯法律委員会の篠原 一宇副委員長が開催挨拶
ジョゼ・エドアルド・ケイロース弁護士が開催挨拶
森・濱田松本法律事務所の土屋智弘弁護士が開催挨拶
左から講演中の岸寛樹弁護士/Mattos Filho Advogados法律事務所のブルーノ・ダリオ・ヴェルネック弁護士
左からMattos Filho Advogados法律事務所のレナート・ジオ弁護士/森・濱田松本法律事務所の梅津英明弁護士
Rubens Ito / CCIJB